漁港
マッギの情報を基に港へ向かうことに。
馬車を飛ばせば港まですぐ。
まったく心配ばかりさせて本当に困った王子。
一人だと不安なのでマッギに再度頼み込む。
「さあ着いて来てマッギ! 」
「おい冗談だろ? 俺はまだ足を痛めてるんだぞ?
どれだけ人使いが荒いんだお前は」
呆れるマッギ。囮にしたからまだ怒ってるらしい。
子分のくせに生意気なんだから。文句言わずに着いてきなさいよね。
私一人で行っても到底太刀打ちできない。
だって私は可愛らしいお嬢様。それでも一人で行けと? 鬼なの?
「ねえマッギ…… 」
「甘えた声を出しても無駄だ。うわ…… 痛ええよ! 」
白々しく大げさに訴える。これは事実だとしても嘘臭く聞こえてしまう。
「そんなこと言わないでさ。ダメ? 」
「ダメだと言ってるだろ? しつこいぞ! ダメなものはダメだ! 」
こうなると頑固だから困るのよね。
どうやらこれ以上は無理らしい。機嫌が直るまで待つしかなさそう。
「じゃあな」
「マッギ? マッギったら! 返事してよ! 一つ頼みが…… 」
マッギはもう寝ると相手にしない。
仕方がないか。まだ無理はさせられないか。
一応はお礼を言って別れる。
どうせあの足では足手まといにしかならない。
さあどうしましょう? このまま一人では心細い。
でも他に当てもないし。
頼れる人がいればいいんですけど。
さすがにお婆様は無理だし…… コーコも見当たらない。
王子でも…… ああその王子を探してるんだっけ。
とにかく港まで行ってみることに。
うん。やっぱり海風が強い。
髪が傷んでしまわないか心配。
馬車を降りてすぐに聞き込みをするも相手にされず。
「邪魔だ邪魔だ! 今は忙しい。他を当たりな! 」
船が港に着いたばかりで手が離せないと。
どうやら大きさや形から漁船だと分かる。
「おかしな三人組を見ませんでしたか? 」
お父様の知り合いは二人だった。ただそれ以上の手掛かりがない。
「そう言われてもな…… 他を当たってくれや。今は忙しいんだよお嬢さん」
ようやく捕まえた男に話を聞いてもこの通り。忙しいのは承知してます。
やっぱり無理があるのかな。もう行ってしまった? 今更遅いか。
手がかりがあるはずないよね。
ぐうう……
そう言えば朝から何も食べてない。
メイドに断って出てきてしまったから。
急にお腹が空いてきた。
少し早いですがお昼にしましょうか。
朝港に水揚された魚を使った海鮮料理がこの辺りの名物。
隣国からもそれ目当てにやって来るほどの人気ぶり。
さっそく名物の海鮮料理を注文するとしましょうか。
「うん? クレーラじゃないか? どうしたこんなところで? 」
目の前で呑気に食事をしていたのは王子。
「王子ご無事でしたか? 良かった! 」
つい心配のあまり本心が出てしまう。
ついでに安心したのか涙まで出てくる始末。
もう言い訳が通用しないレベル。
「クレーラ…… 」
「いえその…… 王子が行方不明だと私の身にも危険が及ぶので仕方なく…… 」
「済まないクレーラ。心配かけたな」
そう言って海鮮料理に舌鼓を打つ王子。何だか無性に腹が立ってきた。
「あんたが勝手に行くからこっちが苦労するんでしょう?
新入りなんだからあまり世話を焼かせないでよね! 」
我慢できずに注意する。
「済まないクレーラ。心配させるつもりはなかったんだ…… 」
そう格好つけるが未だに手を止めない。
人の話聞いてるの? 呑気に食べてるんだから。
「もう知らない! 」
「待ってくれよクレーラ。これ凄くおいしいんだ。一緒に食べよう」
あまりにも呑気な王子。まさか本当にただ海鮮料理が食べたくてここへ?
グルメな王子様だこと。
「ははは…… お嬢さんもどうだい? 」
「はいはい。私だってお腹空いてるんだから」
勧められては断れない。食すことに。
「どうだおいしいだろクレーラ? ここは新鮮で変わった料理が提供されるんだ」
「はあ…… 」
「まさか口に合わなかったのか? それとも苦手なものがあるのか? 」
「いえおいしいです。しかし呑気な王子に呆れています」
疑惑の王子。ただのグルメ王子ではありませんよね?
食事を終え二人きりで海沿いを散歩することに。
続く




