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第31話 人を超越した能力

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第31話 人を超越した能力



「…察するにあんたは緋土京の片腕ってわけだ…

(この威圧感に加え、あの余裕っぷり…間違いないわな)」


「緋土京…彼はそういう名なのか。

 いかにも私が彼の片腕であり、SeVeN's DoAのリーダーだ」



今までの何もなかった部屋と違い、ソファーや机などが設置されている。

おまけに一面黒い壁紙だ。



「奴がいないのならここに長居する必要はないな…」


「くっく…面白い事を言うね」



超越(Transcendence/トランセンデンス)が笑い出した。



「あぁ!?何が可笑しいんだ…てめぇ…!」


「逃げれるわけがない…そう思わないか?」



ドンッ!



「く…ッ…!

(なんて威圧感だ…体が一気に硬直しやがった…!

 冷や汗まで…クソったれ…!)」


「戦う以外に道は無さそうね…和馬」



葵は指輪を取り出した。



「馬鹿!…お前は引っ込んでいろ…」


「和馬…何を言ってるの!?

 私は覚悟ならとっくに出来てる!」



「わりぃな…葵…。

 俺は覚悟出来てねぇんだ…お前を失う覚悟はな…。

 ここは俺に任せてくれよ…頼む」


「和馬…」


「葵ねぇちゃん…ここは和馬兄に任せよう」



由良葉の言葉に黙って頷く葵。

二人は一歩下がり、和馬は指輪をはめながら前に出た。



「覚悟しろよ…てめぇ!」


「その指輪は秘策かい?

 なんでもいいから最善を尽くすことだ」



スッ!


和馬の姿が視界から消えた。



「!

(疾い…かなりのスピードだ)」


ヒュッ!!


背後から放たれた上段蹴りが超越を凄まじい勢いで弾いた!

勢い良く飛んでいくと机に頭から衝突していった。



「すごい…!あそこまで身体能力が上がるものなの…?」


「はぁ…はぁ……ッ…

(冗談じゃねぇよ…なんだこの吐き気は…。

 ドス黒いもんが俺の中に流れ込んできやがる…ッ)」



ガラッ…


超越は気を失う事もなく立ち上がった。

見ると頭から血を流している。



「強いな…君は」


「…あれで気を失わないのかよ…!」



「私は正義(Justice/ジャスティス)のように雷を操る能力はない。

 復讐者(Avenger/アヴェンジャー)のように特殊な呪いを扱えるわけでもない。

 破壊(Destruction/デストラクション)のように爆発を引き起こすことも敵わないだろう。

 暴君(Tyrant/タイラント)のような圧倒的な身体能力も持ち合わせていないし、

 恐怖(Fear/フィアー)のような幻術も使えない。

 そして解剖(Dissection/ディセクション)のように霊気をあそこまで鋭利な刃に変えることも出来ない」


「…?」



「だが私は"これ"が使える」



超越が右手を突き出した瞬間に和馬の体が勢い良く吹き飛んだ!



ドガッ!!


そのまま壁に激突すると、波紋が広がる水面のように、壁に亀裂が走った。



「…!?一体何が起きた…?」


「和馬!見て!」



葵の掛け声に佇む超越を見た。



「なんだ…?あいつの霊気…」



超越の体を纏う霊気は明らかに異質な波動を放っている。



「聞くところによると私のこのオーラですか?

 これは両属性を一度に有するそうですよ」


「それってつまり、+と-って事かよ…。

 んな霊気があるなんて聞いたこともねぇぞ…」



「らしいね。ボスも大変驚いていた…。

 だがね、問題はそこじゃないんだよ…問題なのは私の能力だ」



再び右手を突き出す超越。



「!」



それを見るや否や、すぐさまガードの態勢をとる和馬。


しかし先ほどのような吹き飛ばされる気配がない。



「あれ…?」


「くく!さぁ来たまえ…!」



超越が手をクイっと自分の方へ折り曲げると、その瞬間和馬の体が宙を舞って、

勢い良く超越の元に引き寄せられていく!



「な、なんだこれ!?」


「くくく!面白いでしょう?」



宙にぷかぷかと浮かされる和馬。



「お前…何なんだ?」


「霊気による身体の強化…。

 非常に興味深かった。だが私は別の部分に興味がいったね。

 体を強化できるなら…"ここ"も出来るのでは?とね…」



超越は頭を人差し指で突付きながら言った。



「頭…?」


「そう。私は専門化ではないが、人間の脳にはまだまだ神秘と可能性がある。

 その中でも前々より興味深かった"超能力"といった分野がある。

 もちろん、各種メディアで取り上げられる、そのほとんどが嘘やトリックだろう。

 しかし、常識や科学では証明できない事例もあるのだ…」



「それで思いついたってわけか…このサイコ野郎!」


「もちろん最初から出来る筈がないと、冗談のつもりでやってみた事だったさ。

 だが結果はご覧の通りだ…想像を越え、この能力を得た…」



「!…ぐ…!なんだ!?…体が動かなく…ッ!」



宙でジタバタしていた和馬が石の様に固まって身動きが取れない。



「これで何故私が超越などと呼ばれているかわかっただろう?

 いや…君たちに名乗った事はなかったかな?くく」


「超能力だなんて…そんな馬鹿な!」



シュンッ!



「現実を見たまえ」


「!」



距離はあったはずだ。

にも関わらず超越は葵の隣に突如出現した。



「いつの間に…!?」


「これも私の能力の一つさ。

 見えてる範囲であれば一瞬に空間を移動出来る」



シュッ!


再び先ほどの位置に戻る超越。



「いかに力があっても、速くても…こうしてしまえば無力。

 それと先ほど言った点で、実は嘘が色々あるんだ」



空中で固まっている和馬に向けて超越は右手をかざした。

人差し指と中指をさして、まるで指で銃を形作っている。



「な、何をする気だ…!?」


「こうする気さ」



バチバチバチッ!


超越の指先に稲妻のようなものがほとばしっている!



「食らえ…雷撃銃スパークショット!」



バシュッ!!

か細い電気の波動が勢い良く放たれた!

そして和馬の左肩を軽々と貫通し、天井にも穴が開いた!



「この通り、正義の雷撃など、お手のものだ」


「あぁ…ッ…」



痛みに和馬の顔は歪む。



「はぁああッ!!」


「!…おっと」



由良葉が超越に突進していったが、それを楽々とかわす。



「く…!よけんなよぉッ!!」


「いいだろう。全力で攻撃してみたまえ」



「なッめッ!んなッ!!よッ!!!!」



由良葉の両手に激しい狐火が揺らめいている!



「白い火か…霊気とは実に興味深いな」


「はぁあああッ!!双!炎玉!!」



巨大な白炎の玉が超越目掛けて飛んでいく!



「…」



ドッガーーン!!



「…まともに食らった…?」



由良葉自身も疑問の表情を浮かべた。

避けるモーションはおろか、ガードする様子もなかったのだ。



辺りに立ち込めた煙が消えていく。



「!」


「つまらん技だな…まるで痛くも痒くもない」



なんと無傷だ。



「うおおおおおおッ!!」


「!…ほう…」



和馬は超越の金縛りと空中に浮かす術を解いて、地に降り立った。



「はぁ…はぁ……舐めた真似しやがって…」


「私の縛りから抜けたのは君が始めてだ。

 何をした?非常に興味深いな」



「ふん!…ただの気合だ!!馬鹿野郎!!」



和馬はすぐさま飛び掛った!


バシッ!


「!…く…!!」



跳んだ勢いで放った拳が軽々と受け止められている。



「怪力はない…と言ったが、この程度の筋力操作ならわけはない。

 はぁああッ!!」



メキメキッ!

和馬の拳が握りつぶされそうになっている!

物凄い握力だ!



「うああ…!!」


「和馬にぃを放せぇええッ!!」



再び由良葉が突進していく!



「試してみるか…」



由良葉に向けて左腕を伸ばした。



「ゆ、由良葉気をつけろ!!何かしてくるぞ!!」


「熱…炎…イメージだ…。熱くなれ…もっとだ…もっとッ!!」



超越の左手が急に発火し始めた!

徐々に勢いを増していく!



「!あいつが炎出した!!?」


「素晴しい…!焼き尽くせ…!!」



バシュッ!

由良葉目掛けて炎が飛んでいく!

由良葉の火炎玉のように綺麗な形ではないが、炎の塊が尾を引きながら

妙な軌道で飛んでいく!


一直線ではなく、揺ら揺らと酷く不安定だ。



「でかッ!」



由良葉の体長の半分ほどの炎の塊は由良葉のすぐそこまで来ていた。



「ついでだ…爆発のイメージだ…集中しろ」


「やっば…!」



ドッガーーーン!!!!



物凄い爆音と共に由良葉の体を吹き飛ばした!



「爆炎弾…バーストブリッドでも名づけるか。

 形状と軌道が雑だが…まぁ初めてにしては上出来か」



「何でもありかよ…この野郎!!」



和馬は掴まれている状態から蹴りを放った!

その瞬間、拳を放された感覚を感じながら蹴りは空を切った。



「っく…消えやがった!」


「…さて、遊びもそろそろ終わりにするか」



超越は机に腰掛けて言った。



「和馬、由良葉君……三人で全力でやりましょう。

 多分勝機はある」


「勝機はある…って、葵…何かわかったのか?」



「超能力って思うから翻弄されるのよ。

 あれは霊能力の範疇にすぎない。さっきの金縛りだって、あなたの高めた霊気で無効化できたじゃない。

 私も指輪をつけて全力で掛かる、由良葉君は出来れば銀ちゃんに変身して。

 あなたも本気でぶつかってね和馬…頼りにしてるんだから」


「はぁ…俺だけでどうにかできたらって思ったんだけどな…。

 俺が指輪二つ付ければいいんだけど、冷静に考えてリスクのほうが高いのは明白だからな…」


「そうそう。和馬にぃまで敵に回ったら収集つかなくなっちゃうからやめてよね!」



「うるっせぇな!このクソガキ!」


「なんだよ!馬鹿ハゲ!」



いつも通りな二人のやり取りを見て葵は笑った。



「な、なんだよ」


「ううん。絶対生きて帰ろうね」



葵はニニッと微笑んでいった。



「あったりまえだ!」


「話し合いは終わったかい?」



「ああ!やろうぜ…最終ラウンド…!」



第31話 完   NEXT SIGN…

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