マッギの隠しごと
マッギのお見舞い。
「昨日はごめんね。大丈夫だった? 」
重苦しい雰囲気の中どうにか言葉を継ぐ。
「これを見てそう思えるのか? 」
体全体に痛々しい傷跡。私たちを逃すために体を張ってくれたらしい。
特に足を挫いたとかで処置がされている。
「もう歩けるんだ? 」
「ああん? 冗談じゃない! あと一週間は安静にしてろとさ」
ご機嫌斜めのマッギ。
当然自分だけ痛い目にあったのだから文句言いたい気持ちも理解できる。
マッギはまだ気づいてない。自分が王子を救ったと。
この件を知ればマッギは命の恩人として褒め称えられるでしょう。
褒美だっていくらでも。
ただそれだと危険に巻き込んだ私の責任が問われることにも。
それだけは避けなければ今までやってきたことが水の泡になってしまう。
だから余計なことは言わない。
「これどうぞ」
その辺で摘んできた野草。ないよりは良いかと。
どうせマッギのことだから分からないでしょう?
「間に合ってます」
そうやって生意気を言う。かわいくないんだから。
「もうマッギ。機嫌を直してよ。私たちの仲じゃない」
「そうだな。主従関係だもんな俺たち」
不満を述べるマッギ。これは甘えてるな?
「ごめんってば。ほら頭を出して」
「うわやめろ! 俺は怪我人なんだぞ? ちょっとは大人しくしててくれ」
優しく撫でてあげようと思ったのに…… もしかして叩かれるとでも思ったの?
第一の子分を蔑ろにするほど非常識ではありません。
「マッギ! 」
「もういいから帰ってくれ! 」
せっかくお見舞いに来たのにその態度はなんなのよ?
「そうだ。人手が足りないでしょう? 良かったら…… 」
「良いから早く帰ってくれ! 」
うるさいから寝れないと駄々をこねる。
「ほらプレーゼだっているしさ。どう彼を泊めてあげるのはいかが?
きっと役に立つと思うよ」
王子を厄介払いするつもりはない。でも王子が望むならそれも仕方ないこと。
「あのなクレーラ。俺は異国の地を回り情報収集するのが仕事。
何て言っても吟遊詩人だ。だからこの足ではどうにもならないのさ」
よく分からないこと言って…… この様子だとどうやら相当怒ってるみたい。
残念ながら王子の引き取り手にはなってくれなそう。
あれ…… 花瓶がある? その上花がきれいに活けてある。
前にお邪魔した時はそんなものなかった。
それだけじゃない。随分きれいに片づけられている。
こんなこと彼ができるはずがない。そうなると……
「悪いな二人とも。プレーゼも泊めてやれない。他を当たりな」
あれ? 怒ってるのは納得。でもいつもこんなに格好をつけてたっけ。
そうするとマッギは怒ってるのではなく焦ってる。そして何かを隠そうとしてる。
隠す場所と言えば隣の部屋しかないか。
「ねえマッギ。今日は誰も来なかったの? 」
「ああ今日は暇だったぜ。本当に動けなくて腹立ったな」
嫌味で返す性格の悪さ。これは改善しないと嫌われる。誰かさんに。
「ねえマッギ。もう一人ぐらい泊めてもいいんじゃない。プレーゼは大人しいし」
「ダメだって言ってるだろうが! もう一人来られちゃ…… 」
そこでストップ。どうやら何かに気付いたらしい。
すぐに顔が真っ青に。その後興奮して怒り出す。
喚き散らし終えると疲れて寝てしまう。
さあそろそろ真相解明と行きますか。
「ちょっとマッギやめてよ! 何をするの? 」
慌てふためくマッギ。それもそのはず。
ただ怪我をして寝ているだけ。動こうにも動けないはず。
「マッギ…… ダメだってば! そこは触らないの」
マッギは首を振るばかり。でも恐らく見えないでしょうね。
「止めてくれ! 俺が悪かったよ親分」
邪険に扱ったことを謝るがもう遅い。さあそろそろ我慢の限界でしょう。
「おいクレーラ」
慌てふためくマッギに代わって王子が止めに入る。
でもお構いなしに叫ぶ。
「いや何を言ってやがる。俺は何もしてないだろう? 」
「もうどうしたのマッギ? さっきから焦ってばっかり」
「ちょっと親分。それはないっすよ。俺を嵌めてどうしようって言うんです」
焦ったマッギ。もう訳が分からないと治ってもいないのに歩き回る始末。
「何をやってるんだクレーラ! 君らしくもない」
王子が止めに入るが一歩遅かった。
誘い出せれた一人の女性。
首を振り続けるばかりのマッギにもう何が何だか分からずただ茫然とする王子。
続く




