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どの子がいい?

翌日。

改めて謁見の間で国王挨拶。

「昨夜は済まなかったな。ゆっくり寛いで行ってくれ」

国王は笑顔を絶やさない。


まずは自己紹介。

それが済むと国王のありがたい長話へと移る。

「えーこのバロンティア王国は先々代の王の…… 」

昔話に花を咲かせていては先に進まない。

「国王それくらいで…… 」

恐縮しながらも止める家来。もうかれこれ三十分は話されている。

決死覚悟の彼のおかげでこれ以上無駄な時間を過ごさずに済んだ。


「そうかそうか。長々と済まんな。では王子や。挨拶をせい」

機嫌を損なうギリギリのラインで止めたのでどうにかこうにか。

まだ物足りなそうな仕草の国王が引っ込んで代わりに王子が。


「お集まりありがとうございます。相応しい相手が見つかればと思っています」

硬い王子。どうやらお相手を目の前にして緊張しているらしい。

昨夜よりもしっかりしてるようですがまだまだ。可愛い王子だこと。


それにしてもさすがは王子の審美眼。皆さんお美しい。

女の私でも惚れ惚れしてしまう。

どの子がいいかしらなんてふざけてしまう始末。

特に私のお気に入りは小さく生意気そうな青いドレスの少女。

生意気そうな点は王子と一致している。

でも同じタイプは苦手かな? 

年は十六と最年少。最年長の白いドレスのローズとは二十二才と六つも離れてる。

しかもローズは色気漂う大人の女性タイプだからまるで親子のように見える。


王子の要望なのか色ごとに分けたキラキラしたゴージャスなドレス。

私も付き添いとは言え黄色のドレスで着飾る。

対象外なのでそこまで緊張することもなくただ楽しむだけだが。

ただ一応はコーコをサポートする役目がある。


緊張で無口なコーコは熾烈な王子争いから一歩後退。

このままずるずる行けば万に一つもチャンスもない。

落ちるべくして落ちてしまう。

それではさすがに可哀想なので声を掛けるも改善の見込みがない。

さすがにこれではまずい。どうしましょう?

王子が無口で貞淑な女性に憧れてない限り難しい。

せっかく五人に絞られたのに今動かないでどうするの?

もっと積極的に行くべき。

これでは打つ手はない。後は王子に任せるしかない。


どうもその王子がはっきりしない。

大人の女性も可愛らしい女性もいる。

コーコのようにまったく違うタイプの女性もいる。

これだけいると逆に迷ってしまうのだろうか?

何であれ早くお相手を決めて頂いて帰らせてもらいたい。

私だって暇と言う訳ではないんです。むしろ忙しいんですから。


紫のドレスを着た女性が王子の目に留まる。

優雅で軽やかな品のある女性。恐らくどこかの名のある令嬢でしょう。

王子もメロメロだ? あれ違うみたい。

だったらさっきから早口でおしゃべりを楽しむ緑のドレスのお方。

「王子様どうぞ私をお選びください。決して退屈はさせませんわ」

顔と言うよりは話術でここまで上り詰めたのか至って普通のどこにでもいる町娘。

こんなちょっとうるさいぐらいの普通の娘がいいの?

もちろん私と比べてですが。当然彼女だって地味と言うだけで申し分ない。

自分をアピールするのもうまいし国王様にも取り入ろうとしてるのがよく分かる。

私だってお話したらきっと仲良くなれる自信がある。でもここでは私は付き添い。

勝手な真似はできません。


「ははは…… うーん」

優柔不断な王子は自分で決めることができないらしい。

この際もう誰だって構わないでしょう? 早く選びなさいよまったく!

つい怒りが顔に表れてしまう。


ダンスタイム。

王子とそれぞれが踊って見せるがどれもしっくりこない様子。

まさかまだお相手を選べないの?

それは慎重と言うより優柔不断と言うものです。

もういい加減にしてよね。選べないなら選べないなりに方法があるでしょう。

目を瞑ってお相手を決めるでもいいしフィーリングで決めたっていい。

もし私に一存するなら当然コーコですがね。

コーコが一番個性的でしっかりもしてるしお相手に相応しいのでは。


ダンスを終えお食事に移る。

お相手を見極めようとするも皆しっかりマナーを守られてます。

一人音を立てスープを頂いている者が。それはコーコ。

まずい…… コーコがここでも失敗を?

「ははは! おいしそうに食べるな。うんいいね」

不快感を示すどころか興味を持ったようだ。


どうやら揺れに揺れている王子の心はコーコに落ち着いたらしい。


                続く

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