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興味なし

王子は遅れてやってくる。

さすがは大物とも言えるがいろいろ苦労もあるはず。

だからそれくらいは大目に見てあげなくてはいけません。


王子挨拶。

ありがたいお言葉を頂く。

「済まないなお前たち。今日のお披露目の手伝いを頼むぞ」

そう言って形だけでも頭を下げる。

「王子! そのようなことをされては私どもが国王様からお叱りを受けます」

驚いたお付きの者が制止するがもう遅い。


意外にも低姿勢な王子。見直したかな……

ただのボンクラろくでなし最低男ではないらしい。

自由気ままにも見えるが意外と窮屈そう。

もしかして想像よりも立派な方なの?

ううん。そんなはずない。考え過ぎ。考え過ぎ。


ほらやっぱり振る舞いは隠せていない。

キザったらしく髪をかき上げ空を仰ぐ。そしてウインクまで。

ダメだ。鼻につく。王子でなかったらぶっ飛ばしてるところだ。


きゃああ!

悲鳴が響き渡る。

待って…… 私じゃない。あれ?

危ない危ない。てっきり王子をぶっ飛ばしたかと本気で心配した。

大丈夫よね。手も痛くないし。取り押さえられてもいない。

どうにか我慢したらしい。少しは成長したのかな?

うーん。だとすればこの悲鳴は何でしょう?

王子への声援? まあそう言うことになるのか。

まったく馬鹿じゃないのと言いたくなるほどの熱狂ぶり。

気持ちは分かりますよ。でも節度があるでしょう?

王子だってどうせ困ってるんだから。


耳がどうにかなるほど大騒ぎをするエスコート役。

ちっとも冷静ではいられない。これで果たしてやっていけるのか?

あまりにも熱狂し過ぎてませんか? 

次第にエスカレートし止められなくなりつつある。

大変危険な状況。


でもこれもあのキザな王子には喜びなんでしょうね。

ああいけない……

王子に対して申し訳ない気持ちもある。どうしたって醒めた目で見てしまう。

ここにいる多くの者とは正反対の感情を抱いてしまう。

彼女たちのそれが喜びなら私には悲しみ。


そろそろ始まったかな?

王子の側で一緒に手を振るエスコート役。

聴衆も大声で応える。雄たけびを上げる者も。

行儀の良い聴衆。さすがに我を失って襲い掛かって来る者はない。

それは王子を思ってと言うよりも飼いならされている感じ。


もう本当にうるさいんだから。たかが王子に何を騒いでる訳?

確かにこの国の王子は彼一人だけど異国に行けば王子など珍しくない。

歩いていれば当たるぐらい。もちろんこれは多少大げさに表現してる訳だけど。


無数の小国がひしめきあっている関係であちらにもこちらにも。 

身分や出会いは別としてばったり出くわすだけなら特別なことではない。


不満を漏らしながら最後尾で付いていく。

一応はこれで役割を果たしたことになるでしょう。

お婆様には王子に振り向いてもらえなくて悲しいと泣きつけばいい。

そしたらきっとお婆様だってお許しになる。可哀想にとなるに決まってます。


こんな王子のどこがいいんでしょう? 別に王子そのものが嫌いな訳ではない。

私だって異国の王子には密かな憧れがある。

でもこの王子はまだ子供っぽいし。我がままそう。

事実その我がままでお父様を追いやった実績がある。

私としては大人の余裕がある方に惹かれます。

元々可愛らしいタイプは好きじゃない。


ああ早く終わらないかな。暑苦しくて敵わない。

早く終わって欲しいな。

そうすれば明日から再び爵位探しの旅に出れるんだから。


でも今は我慢我慢。もう王子だとは思ってない。感情を消しただ歩くだけ。

そんな今の私を仮に王子が見たとして気に入るはずがない。

いくらかわいくて魅力的でも笑顔を振り撒かなければいい印象は与えられない。

お洒落に着飾った者はいくらでもいるのですから。

目に留まることはないでしょう。

残念です王子。今回はご縁がなかったと諦めが付く。


こうして王子訪問は何事もなく無事に終えた。

私が何をしようと関係ない。ただ復讐を果たそうとすれば別ですがね。

復讐はまた別の機会に回すとしましょう。ゆっくり確実に。

確実な方法を選ぶのが賢い者の流儀。


               続く

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