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王子と二人きり

コーコが水が欲しいと言うので取りに行くと王子に捕まってしまう。

「無礼者! まさかこの王子に意見する気か? 」

王子はお顔立ちもよく民からの人気も高い。

ただそれ故に少々生意気なところがある。

それさえ改善すれば立派な国王にだってなれるのに。未だに甘えがある。

お母様が早くに亡くなられたのが影響してるらしいので少々お可哀想な面も。

でもそれだからって我がままを言いお父様を失脚させるのはやり過ぎ。

王子にとっては軽いお遊びのつもりでも取り返しのつかないこともある。


まだまだ未熟な王子。

もしかしたらそれをお助けするのが私の役目なのかもしれませんね。

厳しく。時にはもっと厳しく。たまには暴力で。

それくらい躾けないと王子はダメになってしまう。

ふふふ…… まるで王子の教育係のよう。

私はただのコーコの付き添いでしかない。

身分を弁えるべきでしょうか?


「はいはい。ダメですよ王子。もう寝なければ風邪を引きます」

年は恐らく私と同じか一、二個下だと推測する。

正確な王子の年までは噂程度では窺い知れない。

国民に知れ渡っていないところを見るとあえて隠しているのかなと。

「その方は舐めておるな? 」

「ううん? 」

ダメ。つい王子の生意気な態度に怒りが爆発しそうになる。

ただでさえ復讐に燃えてると言うのに逆なでするような言動。

このクレーラ様がきっちり王子を教育して見せます。

おっと…… まずいまずい。下手に手を出せばコーコにまで迷惑が。

ここは笑顔で王子を睨みつける。


「おい怖いではないか! 」

「ところで王子はなぜここに? 」

「我が城だぞ? 不思議なことを聞くでない! 」

「寂しくて眠れないんですか? 」

「バカな…… バカを申せ! ちょっと所用があってな」

動揺する。キザな王子の姿はどこに?

何だか昼間とはずいぶん違う印象。

夜になると余計に子供っぽいと言うか甘える感じ。

時や場所によって態度を変化させている。

これが本当の姿とも思えない。

ほんの少しだけ王子に興味が湧いてきたかな。


「ああトイレですか? ではお供いたしましょうか? 」

困ってるなら言ってくれればいいのに。

トイレぐらい。その代わり爵位を頼みますよ。

「トイレではないわ! 用があると言ったろ! 」

あーあもう子供なんだから。ムキになっちゃって。ふふふ…… 可愛い。


「しかしその…… お召しものがお濡れに…… 」

「いやこれは…… 」

慌てて前を隠す。冗談なのにもう王子ったら。

しかし王子がこんな夜更けに護衛もつけずに一人で歩き回るなんて。

いくら宮殿とは言え不用心すぎる。

はっきり言って間抜けとしか思えない。今こそ復讐を果たす絶好の機会。

でもきっと王子はお父様のことを覚えてらっしゃらない。

そんな状況で復讐も何もない。

それにここで手を出せばただでは済まないでしょう。

こんな王子のためにそこまですることはないと正直そう思ってます。


「まさか王子も眠れないんですか? 」

妙に子供っぽいところがあるから。もしかして……

「何を抜かす! 」

精一杯抵抗して見せるがまだ幼い。

「ご一緒しましょうか? 」

どうせ王子のことだから今でも添い寝をしてもらってるんでしょう。

これだけ我がままなのは普段から甘やかされてる証拠。

「バカを抜かせ! まったくふざけた奴だ! 」

そう言って怒り出してしまう始末。本当に子供なんだから。

堪えきれずに笑ってしまう。

「まさか図星なの? ふふふ…… あーあ本当に情けない。

これが一国の王子だなんて」

王子への復讐は封印してからかうことに。これで少しは気持ちが晴れるでしょう。


「その方。ずけずけとよく言えたものだな。まさかこの私が怖くないのか? 」

まるで恐れ多いと言わんばかり。

「国王様は威厳もあり確かに恐れ多いです。

それに対して王子は年下の上に情けないと来ている。

これでは誰も支持しない。取りあえず自分の言葉には責任を持ちましょうね」

「もうよい! 不愉快だ! 下がるがいい」

勝手に初めて今勝手に終わらせようと。本当に自分勝手なんだから。

「はいはい。では王子様おやすみなさいませ」

最低限の礼は欠かさない。

「ふん。勝手にせい。不愉快だまったく! 」

へそを曲げた王子。


二人きりで話すのは今回が初めて。

第一印象は最悪なものになってしまった。

ちょっとやり過ぎたかな。

大丈夫だとは思うけどまさか根に持ったりして?


               続く

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