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消えた王子

翌朝。王子との秘密の同居生活三日目。

三日目に突入したのはいいですが肝心の王子の姿が見当たらない。


朝方まで眠れずについ寝坊してしまった。

「あれ王子…… 」

「どうされましたクレーラ様? 」

朝食の準備が整ったと呼びに来たメイド。

私一人だけ。王子の姿はどこにもない。

起こさずにどこかへ出掛けてしまったらしい。

もう自分勝手な王子なんだから。

ご自分の立場も弁えずに先走る本当に困ったお方。


「あの王子が…… 」

まずい今はプレゼーヌ。つい口が滑ってしまう。

もうどこまで迷惑を掛ければ気が済む訳?

私から離れたら危険だってあれほど言ってるのに。

もう知らない! どうなっても知りませんからね。

ああもうイライラするな。元々朝は弱いのに何てことしてくれるのよあの王子は?

それもすべて王子の暴走に寄るもの。

これでは支えることも助けることもできない。


「王子様ですか。失踪されたとかで大変ですよね」

もうすでに王子失踪の噂は皆に知られる存在になった。

「ええ。それよりプレゼーヌの姿を見ませんでしたか? 」

「いえ今朝は見ておりません。どうかされましたか? 」

大事にはしたくない。でも探さない訳にはいかない。

「いえ何でもない。どうやらプレゼーヌは朝早くに出掛けたらしいの」

昨日の話を聞いて戻る気なのでしょう。でも問題はお父様。

お客様と何やら良からぬことを計画していたのは間違いない。

それが具体的にどういうものか聞き取れはしなかったが。


「お父様はどうされていますか? 」

「それでしたら朝早くからお客様とお出かけになられましたよ」

遅かったか。王子は追い駆けたか。逃げたかしたのでしょう。

王子行方不明。

どうやら私を信用してないらしい。まあ当然か。

もう本当にバカ王子なんだから。世話が焼ける。

とにかく今私にやれることをしなければ。


屋敷を出てマッギのもとへ。

「マッギ! マッギ! 」

「朝っぱらからうるせいな! 」

足を怪我して自由に動けずにイライラしてるからか口が悪い。

「マッギ! 王子がいなくなったの。どうしよう? 」

「はあ? それは良かったじゃねえか。厄介払いできてよ。

確かにあの方は俺たちと約束したよ。たぶん守るお方さ。

でもお前にとっては父を追いやった憎むべき敵だろう?

心配することはないだろ。なるようにしかならないさ。

まさかお前もあの王子がいいって言うんじゃないだろうな? 」

マッギは私を試してる。王子に靡きかけてることを見抜いてる。

どうなろうと知ったことじゃないと突き放すマッギ。

私だってこの際王子がどうなろうと構わないんだけど。

でも王子は没落した我が一族の再興にはなくてはならない人物。

再び爵位を得て地位を回復しなければならない。


「でも…… 私は同行するように言われていて…… 」

「だからその王子が同行を拒否したんだろうが。構うことはないさ。

お前はいつも通りしていればいいんだよ。

どっちに転ぼうがどうなろうと俺たちには関係ない」

突き放す。当たり前か? 

コーコのこともあり王子へあまりいい感情を抱いてない。

マッギは悠長なことを言うが昨晩のこともあって居ても立っても居られない。

王子を探さなければ。王子を連れ戻さなければ。

危険な単独行動を取らせてしまった。

なぜ私を置いて行ってしまうのです? 本当に自分勝手なんだから。


「それにしてもお前の親父さん元気になったな。

この辺では見かけない柄の悪い連中とつるんで楽しそうにしてたよ。

爵位を返納させられプライドをズタズタにされたからな。

立ち直るのはもう少し先だと思ったがな」

「まさか見たの? 」

「ああ。たぶん船に乗ったんじゃないかな」

朝の出来事なのでこれ以上は知らないそう。


「その船がどこに向かったか分かる」

「さあな。でも今朝だから覚えてる者もいるだろうさ」

「そう。あんた歩けるならもう一緒に来なさいよ」

「人使いの荒い奴だな。俺はまだ怪我人だ。お前たちが見捨てたからな」

「それはあなたが囮になるって言うから…… 」

「いやいいよ。気にしてない。今朝はちょっと用があってな…… 」

どうやらコーコとはうまく行ってるらしい。

コーコの肩を借りて歩く姿が目に浮かぶ。


マッギの情報を基に港へ向かう。


                続く

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