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(注)お父様からの手紙

ここの生活も残り僅か。思い切って隣の隣の国へと。

「次の方どうぞ」

ようやく順番が回ってきた。

まさかまさかのお目当て?

噂の爵位の列はここ?

期待を胸に前へ。


「はいこれね」

やった! 思った通り爵位だ。爵位が頂ける。

何だかバッジが輝いて見えるのは気のせい?

お婆様に投げ捨てられなければいいのですが……

マッギの言うように期待は低め。

あまり喜び過ぎてその落差にやられないよう気をつけなければ。


「あれコーコは? 」

行列に命を懸けているコーコ。爵位には興味がないと。

「食糧なら助かるんだけどな。今回は遠慮するわ」

付き合いで並んでくれたそう。

「だったらマッギは? 」

「俺は王子の頼みを聞いたまでだ。気にするな」

どうやら爵位は二人には無駄なものらしい。


「それでこれはどのような爵位でしょうか? 」

「ああん? グレート王国の爵位だよ。その名も注爵だ。格好いいだろ?

ここでしか手に入らないものだから大切にな」

この言い方なら間違いない。これで没落の危機から脱せられる?

やった! 救われた! これで私たちは救われる?

王子の助けなしでも立派に爵位を手に入れた。

粘った甲斐があったと言うもの。


「ふふふ…… ははは! 」

つい嬉しさのあまり。下品だったでしょうか?

「クレーラ! はしゃぎ過ぎだって。恥ずかしい」

王子はそう言いますけどこの喜びは格別。王子には分からないでしょうね。


「ちなみにこれを手にすればグレート王国で戦士になれる。

気を付けなくてはいけないのは一度貰うと返納できない。

だから戦士として戦う意思があるならこのバッジを受け取って欲しい! 」

どうやらグレート王国も兵士の数が足りてないらしい。

まあどこも似たようなもの。


「あの…… 私はお嬢様なのですがそれでもよろしいですか? 」

対象とはかけ離れてる気がするので念のために確認。

「大丈夫。男だとか女だとか関係ない。

ただ我がグレート王国のために戦ってくれればそれでいい」

これは受け取る価値が充分にあるでしょう。


うーんでも注爵か…… 聞いたことないしな。どうしよう?

噂のものとは違う。やはりあれは単なる噂に過ぎなかったのかも。

果たしてこの爵位が求めていたものかと言うと疑問。

王子の意見を聞いてみるがはっきりしない。自分で判断しろと。

そう言われるとどうするか迷う。ただ一度貰うと戻せないからな。ここは慎重に。


「ほら爵位だよ。どうする? 早く決めてもらわないと後ろが! 」

うわ…… プレッシャーをかけてくる。これは危険な予感。

受け取っては戦士にされてしまう。ここは欲張らずに投げ捨てるかな。

お婆様がいればそうしていたでしょう。もう迷わない。

おかしな爵位など邪魔なだけ。


「まったく何てことしやがる! もう勝手にしろ! 」

せっかくの爵位だったが丁重にお断りすることに。

これでもうほぼ終了。

結局粘ったが奇跡は起こらなかった。

後は形だけの爵位をどうするか? 永遠に先に進みそうにない。


戻るとすぐにお婆様に呼び出される。

「もう眠いのに…… 明日でよろしいのでは? 」

「まあまあ。いい知らせだよ。一週間ほどいていいことになった」

「はあどう言うことですの? 」

「だから息子がよくやってくれたのさ」

そうは言いますがその息子さんが爵位を剥奪されたからこうなったんですよ。

決してよくやったとは言えない。

もうお父様ったら心配ばかりかけて勝手なんだから。迷惑を被るのは私たち。


昼間にお父様から手紙が届いたそう。

知らない間に交渉してくれたらしい。

さすがはお父様。最後の最後まで交渉を重ねたらしい。

どうであれ良かったと思います。


「やった! 」

でもよく考えれば出発が一週間先に延びただけ。何の意味があるの?

根本的な解決策を示さなければただの喜び損。

一週間の猶予を生かすも殺すも私次第。


では落ち着いたところで寝るとしましょうか。

ああ今日は疲れたな。


まずい…… ついうっかりお婆様に報告し忘れた。

注爵か…… 良さそうに見えたんだけどな。

いろいろと細かい規定がありそうだったし何だか乗り気になれなくて。

でも何でだろう? まあいいか。そんなことはどうでも。


おやすみなさい。


                続く

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