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予定変更

扉が開くと血相を変えた王子が飛び込んできた。

私への強い思いが伝わるよう。

「クレーラ! ああクレーラ! 」


もう意識は取り戻しているんですが。つい起きそびれてしまって…… 

寝てる振りも大変。いい加減起きなければ。でもタイミングが難しい。


「ううん。あーよく寝た。おはようございます王子」

ちょっとわざとらしかったかな?

「ああ…… もう昼だがな」

興味を失ったように急に素っ気なくなる。

それに比べマッギは感情を爆発させて大喜び。

「クレーラ! 良かったなクレーラ! 俺本当に嬉しいよ! 」

感情に任せて騒ぐから体が揺れて仕方がない。

でも嬉しいもの。そうこれです。これが王子に求められるもの。

王子も素直にできたらな……


「クレーラ…… 」

涙をこらえ心配そうに見つめるコーコ。 

「そんな顔しないでコーコ。私なら大丈夫だから」

「そう…… ならもう心配ないか。痛いところは? 」

「うん。もう本当に平気だから。ありがとう」

「おい馬鹿言うな! すぐに馬車を用意させる。一旦戻るぞ」

私の体を心配し帰る選択をしてしまう王子。まだ甘い。

「でも王子それでは…… 」

「いいから帰るぞ! 」

こうなっては王子は譲らない。自分の意見を通す。


でも…… 私のせいで諦めるなんてそんなことできない。

これでは完全な足手まとい。分かってましたが単なるお荷物に。

私は王子の助けになればと思って同行したのに足を引っ張ってどうするの?

とんでもない失態。ああどうすればいいの?


せっかく集結したのにバラバラに。

これでは皆の士気にまで影響してしまう。

私はとんでもないことをしてしまった。

国王が安否不明の緊急事態なのに。

一刻も早い奪還をと考えていたのに撤退を余儀なくされるとは。

すべて私のせい。私の愚かな行為がこんな事態を引き起こした。


「ははは…… そんな顔するなよ。何もクレーラだけのせいじゃないさ」

王子は気を遣ってくれるけれど。その言いようだと逆に責任を感じてしまう。

自分でそう思うのと仲間に言われるのでは全然違う。

もはやどうお詫びしていいのやら?


「王子…… 」

「いや実は援軍が遅れていてね。一度仕切り直そうと思ってたんだ」

優しい王子。でもそれはあまりにも甘やかし過ぎでは?

自分の立場をお忘れになってませんか? 再び集結するとは限らない。

拒否されたらどうするつもりなの? 私など放っておくべきです。


「さあ戻ろうかクレーラ」

そう言って手を取る。ああもう強引なんだから。二人が見てるでしょう?

王子に支えられてどうにか歩くことができた。

うん。もう問題ないみたい。


馬車まで支えてもらいどうにか帰路へ。

私のせいですべて台無しにしてしまった。

王子は気にしなくていいと言うけれどそれは違うでしょう?

私が勝手な行動を取ったんだから叱責して当然。

まさか足を引っ張ってしまうなんて思いもしなかった。

一度の失敗がすべてを台無しに。

少なくて三日は遅れることになる。本当に情けなくて自分が嫌になる。

申し訳なくて申し訳なくて目も合わせられない。


「ははは…… どうしたんだクレーラ? 君らしくない」

優しく囁くが何も言えずにただ首を振る。

「王子。そうっとしておいてあげましょう」

コーコが間に入る。

こうして無念の帰還を果たす。


お屋敷。

もう今日は誰とも話したくない気分。でもそうはいかないですよね。

故郷に戻るのは何日ぶりでしょう?

期限を一週間ほど先に延ばしてもらったのでまだギリギリ帰る場所。


トボトボ歩いてるとお婆様の姿が。

「今まで何してたんだいクレーラ? 」

突然の帰還に驚いた様子のお婆様。

「済みません。いろいろとありまして」

「まあいいや。だったらゆっくりしてな」

らしくないお婆様。私が元気ないから気を遣って?

それとも旅疲れを心配して? まあどちらにしろありがたいことですが。


王子に支えられて部屋に。

久しぶりの再会に大喜びのパンキーが出迎える。

「ああパンキー元気にしてた? そう。うんうん」

「ほらクレーラ。ゆっくり寝てるんだ」

王子は可愛らしいプレゼーヌの姿に。


「一緒に寝ましょうプレゼーヌ」

「まだ夕方だぞ。一人で大人しく寝てるんだ。たまに様子を見に来てやるから」

突き放す王子。ああ嫌われてしまったでしょうか?


王子が姿を消すと不安に押しつぶされそうになる。

いつの間にこんな風になったのでしょうか?

王子が立派になられたのか? ただ私が弱くなったのか?

とにかく今はゆっくり寝るとしましょう。


                続く

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