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第45話 闇の化身

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第45話 闇の化身



「…中々面白い事になってるな」


「虫けら共が頑張ってるみたいね。

 街の全壊には程遠いわ…私が一つひねって来ようかな」



ビルの屋上に佇む、若い男と女は遥か遠くの怨霊の渦を見て言った。



「やめておけ…俺達が表舞台に出るのはまだ早い。

 まぁ…決着如何では出ることになるかもしれないがな」


「あの子が負ける事はないと思うけど?」



「どうかな…。

 それよりも問題はこの硬直状態だ…。

 面白みにかけると思わないか?

 下でけなげに頑張る虫けら共に俺からささやかなプレゼントをしてやろうか」



男は何やら種のようなものをズボンから取り出した。



「それ…邪心の種?」


「まぁそれに少し手を加えた特別なものだ。

 あの怨霊共はこの邪悪な気を喰らいたくてたまらずに集まってくる。

 そして全てがこれに食いついた所で術が発動する。

 すると面白い事が起きる」



「面白いこと?」


「くく…まぁ見ていろ。

 闇の化身の誕生だ…!せいぜい頑張ってあがけよ…人間共!」



そういって男は種を握り締めると、気を高め始めた。



「さぁ…飛んでいけぇえッ!!」



男は指で種を弾いた!

すると物凄い速さで種は飛んでいく。

邪悪な気を纏いながら。




―――

――



別のビルの屋上―――

――



ビュンッ!!



「!…なんだ…?あの禍々しい霊気は…」



上空を見上げていた神谷は不信な気を感じ取った。

見ると怨霊の渦に何かが飛んで向かっているではないか。



「…?渦に突っ込んだ……?」



するとどうだろう。

渦に変化が見え始める。



「ん…?渦が……縮小していく?」



上空に円を描くように広がっていた怨霊の渦は広がりをやめ、

逆に中央に吸い寄せられるように縮小を始めたのだ。



「どういうことだ…?

 誰かが何かしたのか?…いや…邪悪な霊気は未だに消えていない。

 一箇所に集まっただけで消えたわけじゃない…!」



一箇所に集まり、上空一面に広がっていた怨霊は一つの球体に姿を変えた。



「…なんだ…?

 一体何が起きようとしてるんだ?」



すると、黒い玉は徐々に下降をはじめた。



「おいおい…降り始めたよ!?

 なんかやばそうだね…急いだ方がいいかもしれない!」



神谷はすぐにビルを降りていった。



―――

――



上空の異常に気づいたのは神谷だけではなかった。

ほかのチームたちも異常に気づき、中央へ向かい走っていた。



そして一番最初に中央に到着したのは…



「…これは一体…」



単独で動いていた聖才雅だった。



黒い玉はすでに地上スレスレ、1mほど浮いてるに過ぎなかった。

玉の直径は1m~2mくらいだろうか?


あれだけの規模がこれほどまでに小さく凝縮されたわけだ。

感じる霊気は凄まじいものがあった。



「!…なんだ?」



玉がうねうねと動き出したのだ。

もはや球体とはいえないような…色々な部分が突起している。



才雅は戸惑っていた。

このような経験がないからだ。


どうすればいいのか…頭の中で答えを探している。



「このまま放っておけば大変なことになるかもしれない…!

 やるしかない…!」



才雅は覚悟を決めた。

そして霊気を高め始めた。



「色々な可能性が考えられる…。

 ここはあえて全力を出さずに……はぁああッ!!」



才雅は何があっても対処できるだけの距離をとり、

霊気の波動を飛ばした!




バチンッ!!



「!」



才雅の放った霊気は黒い球体に触れる前に弾けとんだ。

どうやら、球体の周りには防護壁のようなものが張られているようだ。



「…本気ではないにしろ、それなりの霊気をぶつけたつもりなんだけどな…。

 恐らく本気でやっても阻まれるだろうな…。

 どうすればいいんだ?」



その時だった。


黒い球体だったものは突然大きな動きを見せ始めた。


上下左右、色々な形に伸びたり縮んだり、凄い速さで動いている。



「…まるで生きているみたいだ…」



才雅の言葉はまさにそのままを意味していた。

まるで鼓動を打つような…。


そしてソレは徐々に落ち着きを見せ始めた…同時に形を形成しながら…。



「あ…あぁ……!」



才雅は驚きの余り2、3歩後ずさりした。


目の前にあった球体が、今では"人の形"を成しているからだ。

驚くべき点はそこだけではない。


その姿形は…まさに聖才雅に瓜二つだったのだ。



背格好から外見まで…。

ただ違う点は、髪の色、目の色…そして服の色だ。

才雅の明るい茶髪ではなく黒髪…。

そして全身白の制服だった才雅と違い、相手は全身黒い…。



「な、何故僕が…」


「…」



地に降り立った黒い才雅は掌を握っては開け、握っては開けをニ、三度繰り返している。



「いい体だ…」



「!…喋った…!

 声まで僕にそっくりだ…」


「…少し待ってくれないか?

 頭の中がまだ統一されていない」



黒い才雅はそう言うと立ったまま目を閉じた。



「…!?

(何だ…何なんだコイツは…?

 わからない…。だが、一つ言えるのは…今奴は隙だらけだということだ…!

 奴が何故僕の姿かたちをしているのかわからない…でも奴は人じゃない!

 だから容赦の無い攻撃をしても問題はないッ!)」



才雅は一気に体を霊気で強化すると、黒い才雅に突撃した。


まずは跳び蹴り!

黒い才雅の首元目掛け、出来るだけ近づき、撓らせた蹴りを放った!



ドゴンッ!!



「!?…当った?」



あまりに隙だらけ故、若干罠の予感をしていた才雅だったが、予想に反して蹴りは見事にノドを直撃した!

そしてそのまま地面へ叩きつけられた黒い才雅。



表情は全く変わってはいないが、口からは黒い血が伝っている。


「く…!

(まだ目を瞑っている…だと…?

 一体何を考えているんだ…こいつは…)」



才雅は仰向けに倒れた黒い才雅の顔面をさかさず踏みつけようとした。


バシッ!



「!」



踏み込みにいった才雅の右足を顔面に当る寸でで、黒い才雅は受け止めた。

物凄い反射神経だ。



「…待ってはくれないのだな…。

 容赦がない人間は好きだよ」



目を開けた黒い才雅は笑顔で言った。



才雅は急いで握られた足を振りほどくと、追撃を諦め間合いをとった。

すると黒い才雅はゆっくりと立ち上がり、口元の血をぬぐった。



「…相談は終わった。

 というか、僕が勝った…生存競争にね」


「生存競争…?」



「色々と疑問が沸いていると思うから答えよう…。

 まず僕はなにか?

 答えは簡単、怨念をもった死霊の混合体だよ。

 理由は判らないが、一つに纏められたようだ…」


「…お前たち自身がそうなることを望んだんじゃないのか?」



「それは違う…と思う。

 一応生きてる意識たちから話を聞いてみたが、そのような話は出てこなかった。

 皆が言うには力に吸い寄せられた…それくらいだ」


「お前は…なぜ僕と同じ姿をしている?」



「…そうか。

 僕は君の姿をしているのか…。

 姿を形成する時に君が傍にいたせいで影響されたんだろうね」


「生存競争に勝ったと言ったな…それはつまり」



「そう…何万…何十万という数の意識たちの統合は無理…。

 ならばどちらかが消えていくしかない。

 その生存競争に僕が勝った…そして今は僕独りの体だ」


「…お前は…これから何をするつもりだ…」



「愚問だよ…。

 僕は闇より生まれた…まさに闇の化身だ。

 心の中は恐怖・憎悪・嫉妬…様々な負の感情で溢れている。

 中でも殺戮したい気持ちがもっとも…強い」



ビリッ!ビリッ!!


大気が張り詰める!

凄まじい威圧感と殺気だ。



「…ならば戦う他ないんだな…」


「そうだね…君が止めると言うなら、戦うしかないんじゃないかな?

 だけど、少し待ってくれないか?」



「?…」


「僕には"名"がない…何かないかな…呼び名」



首をかしげて考え始めた黒い才雅。



「ふざけやがって…!」



才雅は飛び掛った!


パシッ!



「だからさ…君、少しくらい待つって事しようよ。

 短気は損だよ?」



才雅の拳を握りながら言う黒い才雅。



「クッ…!」



掴まれた状態で蹴りを放つも、軽々とかわされる。



「怨念…呪い……呪-ノロイ-か……

 僕には丁度いい名前かもしれないな…。

 まぁノロマみたいで若干気に喰わない点はあるけどね」



パッ


呪は才雅の手を離した。



「く…!」


「名前も決まった事だし、少し遊ぶか」



呪の表情が変わった。



「戦う気満々って顔だな…!

(まともにやり合って勝ち目がないのは先の動きを見れば明白…!

 隙を見て逃げるしかない…。

 とはいっても、それも難しいだろうな…。

 せめて援軍があれば……はっ!…そうだよ…!

 皆が無事で居てくれれば、異変に気づいてここにくるはずじゃないか…!

 ここは時間稼ぎを優先しよう)」


「手は十分に抜いてやるから…せいぜい楽しませてね」



―――

――


とあるビルの屋上―――

――


謎の男女はまだ見物をしていた。



「あの人間じゃ遊び相手にもならないんじゃない?」



頭に手をかざし、遠くを見ながら女が言った。



「だろうな。闇の化身の力は、そこいらの妖魔を凌ぐ。

 俺の部下に欲しいくらいの戦力だ。

 この戦いが終わったら引き入れるかな」


「ふふ…あなたも物好きね…。

 確かに強いけど、"私達"と比べたら雑魚に等しいじゃない」



「まぁな」



ニヤッと笑う男。



―――

――



「はぁ…はぁ……」


「どうした?まだ準備運動にもなってないよ?

 しっかり立って」



「…くそ……!

(強いなんてもんじゃない…!

 防戦一方でこの様だ……!これじゃ皆が来てくれても勝ち目はないぞ…!)」



第45話 完   NEXT SIGN…

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