到着
リョウガ王国で遭難中。
「お前が騒ぐものだから道が分からなくなったではないか! 」
吹雪いて視界が最悪。そんな中で異国の地を歩き回るのがいかに大変か。
「もう人のせいにしないでよ! 勝手に連れてきて」
「お前が紹介しろと言うから私は…… 」
「こんな危険なら事前に言いなさいよ! それだから頼りないって言われるの!」
「何を抜かす! 私は民より絶大な信頼を寄せられている王子。
お前には私の凄さなど分かりはしないさ」
「はいはい分かりましたよ。もう最低! 」
ついイライラして口喧嘩に発展してしまう。
我慢すればいいんだけど王子が突っかかるから。
これは王子がいけないの。私のせいじゃない。
つい醜い言い争いを。しかも王子も退かないものだからどうにもならない。
極寒の中こんなことしてる場合じゃないんだけどな。
「まったくお前が無理を言うからこう言うことになるんだろ? 」
無理に連れて行けと言ったのを非難。
しかも急いだことでこんな事態に陥ったと嘘ばかり。
夏以外はほとんど吹雪いてるんだからそんなの関係ない。
これは単純に王子の判断ミス。案内すると胸を張るからすべて任せたのに。
それを今になって人のせいにするんだから。
「うるさい! あんたが準備せずこんなか弱いお嬢様を連れてくるからでしょう」
「ああもう分かったよ。好きにしろ! もう付き合わなくていい」
嫌気がさした王子による決別宣言。
何もそこまで言わなくてもいいのに。もう子供なんだから。
「まさか私を置いて行くつもり? 」
「ああ…… そう言うことになるかな。もう充分だろ? 」
「最低! 」
「それはそっちだろ? 」
「あの…… 」
「私だって言うの? 」
「あの…… 」
「そうだクレーラが悪い! 」
「あのあの…… 」
「もうさっきから一体何なの? 」
「お取込み中済まんがうるさいよあんたら。観光客かい? 」
どこからともなく人の声がすると思ったら人の良さそうなおじさん。
「最低はどっちだ! 口ばかりなんだからってあれ…… 」
「だからあの…… 」
「ちょっと待ってて…… 王子がそう言う人間だとは知りませんでした! 」
「お前が我がままなんだろうが! 」
王子はなぜかお怒りになってる。私何かした?
「いい加減にしろ二人とも! 」
ついに我慢できずに間に入るおじさん。
「うるさいと言ったろ? 痴話喧嘩はみっともない。よそでやってくれ! 」
「あれあなたは? 」
「ああここの者だ。あんたらは観光客だろ? 」
「私は…… 」
自己紹介をする。
「ああ王子様に会いに来たのでしたらこの道を進んで左に曲がれば見えてきます。
もしよろしければご案内しましょうか? 」
彼は王宮にも仕えたことがあるそうで案内役にはもってこい。
お言葉に甘えて付いて行くことに。
「こちらはこの国のシンボル…… それから手前に見えるのは…… 」
いちいち観光案内してくれるのはありがたいですが寒い。とにかく寒い。
王子と離れ体温を失うと急激に冷えてきた。
できれば早く室内に入りたい。
体が冷えてどうにかなったら大変ですものね。
しかしお構いなしに続ける。良い人だとは思うがどうも困った人。
「はいこちらが宮殿です」
ようやく目的地に着いた。
さあゆっくりしましょう。取りあえずこの寒さから解放されればそれでいい。
親切な男は交渉役をかって出る。
当然だが宮殿には勝手には入れない。
「申し訳ない。お約束がなければお会いできないと」
「おいおいきちんと伝えたのか? 」
「はい。ですが信用されてないのか了承を得られないようで」
「よし分かった。だったら勝手に入らせてもらうぞ」
警備の者を振り切って堂々と室内へ。
暖を取れればそれでいい。後のことは野となれ山となれ。
「待て無礼者! 」
振り切った王子に飛び掛かるが歩みを止めない。
「足を取れ! これ以上先に進ますな! 」
警備側としては不審な男を入れてもし何かあったら取り返しがつかない。
失態になるだろう。だから必死に食らいつく。
「邪魔だどけ! いるんだろう? 」
「なりません! これ以上はおやめください! 」
どうやらこの先に目的の人物が。
続く




