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第8話 覚醒

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第8話 覚醒



「うう……ッ!!」



小守は肩を落としたまま、ガタガタと震え始めた。



「なに…?」


「解らないわ!優!一旦引くのよ!」



流華の声に従い、優は小守と距離を置き、流華の元へと下がった。



「あいつどうしたんだろ…私の炎連牙が予想以上に効いたのかしら?」


「わからない…でも、明らかに様子がおかしいわ。

 うかつに近づかないほうが得策よ!」



ボッ!

優の両手に狐火が灯った。



「なんだか知らないけど、隙だらけよ!

 近づけないなら遠くから狙い撃ちさせてもらうわ!」


ガシッ!


優は両の手を合わせて突き出した。



「双炎玉…一人バージョン…いっけぇッ!!」



バシュッ!!



両手に灯る最大級の狐火を錬り合わせ、巨大な炎玉を作り出し勢い良く放つ!

優の持てる最大の必殺技!



ドッガーーン!!


炎玉は直撃!

小守は避ける素振りさえ見せなかった!



「はぁぁぁぁッ!!もいっぱついっけぇええ!!」



なんと優は先ほど同様の大炎玉を再び放った!


ドッガーーーン!!

再び直撃!


土煙で様子は伺えないが、強大な一撃を2発も受けた小守はタダではすまない。



「はぁ…はぁ……ふぅ」


「すごいわ…アレだけの攻撃を連発するなんて…」



「ううん。流華のおかげよ。

 あなたのこの陣の効果で一瞬にして霊気が落ち着くの。

 普段なら両手で1発ずつ撃ったら、霊気の乱れが落ち着くまでしばらくは使えないもの」


「霊気の絶対量もあなたは人一倍多いようね…羨ましい限りだわ。

 それにしても…敵に動きはないわね…」



あれだけの攻撃を受けて無事ではないと思うけど…。

…あれ……?


私…痛みを感じていない…?

どういう事…?



「流華…やっばいかも…」


「…」



ザワザワ…


辺りの空気が張り詰める。



「う…ううう…!」



砂煙が一気に吹き飛んだ!

小守の気合によるものだ。



「無傷…通りで痛みを感じないわけね…」


「…優…一瞬も気を緩めてはだめよ…!奴から眼を離しちゃだめ」



解っているわよ…。

あれは間違いなく"狂気化"…只でさえ巨大な霊気がさらに膨れ上がった…!



スッ!



『!!』



流華と優は一瞬にして小守を見失った。


ドガッ!!



突如腹部に強烈な痛みが襲う!


優と流華…ともに何かを食らったようだ。


勢い良く後ろに飛ばされる!



ドッガッ!!


二人は受身も取れずに地面に衝突。



「く……」


「一体…何が……」



流華の作り出した陣が消えてしまった。

陣を作り出すには術者は常に集中をして陣の中心に居続けなければならないのだ。


つまりこれで術の効果は得られなくなった。



ザッ


耳に入った足音にすぐさま立ち上がる優と流華。


辺りを見回しても小守の姿がない。



「何処に…」


「!…優!!上!!」



優の頭上に両手で作ったハンマーを今にも振り下ろさんと落下してくる小守!


バシッーーーーン!!!!



強烈な一撃が振り下ろされた。



「きゃあぁあ!」


優の悲鳴が響く…が、それは小守の一撃によるものではない。

流華に蹴飛ばされ、吹き飛んだ際のものだった。



「いちち……何するのよッ…って…流華!?」



「ぐぐ…!」


なんとあの強力な一撃を流華が両手を頭上でクロスさせガードしているではないか。

流華の足元は地面にめり込んでいる。


相当の衝撃が加わったに違いない。



「流華ぁッ!!」



優はすぐに流華の元に駆け寄った。



「どけぇええッ!!」



優は右手に狐火を宿して攻撃態勢に入った。


そして全力の右ストレートを放った。



スカッ!


「!!?」



避けられた!?



「優!後ろッ!!」


優は流華の声に合わせて目視する前に回し蹴りを放った。



ガシッ!


小守はそれを余裕で受け止める。



ザワッ…!



その瞬間優に死を告げる刻印が現れた。



「嘘ッ…!?」



ギシギシッ!

小守は優の右足首を掴んで力を込め始めた。



「あああああッ!!!」



なんていう力なの…!?

まるで引きちぎられるかのような痛みッ!!




「はぁッ!!」



ドッッゴ!!



「!」



流華の渾身のストレートが小守を吹き飛ばした。

だが同時に自身も苦悶の表情を浮かべる。


小守のアンチペインの能力はまだ流華にも生きていた。

攻撃すれば痛みは流華に返る…。


しかし、今の一撃は霊撃…ダメージ+痛みは小守も同じ!



「ハァアアアッ!!」



流華はさらに霊気を高めていく。



「流華…これは一体…」



流華が身に纏っている霊気が力強く輝きだす。

淡い赤…それは徐々に美しい黒髪も染めていく。



「陣と同じ要領よ…対象を私個人に向けただけ…。

 この状態の維持は恐らく長くて2分…その間に倒す…!

 優…もしそれで私が奴を倒せなかったら…あなたはすぐに逃げるのよ…!」


「え…何を言ってるの…?」



「いい?私は2分後には霊力も空になって霊気も乱れっぱなしになる…。

 つまり普通の人間になるってことよ…いえ、それ以上に体もいう事を利かなくなる…。

 だから…もうその時は何も出来なくなる」


「だから…見捨てろって言うの…?」



「そうよ!…二人一緒に死ぬ事はないでしょう…!

 私が何としても逃がす時間は稼いで見せるから…。

 私の髪が黒く戻ったら…その時は躊躇わず逃げてね」



笑顔で優に告げた。



「ふざけないで!!そんな…そんな事出来るわけないじゃない!!」


「出来なくてもやりなさい!そしてすぐに茜さん達を呼んで…こいつを倒すの!

 こんな化け物を野放しにしたら…どうなるかぐらいわかるでしょ!!

 非情になりなさい!優!」



だからって…あなたを置いて…いけるわけ…


ないじゃない…。



「いいわね…!ハッ!!」



流華は飛び出していった。

物凄い速さだ。


流華に死を告げる刻印は出ていない…。

つまり死ぬことは無いと言うことだ。


少なくとも、あの状態であれば。



「はぁッ!!」


バシッ!ドガッ!!!



凄まじい攻防が繰り返されている。

両者とも尋常ではない戦闘能力なのであろう。


踏み込めば地面が抉れ、攻撃を当てれば、物凄い衝撃風と衝撃音が響く。


流華は相当な痛みを生じているはずだが、すでにそれを気合が凌駕してしまったのか、

痛みで攻撃の手が休まることはなかった。



死を覚悟した時の力…。



「はぁ…はぁ………うわああああッ!!!」



渾身の上段蹴りが小守を地面に叩き付けた。

さらに追い討ちをかけるかのように流華は全力で踏みつけた。


ドッガーーーン!!



土煙が勢い良く吹き上がる。



「はぁ……はぁ……」



流華の姿が土煙から出てきた。



「流華…?終わった?」


「かな…?はは…」



流華の髪色が黒く戻っていく。


ズズッ



「え…?」



突如流華に浮かぶ死を告げる刻印。


その時だった。



ズブッ!!



「!…カハッ………」



流華の腹部を貫き、小守の手が見えた。

流華は吐血した。



「ゆ……う…………逃げ……」



そう言うと流華は気を失った。



「…流華…?………嘘…

 う……うわぁあああああああああああああああッ!!!!」



優の絶叫が辺りを包み込んだ。



ドサッ!

流華はそのまま地面に放り投げられた。



「…」



無表情で手についた流華の血を舐める小守。

狂気化し、すでに理性はないようだ。



「…許さない………お前だけは絶対に許さないッ!!」



優は全身に今までにない力強い霊気が漲っているのを感じた。


だが、そこで優の理性は吹き飛ぶ!



「シッ…!」



一瞬にして小守の間合いに入ったかと思うと上段蹴りを顔面に叩き付けた。


さらに、崩れる小守に対して肘鉄を浴びせ、吹き飛び様に狐火・大炎玉を放って吹き飛ばした。

先ほどの流華と同等…いやそれ以上の能力を発揮している。



「…流華……はっ!…私…一体?」



我に返った優は急いで流華の元に駆け寄った。



「流華!!…死んじゃだめ…絶対に死んじゃだめなんだから!」



優は流華に治癒術をかける。

今までにない輝きが流華を包み込む。



「生きて…!お願い…生きてッ…!!」



優の懸命な治療で徐々に傷口がふさがっていく。



「…ゴホッ…ゴホッ…!!」



流華が血を吐き出した。



「よかった…!意識を取り戻した!」


「…ゆ…う……?」



流華は薄っすらと眼を開けた。



「流華…大丈夫……もう大丈夫だから」



優は涙が零れた。



「泣かない…で……。お願い…早く……早く…逃げ…て」


「大丈夫よ…あんな奴…私がぶっ飛ばすんだから!」



ザッ!



「!…流華……ごめんね…。

 もうちょっとだけ我慢してね…」



小守が現れた。

全身は傷だらけで恐らく骨折などもあるだろう。

人としてみたら、重症に値する。


しかし、中の霊魂が無事である以上、器である肉体のダメージは無関係といったところだ。



「すぐに終わらせるから」



優は立ち上がり、再び気合を込めた。



「しつこい奴は嫌われるのよ…あんた」



キレてはいたが、優にも対峙する少年の重症は眼に見えてわかっていた。

流華をあんな眼に合わせた相手…正直慈悲の心などかける必要もない…そう思っていた。


しかし、優にはそれを上回る"人の心"があった。

これ以上、傷つければ…彼は死んでしまう。


優にとって彼を殺すという選択肢は最初からなかった。

それは今も変わらない。



「…ったく…これで終わらせるからね…」



優は両手共に拳を作ってそれを構えた。


まるで剣を構えるかのような、見せたことのない構え。

優は眼を瞑って精神集中を始めた。


辺りの木々がざわめき始めた。



第8話 完   NEXT SIGN…

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