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パンキー

自室に戻る。

シャワーを済ませ寝支度をしてからベッドに勢いよくダイブ。

あーあ疲れたな。もう早く寝たい。

でも明日からのことも考えないといけないし……


タイムリミットは一か月か…… それまでにどうにかしないと。

ベストは改めて国王様から爵位を頂くこと。

それが無理なら他所の爵位でも構わない。

とにかく何でもいいから爵位を。


そろそろ離れる準備をしないとまずいよね。

そう…… この慣れ親しんだお屋敷を出て行かなければならない。

嫌だな。今までほとんどの時間をここで過ごしてきたのに。

それが奪われるだなんて絶対に嫌。抵抗してやる。


でも無理なんでしょうね。分かってるんです。

できることとできないことがある。

駄々をこねて拒絶できるならぜひしたいもの。

もう決まったこと。私の力ではどうすることも。ただ祈るぐらい。


幼い頃の思い出がたくさん詰まっている大切な場所なのに……

だって生まれ育った場所なんですよ?

故郷を捨てる? そんなことできるでしょうか?

たとえ私が嫁いだとしてもここは戻るべき場所。

両親がのんびり暮らす場所で掛け替えのない場所。捨ててなるものですか。


ドレスだってそう。お婆様から頂いた可愛らしいドレスももうありません。

あるのは奥に仕舞い込んだ使い古された売り物にならないドレス。

もう捨てるしかないような代物。

いつまでも大事に取っておくようなものでもない。この際スパッと捨てたい。

でもいざ捨てるとなると決心がつかなくて。


宝石だってもう一つも。大きなお婆様の衣装鏡もどこへやら。

仲良しだったメイドたちも別れも言わずに急にやめてしまった。

私が何かした? 心当たりは一つや二つじゃない。

それからパンキーも……


わわん! 

あらまだいたわねパンキーは。さあ一緒に寝ましょうか。私を癒してね。

もう本当に疲れたな。非力なお嬢様の私には三日分の食糧は堪える。

拷問以外の何物でもありません。


パンキーはお父様が拾ってきた正真正銘のミックス犬。

あの日のことはよく覚えてます。確か雨が降っていました。

酔っぱらって気分を良くしたお父様がプレゼントがあると言うものだから。

期待したらパンキーだったのでびっくり。

それはものすごくうれしいですけど。モノだと思ったので大喜びできなかった。

お父様は笑ってましたがお母様は怒りに震えてました。

無理もありません。何と言ってもいきなりですからね。

お婆様に至ってはすぐに捨ててこいと叱りつけていましたっけ。

そんなのお構いなしなのがお父様。


翌日我に返ったお父様は大慌て。どうしたものかと困ってると救いの手が。

上のお姉様が責任をもって面倒をみるからと申し出た。

パンキーを可哀想に思ったお婆様から渋々お許しが。

そうなれば下のお姉様も参戦。私もつられて。

誰が面倒を見るかで揉めに揉めて最終的には上のお姉様がお世話することに。


でもパンキーはすぐに粗相をするものだから躾が大変。

我慢できずに投げ出してしまう。

そしてついに私のところへ。


「ねえパンキー。明日はついて来てくれる? 」

パンキーが無邪気に抱き着いてきた。

「もうパンキーったら。約束だからね」


この辺りも屋敷から離れると昼間でも危険なところが結構ある。

今までは行く必要もなかったので特に気にもしてなかった。

お婆様の言いつけで決して近づくなと。

一人では絶対に近づくなと口を酸っぱく何度も何度も。


でも今はそんなこと言ってられない。どんなに僅かな可能性にも賭ける。

危険は承知で明日からはタブーを犯すつもり。

多少の危険はあるでしょうがこれも仕方ないこと。

没落した今我がままも泣き言も言ってられない。

そんな身分ではもうないのです。

守られていた時代は終焉を迎えたのです。


あーあもう考えるのはよそう。どんどん辛くなっていく。

もうここは寝るに限る。

おやすみなさい。


                続く

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