婚約破棄
私はクレーラ。
最近何かと災難に見舞われています。
お祓いでもしようかな。
今日だってそう……
あらぬ疑いを掛けられ仕方なく列を離れることに。
ペロリンと最後尾に並び直す。
偶然見つけた行列にただ並んだだけ。
私はこの行列が何なのか知らない。知らなくていいと思っていた。
最後の最後のお楽しみを敢えて先に聞く無粋な真似はしたくない。
もちろんそんな悠長なことしてる余裕なんて今の私にはないのですが。
焦る気持ちも当然ある。でも何をするか自分でも迷っているところ。
やれることも限られてる中で自分のできることをしたい。
だから行列に並び続けなければならないのです。
このような行列は異国も含め全国に多数見かけるように。
何と言っても私は暇ですからね。日に一個も二個も行列に並ぶ。
その中にはきっと今の私が満足するようなものがあるはず。
それに行きつくまで並び続ける覚悟。
「まさか知らなかったのかい? 」
ベロリンにまで指摘されてしまう。
そう言われると急に恥ずかしくなってくる。
皆さん同じような身の上だとばかり思っていました。でも違ったらしい。
「はい。てっきり爵位を頂けるのかと思いまして。違うんですか? 」
「ははは! もう笑わせないでよ」
ベロリンは堪えたようですが皆さん大声を上げて下品にも大笑い。
ほとんどの方が離縁されたり貧しかったりだと言うのに本当に呑気なんだから。
私はまだ婚約破棄されただけで傷は浅い。それでもすごく落ち込みましたけどね。
元々それほど乗り気ではないところをお父様の勧めで。お婆様に無理やり。
だからそこまでの執着はなかった。その分立ち直りも早かった。
言い訳に聞こえるでしょうが事実です。
「あなたふざけてませんか? 」
前の高貴な方に叱られてしまう。ただ正直に答えただけなのにどうしてこうなる?
「いえ噂に聞いたのでてっきりこの列がそうだと勘違いして……
うわ…… まさかまたやってしまったの? まずい。まずい」
大げさに慌てて見せる。でもそこまで考えて並んでいた訳ではない。
「ごめんなさい。私の欠点は早とちり。今回もつい勘違いしてしまったみたい」
下手な演技でごまかす。これで文句ないでしょう?
「ほら気にしない気にしない」
ペロリンが慰めてくれる。
「あのもう一度確認します。ここは爵位を頂く列ではないんですね? 」
「もうしつこい! 」
怒らせてしまったらしい。これはまずいことをしたかな?
親切にも忠告してくれた方は怒って口を閉ざしてしまった。
仕方なくベロリンから聞くことに。
初めからそうすればいいのでしょうがどうしても恥ずかしいと言うか照れくさい。
「ははは! 噂を真に受けるんだから。皆さんパンを貰いに来たんでしょう」
年上で頼り甲斐のあるベロリン。ああこれでは私はただの田舎者。
「ではごきげんよう」
恥ずかしくて堪らなくなり逃げるように去ろうとしたところで腕を掴まれる。
「ほら気にしない。一緒に貰おうクレーラ。あなただって困ってるんでしょう?」
ベロリンが引き留めてくれたおかげで三日分の食糧が手に入った。
彼女には感謝しても感謝しきれない。
でも本当に欲しいのはこれじゃない。爵位なのです。
「あの誰か。噂の爵位の行列はどこでしょう? ご存じの方はいませんか? 」
皆さん爵位仲間だと思ったのに違ったらしい。
ただ首を振るばかり。知るはずもないか。
私だってそう簡単に爵位が貰えるとは思っていない。
今日はこれでいいでしょう。食糧も確保できましたから一歩前進なのかな?
ベロリンにも出会えたし。プラス思考でいこう。
こうして爵位を得る行列を探すことに。
ついでに私に婚約破棄を迫ったあの方に復讐を。
おっと肝心の王子を忘れるところでした。
別にほんのちょっと軽くですから。問題ないですよね?
国王様から爵位を剥奪される大変不名誉なこと。
もう二度とこんな惨めな思いはしたくない。
とは言え剥奪されたのはお父様であった私ではないのです。
言い訳に聞こえるかもしれませんがそれが紛れもない事実。
続く