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宮殿

半ば強引に馬車に乗せられ宮殿へ。

何だかおかしな展開になってきた。

ただ王子のエスコート役だって聞いたから適当に参加したけど。

こんな面倒なことになるなら最初から参加するんじゃなかった。

今更後悔しても遅いがそれでもそう思わずにはいられない。

何だかどんどん深みに嵌っていく気が。

お婆様の命令とは言え興味のないことに付き合わされその上ですから。


「大丈夫? 私が付いてるからね」

王子への復讐心よりもコーコとの友情を優先した。

もしかしてこれってラッキーなこと?

王子の花嫁候補者としてではなくそのお付きとして参加できる。

王子に接近するチャンス。お婆様が言うように気に入られれば視界も開けるはず。

当のコーコはしゃべりかけても気のない返事をするばかり。

これは相当緊張してるな?


馬車に揺られて一日。ようやく宮殿が見えてきた。

巨大な白亜の宮殿に目を奪われる。

ああ凄い。こんなところで暮らせたらな。

何を考えてるのでしょう? おかしな妄想で勝手に盛り上がっている。

コーコには知られたくない。恥ずかしくて堪らない。

もしかして意外にも私楽しんでる? まずいまずい。何を考えてるのでしょう?

少なくてもここからは気を引き締めないと。

どんどんおかしな方向に流されていく。


宮殿か…… 魅力的な未知な世界に強い憧れを抱く。

それはコーコもどうやら同じようなので助かった。


あまりにも長い時間。とてつもなく長く感じた。

こんなに馬車に揺られたのは初めてではないでしょうか?

我が国は無駄に縦に長いのでこう言う事態に。

こんなことでもない限り上ることはないですからね。


宮殿には思い入れがある。

お父様が仕えてましたからね。いつかは私もと考えていました。

まさかそれが今日偶然にも叶うなんてまるで夢のよう。

これもあの生意気王子のおかげかと思うと多少感謝の気持ちが湧く。

決して本位とは言えませんがね。


緊張しっぱなしのコーコと何とか意思の疎通ができた。

どうやら王子と婚姻を結ぶつもりはあるらしい。

まったくどういう神経してるんでしょうね?

コーコだって王子の評判ぐらい噂で耳にしてるはずなのに。

それなのに憧れるんですから始末が悪い。

別に王子に憧れるのは構いません。

問題は憧れが叶ってしまうこと。

嬉しさのあまり舞い上がるのでしょうがそれ以上が見通せてない。


具体的に何も考えられてない気が。

ちなみに私ならその辺は抜かりありません。

王子を虜にし油断したとこを周りに気付かれないよう連れ出し秘密裏に処分する。

ここまで思い描けてる者はそうはいないはず。

憧れがすべてをダメにする。

私だって憧れてますよ。でもそれは宮廷生活であって王子ではない。

そこが他の参加者と決定的に違うところ。


親友として意見してあげたい。

絶対にうまく行かないのに突っ走ってどうするの?

「ねえコーコ。考え直したら? あんな王子のどこがいいの? 」

しかし彼女は決して譲らない。

「ごめんねクレーラ。でも一人だとどうしても不安だから…… 」

そう言うことではないんだけどな。自信がなく不安だそう。

「ホラ心配しないで。きっとうまく行くから」

これ以上は無駄みたい。仕方なく王子の待つ宮殿へ。


さあ失礼のない様にしなければなりませんね。

到着するとすぐに着替えるよう指示があった。

コーコは赤のドレスを。お付きの私には黄色のドレスが貸し出される。

国王様ともあろうお方がまさか返すように迫るとは考えられない。

だから当然この服は自分のものにして構わないはず。

お父様のミスにより爵位をはく奪され満足に食事もとれない。

それどころかお気に入りの服も手放す悲惨な状況。

この黄色のドレスは天からの贈り物。有り難く頂くのがいいでしょう。


「どうかな…… 」

心配で仕方ないらしい。余裕がないコーコはマイナス思考。

深紅のドレスはそれは黒髪にはよく似合っている。

だから正直に褒めるもコーコは不安なまま。


ではそろそろお会いするとしましょうか。

国王による謁見。

謁見の間に通される。

そこにはコーコを含めて五名の少女の姿が。

私と同様に付き添いの者がそれぞれ一名ずつ。

一人で宮殿に行くのは心細いのだろう。

私たちと同じようなやり取りが行われたと推測できる。


あれ…… おかしいな。

緊張してきた?


                続く

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