割れる意見
絶体絶命のピンチ。王子の命はもはや風前の灯。
その時救世主パンキー乱入。
騒動に興奮してやって来たのだろう。
パンキーは止める者を振り払いお姉様たちもすり抜けて王子のもとへ。
そうプレゼーヌはパンキーを手懐けていた。
「ははは…… 驚かせたようだなパンキー。さあパンでも食べようか」
そう言って抱きかかえ歩き出す。
「ちょっと待ちなさいよ! 」
「駄目ですお母様! パンキーは傷つけられない」
お姉様二人は冷静さを取り戻したよう。
「ほら。そんな危ないものは仕舞いなさい」
「でもあなた…… 」
「いいんだ。さあゆっくり」
お父様が説得して刃物を取りあげる。
そのまま崩れ落ちそうになったお母様を何とかギリギリで支える。
「休ませてやってくれ」
後のことをメイドに任せ何事もなかったかのように着席。
ふう…… 助かった。
これでどうにか大惨事は免れた。
「王子! 王子! 」
王子を再び席へ。
もう危険はない。後はゆっくり話し合いをすればいい。
それでもまったく危険がないと言う訳ではない。
逆上しないとも限らないのでここは冷静に。
特にお母様はまだ完全に納得していないだろうし。
落ち着きを取り戻したところでティータイムへ。
「恥ずかしいところを見せちまったね。改めて謝らせてくれるかプレゼーヌ?
あんただって理解してるんだろ? 」
お婆様が口を開く。どうやら王子ではなくそのままプレゼーヌとして。
「それは水に流せと? 別に構いません。こちらとしては命拾いした訳ですから」
王子は結局のところ孤立無援。一人では何もできない情けない王子。
私たちの助けがなくては陰謀に立ち向かえない。
そのことを痛感しているのだろう。
「ではこれでいいんだね? 意見がある者は名乗りでな! 」
そうお婆様に言われてしまえば沈黙するしかない。
なぜかお婆様は王子を助ける行動を取っている。
「よろしいですか? 」
お父様が手を挙げる。まさかお婆様に逆らうつもり?
「何だいやっぱり不満があるのかい? 」
「王子の判断は私も支持します。我が一族が滅ぼうとそれが国を救うなら本望。
ですが王子。私はこの陰謀を終わらせて名誉を回復させるつもりです。
その時は協力をお願いします! 」
お父様の本音はどこにあるのか分かりませんが忠誠心を示した。
立派な心掛け。娘として大変誇らしい。
「ああできるだけのことはしたいと思う。当然その時は罪を償うつもりだ」
王子の決意に称賛の拍手が送られる。
絶体絶命のピンチを乗り切った王子。
王子と我が一族との関係はこれで強固なものに。
でもいきなりの告白はやめて欲しいな。心臓に良くない。
命がいくつあっても足りない。
「それで王子はこの後どうなさるおつもりですか? 」
我が一族の没落はどうにか免れそうだ。
王子がきちんと約束を守ればの話だが。
人は立場が変わったり危機から脱すると心変わりすることがある。
王子だって人間。心変わりしない保証はない。
だからって一筆書いてもらうにしても本気なら反故するのは簡単。
でも王子はそんな人ではないって信じている。
私のことを一番に考えてくれると信じいてる。
少しの沈黙から王子が決意を述べる。
「ああトラブルがあったとは言えもう解決した。
そろそろ私も本気で陰謀に立ち向かう時だろう。
明日には再び出発しようと思う」
王子の考えを尊重すべきでしょうね。
「では私もついて参ります」
情けない王子の世話係として盛り立てる必要がある。
「待って…… 何もあなたが行くことはないでしょう? 」
上のお姉様の反対にあう。
「そうだよクレーラ」
下のお姉様まで。
「ですがお姉様…… 」
「いいんだクレーラ。ここまでよくやってくれた。君を巻き込みたくない」
こう言う時にすぐ格好をつけるんだから。
私は行くと言ってるでしょう?
「まあ王子がそう言うなら従うがね。でも行かせておやりよ」
お婆様が口を挟む。
「何を言うんですお婆様。クレーラは…… 」
「黙りなさない! いいねクレーラ? あんたも行くんだ! 」
お婆様から励ましの言葉を貰う。
無茶苦茶な気もしますが私も同じ考え。
王子を一人で陰謀の渦巻く宮殿に行かせる訳にはいかない。
「ハイお婆様! 」
「何を言ってるのクレーラ? お婆様もクレーラを焚きつけないで! 」
「ここで引いたら負けだよ! 」
お婆様は可愛い孫娘を放任する。でもそれは決して間違っていない。
後はお母様を説得してお許しが出れば晴れて二人で宮殿へ。
続く




