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第36話 守護霊転身

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第36話 守護霊転身



「誰も太刀打ち出来ないって…。

 そこまでの相手なの?」


「はい。あくまで霊気を比べて…という意味ですが」



困惑する優に冷静に答える神谷。



「それでもやるぜ…俺は!

 何も出来ないにしろ…ハナからやろうともせず負けを認めるのは

 俺の性分じゃないんでな!」


「須藤の言う通りだな。俺もそんな事で諦めてたまるか!」



須藤と片桐はかなり熱くなっているようだ。



「落ち着いてください!

 いいですか?冷静に事を運びましょう…。

 皆さんの気持ちは判る…命を賭してでも守りたい。

 その気持ちは大切です…ですが、それでも死者を出すのは好ましくないです。当然ながら!

 だから皆さんは別の形で協力してもらいたいんです」


「別の形?」



優が問いかけた。



「まず白壁の件を見る限り、敵は怨霊を街全体に放つでしょう。

 そうなった場合、各地で対処してもらいたいんですよ。

 争いの火種を広げさせないためにも逐次解決していかなければなりません。

 その役目を皆さんにやってもらいたいんです」


「確かに…相手は一人じゃない場合もあるし、神谷さんが言った事も一理あるわね」



司が納得しながら言った。



「で、大ボスとは結局誰が戦うッスか?」


「ボウシ君の言う通り、大本のボスがいるわけで。

 誰が相手をするのか…そこが問題です。

 正直霊気だけで判断した場合、皆さん全員に言える事ですが、

 差が開きすぎています」



皆、表情が曇った。



「ですが、太刀打ち出来るかもしれない。

 最初に言った打開できる可能性という奴です」


「この中から二人を選ぶって言ってたわね。

 誰と誰なの?」



優が聞いた。



「ずばり…あなたですよ優さん。

 そしてツンツン頭の君!」


「私!?…と天城君!?」


「僕が…?」



チョイチョイっと驚く二人を前に呼び出す神谷。



「打開策…それは、彼等自身の力というよりも、

 彼等に憑いている霊の力を借ります」


「!…守護霊転身の術か!」



「菅谷っち正解!ここには二人だけじゃなく、

 他にも素晴しい守護霊を宿している方がいます。

 で、今回時間も限られてるし、一番やれそうな二人ということで選ばさせて頂きました」


「ちょ!ちょっと待って!二人で納得してないで、

 私達にもわかるように説明してよ!」



優がつっこんだ。



「これは失礼。

 僕の能力というか…他の霊能者にはあまり見られない能力が備わっていまして…。

 簡単に言うと守護霊を見ること、話すことが出来るんです。

 そして、守護霊を守護している人間に一時的に転身させることも出来るのです。

 これを守護霊転身のと呼んでいます。…まんまなネーミングですが…」


「そんな事が出来るんだ…」



守護霊…そんなものが憑いてるなんて今まで考えもしなかった。

私と天城君に…強力な守護霊が憑いている…。



「まぁ…出来る人は自分以外見たことはないですが、

 世界規模で見たら結構いるかもしれませんね。

 とりあえず今はその話は置いておきましょう。

 守護霊転身を行う際に問題があるんです」


「問題?」



「そう。守護霊は本来陰ながら支える存在。

 大きな振る舞いは許されないものらしいのです。

 だから契約をする必要があります」


「契約?」



「はい。守護霊と会話し…お互いに信頼関係を築き…

 了承を得て初めて力を借りれると言う訳です。

 ですので交渉次第では無理な場合もあるということは予め理解しておいてください」


「だから二人って言ってたんだ」



「これは大まかな計算で…僕の予想にすぎません。

 二人以上時間内に可能かもしれないですが、逆に一人しかできないかもしれない。

 そういう事でとっとと始めましょう!

 敵は待ってくれないでしょうからね」


「そうね…!皆…ゴメンね。

 皆の思いも一緒に戦うから」


「気にするなよ優!命は賭けるといったけど、

 何も捨てるための軽々しいもんじゃないことはわかってるつもりだ。

 出来ることをやる!皆もそれでいいだろ?」



須藤の意見に皆頷いた。



「神谷さん…さっきは逃げるとか、失礼なこと言って悪かったな。

 許してください」



須藤は神谷に対して深く頭を下げた。



「ちょ!やめておくれよ!

 僕は気にしていないよ…それに君の言う事は何一つ間違いはなかったんだからね。

 頑張ろう。一緒に」



神谷は須藤の肩に手を当てて言った。



「はい…!二人をよろしくお願いします…!」


「ああ。君たちも…絶対に死ぬんじゃないよ」



無言で頷く須藤。



「敵は南から近づいているようだ。

 頼んだよ!万が一ボスと出くわしても、どうにかしようと思わないことだよ!

 いいね!」



優と勇、そして神谷の三人を残し、皆神社をあとにした。



「さてと…時間がない。はじめようか」



三人は御堂へと向かった。




―――

――




「ここいらで、一つ打ち上げるとするかな…漆黒の花火を!」



緋土京はビルの屋上にいた。

京は刀を抜き天に翳した(かざした)。



「くく!なんと重々しい!

 地獄谷…その名に相応しく、これまでにない凶悪で禍々しい怨霊どもを集めてくれたわ!!」



天に翳した刃には怨霊の黒い影が蠢いている。



「さぁ…打ち上げるぞ…!終焉の幕開けを告げろッ!!

 唸れ!!紅霙べにみぞれ!!!」



ドゥッ!!



京が叫んだ瞬間、刃から勢いよく巨大な漆黒の波動が解き放たれた!

物凄い速さで天に向かい、漆黒の波動が走る!



そして天高く舞い上がった波動は徐々に見えなくなった。

その瞬間!爆発するように一気に四方八方へ漆黒の波動が広がった!


天は黒い靄に覆われていく!



「くく…さぁ…襲え!…皆闇を抱え生きている…。

 お前たちの餌はそこ等中にいるぞ…喰え…そして暴れろ!!

 この世界を闇と狂気に満ちた混沌なる世界に染め上げろッ!!

 くっくっく…あーーーはっはっはっはっは!!!!」



―――

――



「…心を沈めて下さい」



お堂で、神谷の正面に座る優。

勇は優の隣で見ている状態だ。


どうやら一人ずつしか出来ないようだ。



「…」


「…僕の名は神谷一騎……あなたの名を教えてください」



優は目を閉じた。



「…私の名は莉都(りつ)…彼の…"王"の転生である、この娘を護るために…

 陰ながら助力を授けております…」


「…莉都(王…?)、今この地は滅びの危機に瀕しております…。

 戦うにも…力が足りません…あなたのお力を貸しては頂けないでしょうか?」



「…それは無理じゃ…。

 元来守護霊として転じた者の助力を得るには相応の器が必要…。

 我の力を得るには、この娘はまだ余りにも若く、そして未熟……器ではない」


「…

(裏を返せば、それだけの力を持ち合わせているという事だ…。

 なんとしても力を借りたい…)」



「莉都…あなたが力を貸さないでも…恐らく彼女は戦地に赴くでしょう。

 さすれば…今の彼女では待つのは死のみ…それでもあなたは構わないとおっしゃるのですか?」


「…殺させはせぬ…。今までも幾度となく死に対面する事態はあった。

 流石にその時は力を貸さざるを得なかった…この者はまだ死ぬべき時ではないからな…」



「今も似たような事態なのです…莉都…」


「我が本来の力をこの者に貸せば死ぬ可能性がある以上、その申し出を受けるわけにはいかん。

 この者にかせられた"天命"を成すためにも…死なすわけにはいかんのだ」



「ですが、このまま戦ったのであれば死は免れません!」


「逃げよ」



「な…!逃げろと!?」


「貴様達ではない…この者を逃がせ…。

 力をつけ…それからでも遅くはないだろう」



「この地を見捨てろというのですか?」


「やむをえん…この者の命には代えられん」




優の顔が突如歪んだ。



「!?…莉都…どうしました?」


「…じゃないわ…よ」



「え?」


「勝手な事ぬかしてくれてんじゃないわよ!!」



「…莉…都……じゃない…。

 これは優さん自身か…!」


「さっきから聞いてたら…天命だとか逃げろとか…

 訳のわかんない事言ってないで助けなさいよ!!

 あんた私の守護霊なんでしょ!」


『まさかこれほど早く主と接触出来るとは思わなかったな…。

 話を聞いていたならば判るだろう。答えは言うまでもなく却下だ』



「却下って…いいわよ!あんたが力を貸さないっていうなら、

 私は私として戦ってやる!」


「…?あの、優さん、莉都と会話をしているんですか!?

(僕には声が聞こえていない…。まぁ優さんとして喋ってるから当然だけど。

 つまり頭の中…というか、なんと言えばいいかわかりませんが、

 とにかく今、彼女は莉都と喋っている…。

 こんな事は今まで経験がない…)」



『聞き分けのない困った主じゃ…。

 ほんと"王"にそっくり…』


「私の前世が王様だかなんだか知らないけど、

 私は私なの!白凪優なの!…私はこの街が好きだ。

 護りたいの!力を貸して!莉都」



『…負けたよ。

 優…君の覚悟を信じよう…力を貸す』


「ありがとう…莉都。感謝するよ!」



『でも…それによってどんな副作用があっても私は知らないよ?

 下手をすれば死ぬかもしれない…それでもいいんだね?

(もちろん、いざという時はこの娘の命を最優先に行動するけどね…)』


「うん!後のことは後で考える!

 今は力がどうしてもいるの!お願い!」



『はぁ…本当にわかってるのかしらね…

 でも、あなたを見てると何とかなりそうな気持ちになる。

 不思議なものだ』


「あはは。前向きだかんね」


「どうやら優さんのほうで説得できたみたいですね」



心配そうに見守っていた神谷も安堵の表情を浮かべた。



「うん!莉都のOKは貰ったわ!

 んでどうするの?」


「あとは私が術を使えばそれで、完全に莉都が優さんの体を操る事になります」



「私の意識はどうなっちゃうの?

 やっぱ飛んじゃうのかな?」


「それはその人それぞれですね。

 守護霊が本人の意識を飛ばしたい場合は飛ばすし、

 そうでないならお互いの意識を共有できたりもします」



そういうものなんだ。



「守護霊転身は僕が術をかけない限り出来ないです。当たり前ですが。

 ですが解除は守護霊自身の判断になります。

 なので危ないと感じたらすぐに術を解いてくださいね…莉都」


「了解した」



うっわ気持ち悪い!

私が喋ってるのに、思ったことが口から出なかった!


つまり転身してる間はこういう感覚ってことかぁ…。



「それじゃあ早速転身を行いましょう」




第36話 完   NEXT SIGN…

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