可愛らしいプレゼーヌ
ここは大人しく一緒に寝てもらいたい。
「でもクレーラ。私は男でその上王子…… 」
そんなことは百も承知。
言い訳ばかりして中々ベッドに入ってこようとしない。
まるで駄々っ子のよう。
ここに来てこうなることは予想が付きそうなもの。
「我々民は言ってみれば国王の子供。ですから王子とは兄弟となります。
ですからまったく何の問題もありません。さあ我がままを言わずに。
大人しく寝てください」
王子をどうにか説得する。
ただ兄弟だから逆に一緒に寝るのはまずい気も。
まあ細かいことはこの際どうでもいいか。
王子が大人しく寝てくれたらそれでいい。
「もう王子ったら分かりました。子守唄ですね。
まったくまだまだ子供なんですから」
王子をからかうのは何て快感なのでしょう。
「バカを抜かすな! 一年前に…… 」
「ウソ? 一年前までお聞きになられたんですか? 」
王子だから普通の男の方とは違うとは思ってましたが幼過ぎでは?
これではいつまで経っても立派な国王にはなれない。
ただ恥ずかしがってるのでまだどうにか救えるかな?
ここは臨時教育係のクレーラとして厳しく躾けるべき。
その前に……
「ではご本でもお読みしましょうか? 」
「そうだな…… いやいい。お前には悪意がある」
「分かりました。ではもう寝ましょうね」
「いやしかし…… 」
「ほら予行練習だと思ってどうぞ」
「何の? 」
王子のお相手はもう間もなく決まるでしょう。
その時にお相手を失望させないためにも堂々としてもらいたい。
もう私にはほぼ関係ない王子のその後。それでも一国民として見守っていきたい。
何だか本当に複雑。もう困った人。
恥ずかしがってばかりの王子。仕方がないのでここは強気に出る。
「ほらプレーゼ! 一緒に寝るんだよ! 」
「でも親分無理ですぜ」
切り替わりの早い王子。意外にも気に入ってる?
「命令が聞けないのか? 風邪を引くだろう! 」
王子からプレーゼへ。
「でも恥ずかしいし…… 眠くないし」
まだ決心してないなんて本当に優柔不断なんだから。
イライラするなもう。王子でなかったらぶっ飛ばしてるところ。
あれ? 王子が頬を押さえてる。どうしたのでしょう?
これでは押し問答が続くだけ。下手に騒げば周りに気づかれる恐れも。
もう夜ですからね。少なくなったとは言え見回りはいる。
「ねえプレゼーヌ。私たちお友だちでしょう? 一緒に寝るのは嫌? 」
「嫌…… ではありません。クレーラがいいと言うなら」
こうして観念したプレゼーヌはベッドへ。
さほど大きくないベッドに二人はきついですが何とかなるでしょう。
「では明かりを消しますよ」
「待ってクレーラ。私あの…… 」
まだ恥ずかしがってる。どこまで情けない訳?
「プレゼーヌさあ早く! 」
「ごめん。寝る前におトイレに」
「もうプレゼーヌったら。おトイレは部屋を出て左に進んで階段を超えたところ」
「あのクレーラ…… 」
「まだ何か? もう眠いんですが」
「その…… 一緒に行こうよクレーラ」
「冗談? 本気ですか? 」
もう夜に一人でトイレにも行けないなんて何て情けない王子。
これがお父様を失脚させた男とは思えない。
「ほら手をつなぎましょう」
こうして王子の世話を終え一緒に寝ることに。
何だかまったく訳分からない展開。
倒すべき怨敵のはずの王子と手をつないでトイレに行き今一緒にベッドへ。
ふしだらな女だと思われるでしょうね?
でもこれが王子なら仕方がないのです。
国王は民の父でありその子は兄弟。だから何一つ問題がありません。
これだって恥ずかしがる王子に嫌がらせしてるようなもの。
「もう近づき過ぎです王子! いやらしいんだから」
「そんなこと言っても狭いんだ。仕方ないだろ? 」
「はいはい」
王子をからかうのは楽しい。
「もう分かったよ。これでいいんだろ? 」
言うことを聞いて端っこによる。何とも情けない姿。
「ほらプレーゼ! もっと近づきな! 命令が聞けないの? 」
「はい? どっちなんだよクレーラ。
もううれしいんだか悲しいんだか良く分からない」
「プレゼーヌ。さあ女同士なんだから恥ずかしがらないの」
「済みません。済みません。もう勘弁してください! 」
「ほら王子」
「やめて! もう限界だ! 」
こうして激しい夜は過ぎて行った。
続く




