王子の頼みごと
宮殿を後にする。
これで付き添い役からも解放される。でも……
もしかしたらがあるかもしれないと密かに期待していた。
でも見事に何もなかった。
これもすべて優柔不断な王子のせい。
もうバカ王子! まったくどれだけ迷惑を掛ければいいのでしょう?
お婆様との約束も果たせそうにありません。
どうやって王子に取り入ればいいの?
「では出発してくれ」
いつの間にか紛れ込んでいた珍客。勝手に話を進めてしまう。
「まさかあなた様は? 」
コーコが先客の正体に気が付いた。と言うかあいつしかいないか。
「さあゆっくりこの後のことを話そうか」
王子は上機嫌。この人はどうしてしまったのだろう?
優柔不断が過ぎて国王に見捨てられた?
もうこんな情けない王子はいらないとか?
家出寸前のノラ王子を一匹保護。
宮殿はさぞかし息苦しかったのでしょうね。
何だか生き生きしていて楽しそう。
いたずら王子の復活?
「嬉しい! 」
堪らずにコーコが抱き着く。
一国の王子に何て大胆な。信じられない。
いくら人の目がないからって私も一応はいるんですがね。
「落ち着いてくれコーコ。ほらそこの者」
王子が優しく引き離すとコーコが我に返り恥ずかしそうに固まる。
なぜか私に振る王子。これって頼られてるの?
「あんたね! ここで一体何をやってる訳? 」
もう我慢の限界。いくら王子でも無礼は無礼。
ご婦人の馬車に勝手に入り込むなんて常識が備わっていない。
もう呆れるしかない。
コーコが許しても私は容赦しないんだから。
「ほら話があるなら聞いてあげるから。
いい加減コーコを動揺させる真似は止しなさいよ! 」
王子に対して強く出る。
「ははは! 面白いな君は。まるで何も恐れていない」
「いいから早く昨日の続きをしなさいっての! 黙ってあげてたんだからさ」
我慢できずに急かす。これはお婆様からの遺伝ね。
「昨日の続きってどう言うことクレーラ? 」
一人置いてけぼりのコーコ。
「それは私も詳しくは何も…… ほら王子お願いします」
追及されて王子に振る。
「実は折り入って頼みがあるんだ」
「王子…… 私…… 」
コーコが耐えられずに告白する。
「済まないコーコ。君とは結ばれることはないだろう」
あまりにも残酷なことをきっぱりはっきり言う王子。少々人間性に問題が。
優柔不断ないつもの王子は見る影もない。一体どうしてしまったのだろう?
王子の気持ちはコーコに傾きかけていたはず。
まさか私の思い違い? ただの勘違いだった恐れも。
「そんな王子! 私どうしたら良いんです? 」
顔を覆い涙を流すコーコ。これは止まりそうにない。
極悪非道な王子のやりそうなこと。人の気持ちを弄んで考えようともしない。
お父様をそうやって追い込んだのもやはり王子だった。
すべての始まりが王子である。
「泣くでないコーコ。まだ何も決まっていない」
コーコに興味ないなら一体何のために馬車にまで乗り込んで来たのでしょう?
「もう王子が泣かせたんですよ! 責任取ってくださいね」
「分かった分かった! できるだけ思い通りなるようにしてやろう」
いつの間にか重苦しい雰囲気に。
それでも王子の持ち前の明るさでどうにかなった。
しかしそれでもコーコが泣き止むことはなかった。
「それでお前たちに話したいことがある」
「だからコーコを何とかしなさいよ! 」
「うるさい! それは付き添いのお前の役割だろ? 話を遮るな! 」
うわ…… また人に押し付ける。
「はいはいそれで? 」
ようやく昨夜の続きが聞ける。ずっと王子の様子がおかしかったから。
「匿ってはくれるぬか? 」
予想外のことに何と答えていいのやら。もう意味が分からない。
匿うとはどう言うことだろうか? 一体何から逃げ回る必要があるの?
「何を言ってるのよあんたは! 」
つい言葉が乱暴になってしまう。これもすべて王子が悪い。
「だから数日の間行動を共にしてはくれぬか」
もっと具体的に教えてくれなくては助けようにも助けられない。
でも王子に取り入るように言われてるしな。
「仕方ありませんね。承知しました」
王子の頼みとあっては断れない。
馬車で揺れること約一日。ようやく我が町に。
これで帰れる。帰れるんだけど……
もう何の気兼ねもなく行列に並べると思ったのに王子のお守する羽目になるとは。
ついてない。本当についてない。
それだけではない。ショックを受け未だに立ち直れないでいるコーコの面倒まで。
なぜこうも私はついてないのでしょうか?
匿うとは穏やかではない。詳しく聞くことに。
続く




