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一億でナイトの称号を

何と今回は爵位の授与にはお金が掛かるそう。

少額なら構わないですが果たしてどうでしょう?


「晩爵が欲しい者は一億払って頂きます」


晩爵にはランクがあってAランクがサケ。Bランクがツマミ。Cランクがサカナ。

その上を行くのがナイト。要するにSSランクにナイト。

どれだけ貢献したかでランクが変化。

特にナイトの威力は本物でこれさえ持っておけばどの国でも歓迎される。

一族が復興すること間違いなし。


「どうだいあんたもナイトの称号を得たいだろ? だったら一億支払いな。

そうすればくれてやるよ。バッジでもディスクでも何でもだ! 」

そうは言ってるがナイトの称号をくれるとは一言も。

引っ掛かっては馬鹿を見ることになる。

バッジは分かるが一億でディスクとはどう言う意味だろう?


これは悩みどころ。

「プレゼーヌ。どうしましょう? 」

王子の資金力に頼る。情けないがこれも王子の善行か罪滅ぼしだと思えばいい。

「馬鹿を抜かせ! あるものかそんな大金」

意外にも庶民的な王子。これなら民からの信頼も厚いだろう。

こっちとしては気前がいい王子が見たいんですがね。


「ちょっと待って。実物を見せてくれません? 」

一億払って偽物だったら目も当てられない。

取り敢えずバッジを確認する。


金色に輝くバッジはどうやら本物の金で作られているらしい。

ディスクの方も同じようだ。

「ほら本物だろ? 疑っちゃ困るよお嬢さん」

そう。これらは金でできてるのは間違いない。

それなりの価値があるでしょう?

しかしこれがこの国の正式なものとは限らない。

国王のお墨付きがなければ信用できない。でも……


「どうしました? お支払いできなければ列を抜けてもらいますよ」

足元を見る商売上手の男。

「あの…… 晩爵の称号とバッジはどれくらい? 」

「数えて見んことには分からんが百個は優に超えてるな」

「そうですか…… ではごきげんよう」

一億払えば生き残れたがそれだけの財力は今の私たちにはない。

これもすべて王子のせい。王子さえお父様を追放しなければ一億ぐらい……

いやいや…… そんなことはないか。

どこまで迷惑を掛ければ気が済むのこの王子は?


結局今日も伝説の称号に行きつかなかった。

まだ六日ある。諦めてはいけない。

「おいクレーラ。どこへ行くんだ? 」

「お見舞い。マッギが怪我したみたいだから」


昨夜の襲撃でおとりとなった吟遊詩人のマッギ。

異国の話をして相手を油断させるまでは良かった。

私たちもその間に脱出できた訳だから感謝しなければ。

でもマッギは終わりまで喋ってしまったから。

その結果我に返った男たちから袋叩きに。

それだけでなく足を滑らせて足を挫いてしまったらしい。

可哀想に。私たちのために犠牲になるマッギは本当に尊い存在。


今は大人しく家で休んでるらしい。

朝マッギの仲間が知らせてくれた。

本当はすぐにでもお見舞いに行きたかった。でも合わせる顔がなくて。

つい遅くなってしまう。だってマッギを誘ったのは私だから……

おとりを命じたのも実は私だったりして。


トントン

トントン

「はいマッギ。元気してた? もう心配したんだから! 」

勢いに任せてまくし立てる。

これで罪悪感から逃れるかと思いきや様子がおかしい。

「済みません。どちら様ですか? 」

マッギの家だと思ったら隣の家。しかも空き家だったはずの家に人が。

慌てて謝罪して出る。


あーあまたやっちゃった。そそっかしいってよくお婆様に注意されたっけ。

最近はもう立派に成長してそんな失敗なかったんですけどね。

マッギのことが心配で心配でつい。


改めてマッギの家に。

「もう何やってるんだよ! 」

足を引きずってマッギが飛び出してきた。

「うるさいマッギ! お見舞いに来てやったんだからありがたく思いな! 」

「その格好で? どうせまた並んだ帰りなんだろ? ついでにどうも」

口答えするだけでなく嫌味で返す一番弟子のマッギ。

相手はどうやら一番弟子とは思ってないらしい。

まったくどうして善意を受け入れられないのかしら?

せっかくお見舞いに来たのにこれではまるで迷惑みたいじゃない。


                 続く

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