リョウガ王国
新たな挑戦。
王子の後について異国の王子を探る旅へ。
馬車を降りるとそこは極寒の地リョウガ大国。
北の果てにあり知る人ぞ知る隠れた名湯でお馴染み。
暇があればぜひ寄ってみたいところ。
友好関係にあるリョウガ王国には一年に一度は訪れるそう。
だから道案内は任せろと言うが…… 果たして任せていいものか?
これだけ吹雪いていれば今ここがどこなのか分からない。
そんな危険が常に付きまとう。
はっきり言って頼りない王子の道案内では心もとない。
でも他に道案内人もいないし。
ほぼ一年中と言っていいほど雪が降り夏の僅かな間だけ晴れ渡る。
大変過酷な環境。
私も噂には聞いたことありましたがまさか本当に存在するとは思いませんでした。
今は当然夏ではありませんので吹雪いている。
嫌になるほどの洗礼を浴び歩みを進める。
「馬車は…… 」
「ああここまでだ。自分の足で王宮まで行くしかないんだ」
とても過酷な旅。毎日のように行列に並んでいたので耐えられるかと勝手に。
でもどうでしょう。一キロどころかすぐにでも視界を奪われ遭難しそうになる。
寒さだけでなく風も強く吹雪いてくる。その分過酷になる。最悪の条件。
果たしてこんな酷い環境に適応する人間など存在するのでしょうか?
王子が紹介する異国の王子は果たして本当に人間? それさえ疑わしい。
「もうダメ! 疲れた! 」
「ほら弱音を吐かずに。ここで遭難したら大変なことになるぞ」
王子と二人っきり。とても平和な国なんでしょうね。
ですが自然の脅威には太刀打ちできない。
雪など何年ぶり? 幼い頃に旅行に出かけた時以来ではないでしょうか。
もちろん我が町でも雪が降らないことはありませんがそれは年に一回か二回。
積もるようなことはもちろんなく憧れは常にありました。
だから雪を待ち望むことも。
リョウガ王国に来てその思いは打ち砕かれる。
辺りは雪。雪だらけで何も見えない。
白い木々が見えるだけ。
もう手の感覚がない。軽装で来るべきではなかった。
「急ごうクレーラ! もうすぐのはずだから」
そんなはずないのにいい加減なことばかり。
「王子あとどれくらい? 」
「あと三十分も歩けば見えてくるはずだ。もう何も考えず無心で歩くしかない」
タイムリミットが迫ってると言うのにこんなところへ来るんじゃなかった。
後悔してもしきれない。
異国の王子を紹介してもらえると思いのこのこついて来た。
甘い考えだったらしい。
そうやってアドバイスをもらいどうにか一時間無心で歩いた。
こんな仕打ちを受けるなんて思いもしなかった。
きっと王子は私のことを大切に考えてないんでしょうね。
雪の王国・リョウガを目指す旅。
「ねえ暖かくありません? 」
急に太陽が降り注ぐような暖かさ。
でも前を行く王子の顔は変わらず強張っている。
これは一体どう言うことでしょう?
でも暑いほどの暖かさ。まるでホットチョコを頂いているような気分。
冬はいつもお婆様御手製のホットチョコで寒い朝を乗り切っている。
だからなのか甘くドロドロした液体を口にした時の感覚が再現されてるかのよう。
当然ここは異国の地。だからお婆様もホットチョコも幻だって気づいている。
でも暑くて暑くて脱ぎだしたくなるほど。
どうしてしまったのだろう? どこか体がおかしいのかしら?
寒くてしょうがないはずなのにポカポカして気持ちがいい。
凍てつく大地に太陽の光が注いでるかのよう。
「どうしたクレーラ。さっきから大人しいが…… うわ! 何をやってる? 」
「ほら王子も我慢せずに脱いでください。暑くて暑くて堪りません」
「バカ! こんなに寒いのに脱げば凍死してしまうぞ。一体何を考えてるんだ?」
王子は暑いと言うのにやせ我慢してそのまま。
汗をかいて風邪でも引いたらどうするつもりなんでしょう?
王子と言っても私よりも幼く旅は不慣れ。
私がサポートしてあげなければいけません。
「さあ王子お脱ぎになってください」
もう有無を言わせずに強制的に脱ぐように服を引っ張る。
「馬鹿を抜かせ! こんなに寒いのに脱ぐ奴があるか! 」
王子は言うことを聞かない。もう我がままなんだから。
続く




