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第33話 天才

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第33話 天才



超越と和馬達が戦っている…その時。

地下2階でも戦いは始まろうとしていた。



「…誰だ?」



白凪亜子を気絶させ、トドメを刺そうとしていた瞬間だった。


緋土綾芽と白凪茜が降り立ったのは。



地下1階で勝利を得た緋土京の双子の妹、緋土綾芽。

そしてすでに満身創痍の茜。



対するは指輪を二つ付けた"暴君(Tyrant/タイラント)"。



「亜子!」


「茜さんダメよ」



亜子の方に走り出そうとする茜を止める綾芽。



「"解剖(Dissection/ディセクション)"が敗れたか…。

 まぁいいですよ。あなた達をちゃっちゃと片付けて、下にいったお馬鹿さんを始末にいきます」


「どうやらあなた、見た目によらず…かなりの実力者みたいね。

 その指輪…妖魔の力を封じたものでしょ?二つもつけて正気を保てるなんて、

 敵ながら天晴れね」




「それはどうも。元々僕は闇に堕ち、それを飲み込んだ人間ですから。

 心地よい感情しかないです」



「茜さん…どうですか?

 正直二つの指輪を支配している上にもう一つ内なる禍々しい霊気を感じるんですけど」


「…」



茜の顔は曇っている。



「やっぱり見えますか…」


「嘘をついてもしょうがないの…ハッキリ言おう…。

 綾芽殿も亜子も私も…三人に"死を告げる刻印"が出とるわ…」



「本気でやるに相応しいってわけですね。久々に燃えるわ」



屈伸を始める綾芽。



「茜さん十分に離れていてくださいね」


「あなたは戦う気満々ですが…後悔はないですか?」



「後悔?」


「多分、あなた死にますよ…?

 今引き返すなら、見逃します…どうですか?」



「うーん…」


「まだ若いんだ…自ら死に急ぐこともないでしょう?」



「なにそれ?神様気取り?

 私の人生は私のものよ。何をするもそれは私自身が決めること。

 誰にも決める権利なんてないわ」


「はぁ…。話し合いは無理のようですね。

 わかりました。全力であなたを倒します」



「出来れば少し手を抜いてもらえるとありがたいけどね」



ダッ!


綾芽は真っ向から攻めるのではなく、一番近い、左隅に走った。

それは地上に上る梯子のあるほうだ。



「はっ!」



地面に手を付くと気合を込める!

すると掌サイズの輝く円が床に現れた。


円の中には複雑な呪印が刻まれている。



「?…」



暴君は何をしているのかわからず傍観している。



続いて右側へ走り、またしても隅で陣を作る。

暴君は余裕なのか、彼女の行動に何も干渉せずに傍観している。



結局四隅で陣を作り終えると、暴君の正面に立った。

もちろん距離は十分にとっている。



「何のまじないですか?」


「まともにやっても勝てそうにないから、特殊な陣を使わせてもらったわ」



「へぇ…それで具体的には何が変わるんですか?」


「んー…試してみようか?」



スッ!



「!」



突如暴君は目の前の綾芽の姿を見失った。



「はぁッ!!」



ドガッ!!


綾芽の豪拳が暴君の顔面に入った!

勢い良く壁に激突する暴君。


その隙に亜子を救い出すと、茜の元に運んだ。



「茜さん…出来れば上で避難していてください」


「わかった…。すまんな綾芽殿」



笑顔で返す綾芽。



「"一体何が起こった?"…そんな顔をしてるわね」


「…何をした…」



「一つ…この陣は一つ一つじゃ効果を発しない。

 陣同士を繋げ…面を形作った時、面内に効果を及ぼすもの。

 今、この部屋の四隅に陣を作った。つまり、今この部屋全体が私の陣内ということ」


「それで?」



「二つ…この陣内の効果について。

 まず第一に、術者に対して治癒効果、身体向上効果、さらに霊気の安定の三大効果を齎す。

 さらに加えて、術者の思い通りに陣内の人間に効果を寄与する事も出来るスペシャル仕様。

 第二に、中の邪気を抑える効果。これであなた自身の禍々しい霊気は半減している。

 これにより、私の霊気があなたを上回った。

 私のスローな動きに意識がいかなかったことで、それは明白」


「スローな動き…だと?」



「あなたにとっては消えたように感じたかもしれないわね。

 霊術において初歩よ?意識を奪うなんてね」




「くっく…まったくなんと言うセンスじゃ。

 軽々しく説明しておるが、あれほどの効果を持つ陣を一瞬で生み出すのは、

 熟練者でも厳しい。あの小さな陣に複雑な呪印を一瞬で施す…。

 天才としか言いようがない…。

 意識を奪う術…確かに初歩かもしれんが、口で言うほど簡単なものではない。

 まったく末恐ろしい子じゃ…。

 だが一安心じゃ…サインが消えとる」



上の階から聞き耳を立てている茜だった。




「…」



暴君は駆け出した!


綾芽ではなく、陣に向かって隅に走り出したのだ!




「消えろッ!!」



ドッガーーン!!

暴君の全力の拳で床を割った!


だが、そんなもので陣が消えるはずもなく。



「残念。たとえ床がなくなっても、その陣は存在し続ける。

 そういう風に作ったんだもの。

 ちなみに霊気による破壊も今となっては無理」


「…」



「諦めることね。

 私が知りたいのは、あんたたちのボスが何処にいるかってことだけ。

 さっさと答えれば苦しまずに倒してあげる。

 悪い条件じゃないでしょう?」


「うおぉおおおおおおおぉお!!」



暴君は急に天に向かって吼えた。



「…こんな、こんな所で…終わってたまるかぁぁああッ!!」



綾芽に突進していく暴君!間合いに入るや否や、拳打や蹴りの乱舞を放つ!

しかし、綾芽に攻撃が通じるはずもなく、すべてかわされていく!



「はぁッ!!」



ドゴッ!!


水月に強力な一打が放たれる!

悶絶する暴君!



「が…が……」


「どうするの?言うの?言わないの?

 次はもっとキツいのイクけど…どう?」



「フガッ!!」



苦し紛れの拳打!


パシッ!


軽々と受け止められる暴君。



「はぁ…」



ボキッ!!


綾芽は冷静な顔のまま、握った腕を捻り、無造作に骨を折った。



「ぐ…ぐあぁああッ!」


「うっわー…いったそ…。

 あんたもしかしてマゾ?」



「ふざけるな…」


「これ以上は…あんたの綺麗な顔が台無しになるけど…

 それでもいいの?」



しばしの無言が続いてから、暴君は口を開いた。



「…わかった…言うよ」


「言っちゃうんだ…」



「ボスはここにはいない…すでに聖ヶ丘に出向いている」


「聖ヶ丘の何処?」



「そこまでは聞いてない…」


「そう…。とりあえずここにいても無駄ってことは理解したわ」



「話したんだ…。もういいだろう…」


「うん♪」



ドガンッ!!


綾芽は暴君の頭を押さえると、そのまま地面にねじ込んだ。

物凄い力で床が割れるほどだ!



「ごめーん…私、ドSだから」


「…そん…な…」



ガクッ!


暴君は気絶した。



「さて…状況はまずい方向に進んでるわね…。

 さっさと向かわないと…。その前に…」



綾芽は暴君の指輪を二つ回収した。



「よしっと…」



その瞬間だった!



「何…?この感じ?下から…?」



妙な圧迫感を察知した、その瞬間だった。

下から何かが突き上げてくる!

なんと地下2階の床が盛り上がっていく!



「な、なに!?」



ドッガーーーンッ!!!



突如起こった爆音爆風!そして凄まじい光!




地下2階は床が崩れ、そのまま地下3階へと落下していった!



「な、なんじゃ…これは…」



地下一階から覗く茜。


下は見るも無残に瓦礫の山になっている。



―――

――



「はぁ…はぁ……くそったれが…」


「くく…いい勝負だ…最高に面白いぞ…」



和馬と超越が瓦礫の上で対峙している。


すでに両者共にかなりの疲弊を強いられているようだ。

周りには倒れる由良葉の姿、葵の姿がある。



「いつつ……一体なんだっていうのよ…?」


「誰だてめぇ…!」



和馬のすぐ傍に落下した綾芽は無事だったようだ。



「…なんて禍々しい気なの…?あんたも敵か!?

 じゃあ…こっちは…?敵…?……じゃないわね…。一体どういう状況なの?」


「綾芽殿ーーーーッ!!」




上から茜が呼んでいる。



「うっわ…たっかー…コレどうやって地上に戻るのよ…!

 茜さぁーーーん!こいつらどっちが敵ですかぁーっ!」


「ボウズは味方じゃ!」



「え…まじ…?どう見ても敵の顔なんですけど…」


「黙れ人間の女…俺の勝負の邪魔をしたら命がないと思え」



「はぁ?お前、何様だよ?

 私に意見してんじゃないわよ…殺すぞ」



ドンッ!!


超越は飛び出した!


狙いは、和馬ではなく、綾芽!



「!」


「チィッ!!」



ドスッ!!


綾芽に放たれた手刀!

だが、それは綾芽を貫くことはなかった。


和馬が、綾芽の間に一瞬早く飛び込んだからだ。



「ち…馬鹿野郎…ッ!!なんで助けやがった…ッ!!」



和馬がそう口走った。



「助けやがった…って…、助けられたのは私じゃ…」


「そうじゃねぇ!!…この器の魂に言ってるんだ…!

 完全に消えたと思っていたのに…まだしぶとく生きてやがるとはな…」



ドサッ


和馬から手刀を抜くと、超越は下がった。

同時に膝から崩れ落ちる和馬。



「おい…!大丈夫か?」


「…大丈夫なわけあるか…心臓付近を貫かれたんだぞ…。

 すこしばかり外れていたから助かったが……くそ…回復がはじまらねぇ…」



血がドンドン溢れていく和馬。



「はぁッ!!」



綾芽はすぐに回復を図る!



「お前…」


「一応命の恩人だからね…傷口ぐらいは塞いでやるさ」



「…」


超越は追い討ちをかけず、自身の回復に努めているようだ。



「く…!奴が回復をはじめた…!

 俺に構うんじゃねぇ…!奴を討て!!そして指輪を取り返せ…!!

 そうすればこんな傷、すぐに回復できる!」


「あんた…やっぱり指輪に閉じ込められていた妖魔の人格なのね…」



「そうだ…残念な話、人格だけで、力はすべて奴の元にあるんだ…。

 頼む!取り返してくれ!」


「残念だけど、それは飲めないわ。でも心配しないで…奴は私が倒す」




第33話 完   NEXT SIGN…

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