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第49話 別れ

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第49話 別れ



「……き、貴様…」


「…な、なんで………神谷さん……」



司の目の前で予想外の事態が起きていた。

なんと神谷が自分自身の左胸を貫いているではないか。


スボッ


神谷は自身の腕を胸から抜きとると、そのまま前のめりに倒れた。



「…ば…馬鹿な真似を…」


『黙れ…貴様には好きにさせないと言っただろう…灰閻』



「まさか……貴様…!最初から…覚悟していたというのか…!?」


『…共に消えよう…

 僕もお前も、この世界には必要とされていない存在なんだ』



「くそ…ッたれ………こんな…ことで……

 俺の…夢が…」


『…これが死の感覚なのだろうか…。

 意識が遠のいてくる…』



「……さん!神谷さん…!」


『…誰かが呼んでいる……?』



「くく……俺も観念してやるよ…一騎……。

 最後の時間くらい……くれてやるぜ…」



灰閻がそう言うと、神谷の体に神谷の意識が戻った。



「…神谷さん…どうして…こんな」


「夕見さん……すまなかったね……。

 君には…怖い思いを…させてしまった…」



司は神谷の胸を必死に治療しようと両手で押さえている。

しかし血は一向に止まる気配がない。



「うぅ……血が止まらない…」


「…いいんだ……僕はもう…助からない…。

 だから…もう…」



神谷は震える手で司の手を握った。



「…うう…死なないで…!」


「…泣かないで…くれ………

 君の…腕……本当に…すまな…かったね…」



神谷の目が徐々に閉じていく。



「か、神谷さん…!?だ…だめだよ…!

 生きて…!しっかりして!」


「…みんなに…ありがとうって…伝えてくだ…さい…

 それと……菅谷っち…に……ごめん…って…おねが…い…し………」



神谷は全てを言い切る前に…事切れてしまった。


その死に顔は笑顔だった。



「か…神谷さん……。

 そんな…そんな………うぅ…うあぁあああぁああああああ!!」



司の泣き叫ぶ声は辺り一面に響き渡った。



ザッ…


「そんな……嘘……でしょ……?」



引き返してきた不破まりあは、倒れる神谷に縋り、泣き叫ぶ司を目にして崩れ落ちた。

全てを悟ったようだ。



「神谷さん…嘘だろ……そんな…」


「…須藤…」


「…神谷さん………すみません……。

 僕らがあなたを殺してしまったも同然だ…」



聖才雅は震えていた。

神谷の死を悼む悲しみと、不甲斐ない自分への怒りに…。



ザッ…


「部長…これは一体……?」



瀬那が泣き叫ぶ司を見て呟いた。


続々と到着する仲間たち。

あまりにも衝撃的な結末に、皆呆然と立ち尽くすしかなかった。



"なんだかんだで、上手くいく"


そんな甘い考えを誰もが抱いていた。


"誰かがやってくれる"

"きっとまた無事にみんなに会える"


甘すぎた。



「かみやん……お疲れ様……。

 君はこの街を…多くの人間を救った英雄だよ」



菅谷は涙を流しながら言った。



「…皆、辛いかもしれないけど…まだ戦いは終わっていないわ」



皆が沈黙する中、流華が言った。



「…お前……相変わらず冷静だな…。

 俺達には悲しむ時間もないっていうのかよッ!!」


「やめろ…須藤!」



感情的になって怒鳴りつける須藤を片桐が止めた。



「しっかりしなさい!

 まだ戦いは終わっていないのよ…感傷に浸っている時ではないでしょ…」



流華は司の目の前で叫んだ。



「…あなたには何も判らないですわ…。

 彼は…私の目の前で死んだのよッ!」


「そうやって泣いていれば、あなたの気はすむかもしれない…。

 でもそれで神谷さんは生き返るの?」



「!…」


「今こうしている間にも、優や天城君が命がけで戦っている…

 もしかしたら死に掛かってるかもしれない…!

 あなた達は彼等まで失う気でいるの?」



『!』



全員がはっとした。



「今は悲しむ時ではないわ…新たな犠牲を出さないためにも

 前へ進むべきよ!彼だってそれを願っているはずよ…。

 これは戦いなの!時には非情にならないと…また死を呼ぶことになるわよ!!」


「…あなたは強いわね…流華さん…。

 泣くのはしばらく…中止ね……」



司は涙を拭いて立ち上がった。



「夕見さん…」


「司でいいわよ…ありがとう流華」



―――

――



「アイツは自分から悪役になって皆を立ち上がらせたんだ。

 気持ち判ってやれよ…?須藤」


「…気持ちはわかってるさ…!

 だけど、とてもじゃないけど…俺はそんなに簡単に割り切れない…。

 俺が神谷さんをやる気にさせちまったせいで…クソッ!」



「須藤…」


「…わぁってる!今は優たちが心配だ…!

 行くぞ皆!

(神谷さん……あなたには後で気がすむまで詫びさせてください…

 それでどうにかなるわけじゃないけど……俺にはそれくらいしかできません…)」



「でも行くって…何処に行けば彼等に会えるんだよ」



一が言った。



「それは私めが教えるよん!」


「ポチッ!戻ってきたのね!」



先ほど灰閻に吹き飛ばされていたポチが駆けてきた。



「司ちゃん…その腕…」


「いいの。それより、二人の場所を知ってるの?」



「二人かはわかんないけど…飛ばされた時…一瞬物凄い霊気を感じたんだ。

 多分彼等じゃないかな?向こうだよ!」



ポチは短い手を北に指していった。



「そっちね…わかったわ!」


「北…ですね。今はその子を信じて行くしかないでしょう!

 急ぎましょう!」



司達は北に向けて駆け出した。




―――

――



「はぁ…はぁ……」


「なんという強さじゃ……」



「くくく…!中々楽しめたぞ…お前たち」



莉都と戒のコンビは京と激闘の最中にいた。

しかし、京の実力は協力した二人を上回っていた。


さすがに無傷等ではないが、消耗具合で言えば圧倒的に二人のほうが消耗している。



「こうなれば…どちらかが犠牲になって奴を討つしかないだろうな…」


「うむ…莉都…そなたが奴の動きを止め…

 我が奴の心臓を抉り取る…それでいいな?」



「ばか者!逆じゃろ!

 私が奴の心臓を止める役じゃ!」


「冗談を…あなたには無理だよ」


『二人ともモメてないで!…はっ』



なんと二人がもめているのを見逃さなかった京はあっという間に、

二人の目前まで移動してきていた!



「まずは一人だッ!!」



ドガッ!!

ベキッ!!



嫌な音を立て、戒が吹き飛ばされた!

そして岩肌に激突すると、そのまま奥のほうにめり込んでしまったようだ。

出てくる気配がない。



「くっ!貴様ッ!!」



ドガッ!

莉都の蹴りを食らい、吹き飛ぶ京!



「くく…!いいぞ!まだまだ動けるじゃないか!」


「はぁ…はぁ……!」


『莉都の動きが明らかに鈍ってる…。

 このままじゃ…まずい…!』



「優…お主の言う通りじゃ…。

 もうチマチマやっている場合じゃない…」


『え?』



「お主に賭けるぞ…優」



フッ



「え……あれ?…嘘…私じゃん…これ…」



なんと莉都は突如転身の術を解除した。



「莉都!ちょっと!どういう事よ!?」



返事がない。



「?…何をしているんだ?

 一人で騒いで…。

(それにしても、極端に霊気が落ちたな…アイツ。

 消耗ではない…何もしていないのに極端に霊気が落ちた)」




「く…あの馬鹿女…逃げやがった!」


「くく…!どうやらこの戦いもそろそろ幕を降ろす時間が来たというわけだ」



ゆっくり歩み寄ってくる京。



「煩いわね…ッ!まだ諦めないんだから!」



優は霊気を高め始めた。



…?

あれ…?

なんかスムーズだ…。

いつもよりも早く霊気が最高まで高まった…?



「行くわよ!!」



ドンッ!


優は京目掛けて飛び出した!



「くくく!来いッ!」



バババッ!

京に対して禁断の接近戦を挑む優。


予想通り、ことごとく攻撃をかわされる!



「くそ…!」


「はぁッ!!」



ドゴッ!!


京の強烈な拳打を腹部に浴びる優!



!!


何これ…!

気持ち悪い…!!


意識が吹っ飛びそう…。


足元がガクガクと震えだす優。

その衝撃の凄まじさを物語っていた。



「くく!おいおい!こんな手加減した拳で延びるんじゃねぇぞ?

 はぁッ!!」



さらに同じ箇所に前蹴りを見舞う京!

優は吐血しながら吹き飛んでいった。



「う…う…ぇ…」



何これ……死ぬ…。

死んじゃう………。



殺されちゃう……!



死…死死死死死……!!



「いやだ…死ぬのは……嫌だ…」



優は地を這いながら京から逃げようとしている。



「くく!圧倒的な力の差がようやくわかったか。

 そうだ。今お前の脳裏にこびりついている感覚こそが"死"に対する恐怖だ。

 今まさに避けることの出来ない死が迫っているんだよ。

 白凪優」


「ひ…ひぃ……!!」



「いいぞ…!その顔だ…その恐怖に引きつる顔が最高なんだよ!

 てめぇらクズの人間共にはお似合いだッ!!

 あーっはっはっはっはっは!!」


「嫌だ……死にたくない……」




『生きたいか?』


「死にたくない…死にたくない…」



『何故生きたい?』


「嫌だ…死ぬのは怖い…」



『お前は何のために生に縋る?』


「死にたくない……」



優の頭に響く声は、彼女に届くことはなかった。



「くく!恐怖で理性が完全に吹き飛んだか…。

 このまま惨めな貴様を見続けるのも飽きた…。

 せめて同族としての情けをかけてやるよ…。

 一撃で苦しまずに殺してやる」



這い回る優の首を掴むと、一旦持ち上げ、更に地面に叩き伏せた。

そして優の腹部にまたがると優の腕を、自らの突きたてた人差し指で突き刺した。



「ぁああ…」



だらんっと力が抜ける右腕。

そして続いて左腕も同様に突き刺した。



「さぁ…これでいい。これで防御も出来まい…。

 このまま肉体を壊してもいいが…貴様らしい最後にしてやろう。

 お前の霊力の底を突き破り、永遠の闇へ葬り去ってやる」


「あ…あぁ……」



「さらばだ…!

 はぁッ!!!」



ドンッ!!


優の心臓に放たれた強力な霊撃!

凄まじい光を放ちながら優の胸を貫いた。


優の体は痙攣している!



「くく…!終わった…

 これで邪魔者は全て死んだというわけだ…!

 心残りは全力が出せなかった事くらいかな。

 紅霙の力を使うまでもなかったな」




第49話 完   NEXT SIGN…

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