お食事
国王奪還急襲作戦が私の不注意で延期になってしまった。
それによるショックもあり元気なく無念の帰還を果たす。
目を覚ますともう外は真っ暗に。
ずいぶん寝ていたらしい。
王子? 王子?
どこへ行ったのでしょう? 王子の姿が見当たらない。
動き回るには暗いですしその上まだ本調子ではありません。
でも今はそんなこと言ってられない。
急いで王子を探さなければ。
「プレゼーヌ! プレゼーヌ! どこに行ったのですプレゼーヌ? 」
パンキーは大人しく寝ている。
起こすと可哀想なのでただ寝顔を見るだけに。
王子は一体どこに? 勝手にいなくなるなんて。帰るにしたってどうやって?
そもそもどこに帰ると言うのでしょう?
お尋ね者の王子では宮殿はもちろん宿だって難しい。
後はコーコの家ぐらいですが殿方はお泊めできないはず。
だとすればやはりここを離れてないことになる。
でも姿を見せない。
嫌な予感がする。すごく嫌な予感がする。
プレゼーヌあなたは一体どこに行ったの?
何度も呼びかけるが返ってくることはない。
もう寝てしまったならいいのですが。どうも胸騒ぎがする。
そもそもどこで寝ると言うの?
うん…… いい匂い。
王子を探し回ってるとダイニングから何やらいい匂いが。
お食事の時間。
ちょうど一堂が会している。
そこにはプレゼーヌの姿もあった。
楽しそうにお姉様たちが話している。
では私も仲間に加えてもらいましょうか。
「ねえプレゼーヌ。あなたの故郷はどちらですの? 」
お姉様が興味深々と言った感じ。まだ今のところ王子とだとも男だとも。
それだけ王子の変装は完璧だと言うことになる。
「ほらプレゼーヌ。お近づきの印に一緒にテーブルを囲もうとしてるのですよ」
お母様が追及を緩めない。
「私は…… その…… 」
困った様子のプレゼーヌ。さすがに王子だと告白できないでしょう。
急いでこの場を収めなくてはプレゼーヌの身が危ない。
「ちょっと! これ以上プレゼーヌを困らせないであげて!
この子はとても繊細なんです」
もっともらしい嘘を吐く。少々やり過ぎたかな? 逆に疑いの目が向く恐れも。
「何だクレーラ。元気になったんだね。心配したんだから」
「お姉様…… 」
「ほらクレーラ」
「ご心配を掛けました。もう大丈夫です。それよりもプレゼーヌを…… 」
駄目だ。追及するなとは言えない。ここは王子に任せるしかない。
問題は王子が我が一族にとって憎むべき怨敵であると言うこと。
とにかく王子だと気づかれなければいい。
「もう何でもいいからクレーラも食べなさい! 」
お母様が急かす。
「そうだよ。元気になったのでしょう? 」
お姉様たちは心配よりも興味が勝っている。
「そうだ! クレーラはきちんと報告しなければいかん! 」
ご立腹気味のお婆様が止めを刺す。
「分かりました。では遠慮なく」
久しぶりに食べるまともなお食事。
何日ぶりでしょう? 確かあの北の王子のところでたらふくご馳走になって以来。
昨夜もそれは質素なお食事でした。
さすがに皆の目があるので食べ尽くす訳にもいきませんね。
ここは体とも相談してゆっくりお食事をすることに。
プレゼーヌを好奇な目から守るために隠す。
でも隠せば隠すほど興味は注がれてしまう。
「あのプレゼーヌ…… 」
「ごめんなさいプレゼーヌはとても恥ずかしがり屋なの。
今だって恥ずかしくて恥ずかしくて仕方ないそう」
単なる作戦だが確かにプレゼーヌは余計なことを一切話さない。
だからこれ以上振っても無駄だと認識されてきている。
「プレゼーヌについては明日以降また話す機会があればその時にでも」
皆に納得してもらいようやく解放される。
食事を済ませたところでビッグニュースが。
「明日お父様が戻ってくるそうよ! 」
それを知らせたのは上のお姉様。お母様は嫌そうな顔で応じる。
うーん。私はどうすればいいか悩ましい。
「やった! お父様が戻って来られるんですね? 」
無邪気に喜ぶ下のお姉様。
こうしてお父様帰還で益々盛り上がりを見せる。
「やったお父様! 」
喜んで見せるが微妙だ。お父様さえしっかりしていれば私たちは苦労しなかった。
しかもいつの間にか姿を消してるんですもの。
今更ノコノコ出てこられてもうれしいんだかどうだか。
でもこれで詳しい話がが聞けるかもしれない。
とにかく明日。明日を待ちましょう。
続く




