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第47話 狩る者、狩られる者

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第47話 狩る者、狩られる者



「…不意打ちとはなかなか…」



灰閻の拳打は呪の顔面に当る寸でで、ガードされたようだ。



「くく…!いいねぇ…!

 その調子で楽しませてくれよ?」



バチバチッ!

互いの高まる霊気に反応してか、足元の小さなコンクリートの破片等が

弾け跳んでいる。



「んじゃ、続けていくぜ…!」



ドガンッ!!


灰閻の踏み込みの衝撃で足元が割れる!

凄まじい力だ。



「!」



ドガガガッ!

一瞬にして呪との距離を詰めると、すかさず殴りかかる!

ただ思い切り殴りつけるといった感じだ。


計算も何もない、ただ早く打つ。

何処に当ってもいいから、とにかく打つ。


ひたすらに。



「…く!」


「いいねえ!実にいいぞ!」



灰閻の乱打を呪はかわせないでいた。

全て拳で弾く手段を用い、直撃を避けている。


しかし、この拳で弾くという行為が、すでにダメージとなって呪を襲っていた。


一発一発が途轍もなく重く…痛みを覚える。

とてもあの細腕から繰り出されているとは思えない。



「!!」



キッ!

呪は眼に力を入れて灰閻を睨んだ。



「ぬぉッ!?」



その瞬間…

一方的に攻めていた灰閻が突如吹き飛ばされた。

顔面に何かを食らったように、頭部から後ろに反れて吹き飛んでいった。



キキィッ!


すぐに態勢を戻し、足と片手を地につけブレーキをかける灰閻。



「…おかしな術を使いやがる…」



灰閻の鼻からは出血が見られた。

親指でそれをぬぐうと、すぐに構えた。



「…思った以上に肉体が強いようだね…」



呪は自身のボロボロになった両手を見て言った。

すでに両手は傷だらけになっていた。



「この体だから、この程度の力しか出せないんだ。

 霊気で十分に体を守ってやる分、力が出し切れないんだ。

 俺自身が生きてた時は、この数倍の威力が出るぜ?」


「くく…いやはや…すごいね。

 準備運動どころか、これは本気を出さないと危ないレベルだ」



シュウッ…

呪の両手が徐々に回復していく。



「治癒出来るんだな…素晴しい。

 これで何度でも遊べるってわけだ」



ニヤリと笑みを浮かべる灰閻。



「僕も少し本気を出しますか…」



フッ!


呪が音も立てず、その場から消えた。



「あぁあ?そこだろッ!!」



ドガッ!!



灰閻は誰もいない右側を思い切り蹴り上げた!

すると、何も無い空中で衝撃音が響いた!



「く…!」


「くく…ほらな…!見えてるぜ?」



蹴りは呪の両腕のガードに阻まれはしたが、呪の体を吹き飛ばすには十分だった。

後ろに吹き飛ばされた呪は、気を高め始めた。



「はぁああぁああッ!」


「へぇ…まだ霊気が上がるか。

 そこらの妖魔と引けをとらない凄まじい霊気だな…オイ」



辺りが震えだす。

大地…そして大気もが呪の邪悪な霊気に反応している。



「くくく…!行くよ…!」



バッ!


先ほど同様音も無く消えた!



「!…

(見えなかった…何処だ…)」


「後ろですよ」



呪の声にすぐに反応し、背後に回し蹴りを放つ灰閻。



「!?…いない…?」


「嘘です」



ドゴッ!!



「グフッ…!!」



灰閻の頭上に途轍もなく重い一撃が振り下ろされた。

両手を組んだ状態からの一撃!



灰閻は否応なしに前のめりになった。

そして次の瞬間眼に飛び込んできたのは呪の膝だった。



ドゴッ!!


容赦のない顔面への膝蹴り。

しかし、衝撃の規模は凄まじかった。


そのまま上空へと打ち上げられる程だ。



「…くくく!…いい……ねぇ…」


「これで終わりじゃないから」



呪は上空へ手をかざすと、一気に霊気を放出した。

波動砲のような巨大な霊気砲が一瞬にして灰閻を飲み込んだ。



「くく…あっけなかったな…。

 これが僕の力か……これだけの力があれば…

 この世界を混沌へ導くことも可能…くくく…」


「何笑ってやがる…」



「!?」



呪が振り返ると、そこには衣服がボロボロになった灰閻の姿があった。



「…生きてたんだね」


「ったりめぇだろ……あの程度で勝った気でいたのか?

 おめでたい奴だな…てめぇ」



「くく…確かに…。

 君を少々侮っていたのかもしれないね。

 でも、そのナリを見れば判るよ…相当無理してるんでしょ?」



『まさか…灰閻が本気でやって…ここまで苦戦するとは…』


「おい…クソったれ…誰が本気でやったって言った?

 俺はまだ全然本気じゃねぇんだよ…」


「?…独り言かい?」



「くっくっく…!!どいつもこいつも…

 この灰閻様を舐め腐りやがって………いい感じに頭にきたぜ…。

 てめぇ"ら"に地獄を見せてやるよ…」


「何を訳のわからない事を……!?

(いない…?)」



「シッ!!」


「!」



ドゴッ!!!


強烈な跳び膝蹴りが呪の後頭部へ直撃した!

僅かに反応はしたものの、完全に出遅れた。


直撃は避けられなかった。


吹き飛んでいく呪!



「俺は霊気なんてまどろっこしい真似は嫌いでね…!

 徹底的に肉体をぶっ壊す!!」



なんと灰閻は体に到底見合わない瓦礫を両手に担いでいる。

直径10mはあるだろうか、とにかく大きい!!



そして灰閻は吹き飛ぶ呪目掛けて投げ飛ばした!



「うおぉおおおおっりゃあああああ!!」



ドッガーーーーンッ!!



「くっく!!潰れろ!!」



瓦礫は直撃したかに見えたが、余りの大きさで物陰になってしまい、

その瞬間を目の当たりには出来なかった。



「…下手な芝居はやめろや!

 霊気がまるで減っちゃいねぇんだ!出て来い!」



その声に反応するかのように瓦礫から飛び出す呪。

灰閻同様に衣服がボロボロになっている。



「…」


「どうした…怖い顔して…。

 俺がムカつくならテメェもガチで殴りにこいよ?」



「…キッ!!」


「!?」



ドンッ!!


いきなり灰閻の体が先ほど動揺に頭部を後ろに反りながら転がるように吹き飛んでいった。

二人の距離はかなり離れていた。


何かを飛ばしたりするモーションも無かった。

呪が睨んだ瞬間に灰閻の体が吹き飛んだのだ。



「く…!さっきから…妙な術を使いやがる…!」


「もう手加減は止めだ…」



ザッ…


ゆっくりと歩いてくる呪。



「ようやくマジになったわけか…」



ツゥ…



「ぬ…?血……?」



灰閻の額から血が流れてきた。

先ほどの見えない一撃によるものだろう。



「!?…眼が…」


「…」



歩み寄ってくる呪の目が光を放っている…。

青白い綺麗な光だ。



『灰閻!…あの眼…何か危険な感じがする…!

 見るんじゃない!』


「へ…もう遅いみたいだぜ…!

 糞ッたれめ…!体の自由がきかねぇ」



「僕にとっての試運転は終わった。

 君は十分にその役をはたしてくれたよ。

 だから君の仲間はいかしてやる…」


「ふん…知った事かよ!……俺は俺が生きていればそれでいいんだ!」



「くく…残念。

 君は殺させてもらうよ…今後僕の邪魔にならないとも限らない」


「殺せるもんならやってみろよ…!」



「動けない体で、よくもまぁ…そこまで強気な態度でいられるものだね。

 ある意味尊敬に値するよ」



バチンッ!!


呪は灰閻の頬をはたいた。



「どうした?今のはかなりゆっくりと打ったつもりだよ?」


「…」



「ほら…僕は目の前だ。

 殴りたいだろうねぇ……ほら、いいよ?思う存分殴れよ。

 あーーっはっはっはっは!ごめん!無理だよね!くくく…」



『いいぞ…もっと挑発しろ……

 灰閻を怒らせるんだ…』



「さっきの強気な態度は何処にいったんだろうね。

 急に黙りこくっちゃって…」



ブルブルッ

小刻みに灰閻の体が震えだした。



「!…くく…!震えているのかい?

 強気な君が…僕に恐怖している…!これはとても気分がいいね!」



バチンッ!


呪はさらにもう片方の頬を張った。

灰閻の口元から一筋の血が流れる。



「あはははは!身動き取れないまま、いいようにされる気分はどうだい?

 屈辱的だろうねぇ…くく!こちらとしては最高の気分だけどね…」



クイッ…

呪は灰閻の顎元を掴んで自分のほうへ向けた。



「顔を上げたまえ……くく…いい顔をしているじゃないか!

 屈辱に耐え…怒りを堪えている…。

 先ほどの震えは恐怖じゃなかったか…これは失敬」



バゴンッ!!


呪のカカト落しが灰閻の頭上に落ちた!



「…」


「気に喰わないね…何故恐怖しない?

 君は死ぬんだぞ?わかっているのか?」



「…くく」


「何がおかしい…!」



ドガッ!バキッ!!


呪は動けない灰閻を殴り続けた。

顔面から体から、目に付く部分を痛めつけた。



「はぁッ!はぁッ…!!いい加減判れよ…!

 死ぬんだよ!!貴様はッ…」


「ペッ!」



地面へ血反吐を吐く灰閻。



「…何をそんなにビビってんだ…てめぇ…」


「!…ビビッてる…だと…?この僕が…」



「くく…可笑しいな…圧倒的優位な立場であるテメェが…

 何故か震えている…顔色もひょっとして悪いんじゃないのか…?

 みてねぇけど…なんとなく判る…」


「ふ、ふざけるなぁああああッ!!!!」



ドガッ!!!


今までで一番強烈な蹴りが灰閻の顔面に放たれた。



「はぁ…はぁ…ッ…」


「…さて…。

 俺も今の一撃でやっと…限界超えたわけだ…」



「あぁ!?」



ゆっくりと後ろに吹き飛ばされた顔面を前に戻していく灰閻



「…ひぃっ!!!」


「ぶち殺すッ!!!!!!!!!!」



眼があった呪は、一瞬恐怖に慄いた。

灰閻の表情がまるで鬼のように怒りに満ち満ちていたのだ。



ブチブチッ!!!



「くくく!!金縛り解けちまったぞ…!!」



力でもって、自由を封じていた術を解いた灰閻。

もはや殺意の感情が大半を占めているようだ。


まるで獲物を前にした獣のようだ。



「く…くそったれ!!」



呪は向かってくることをせず、灰閻に背を向け逃げ出した!



「俺に背を向けるか…くくく!!!

 逃がすものかよッ!!」



第47話 完   NEXT SIGN…

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