表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/53

第30話 綾芽

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第30話 綾芽



「三人は無事に降りたみたいね」


「僕としたことが…。

 この責任は君の命で償ってもらうよ」



対峙する白凪亜子と暴君(Tyrant/タイラント)。



「なるほど…確かに凄まじい霊気を内に秘めてますわね」


「…先ほどからあなたは、余裕綽々といった面持ちですが、

 すぐに恐怖と絶望の表情にしてあげますよ」



ビュッ!

一瞬にして暴君の姿が亜子の視界から消えた。



ドガッ!!


「!!…ッ!」



一瞬にして亜子の隣に移動するや否や、鋭い手刀を亜子の首筋目掛けて放った。

が、それをいとも簡単に片腕でガードして見せる亜子。


腕が衝突する際物凄い衝撃波が起こった。



「どうしました?私の華奢な腕で止められたのが不思議ですか?」



バッ!


得たいの知れない自信に、警戒したのか、暴君は亜子と間合いをとった。



「…」


「答えは至極単純ですよ。

 私は物凄い強いだけです。純粋に」



そう言ってニコっと笑う亜子。


先ほどの暴君のように一瞬で姿を消し、暴君の背後に立った。



「…動き見えました?美男子さん」


「…いや…。凄いな…まるで見えなかったよ」



背中合わせで語る二人。



「はぁッ!!」



すぐに振り向き様手刀を放つも、亜子の姿はすでになく、空を切るだけだ。



「…先に行った三人が心配なので、早々に倒させてもらいますね」


「…いいでしょう……なめて掛かるのはやめにします…。

 本気でやりましょうかッ!!」



ビュッ!!

凄まじい速さで亜子目掛け跳んでいく暴君!



「!」


ビュッ!


亜子は暴君の拳打をガードするでもなく、体を捻り、ギリギリの所でかわした。



「シッ!!」



続いて暴君の上段蹴りが放たれる。


これも先ほど同様にガードではなく、避けている。

突然の二連撃に亜子は態勢を崩した。



「もらった!!」



暴君の回転正面蹴りが亜子の腹部に突き刺さった。


ドンッ!!


物凄い衝撃音と共に壁際まで吹き飛ばされた。

亜子の体は勢い良く壁に激突した。



「ガハッ…」


「やるね…蹴りが腹に突き刺さる前に両手で腹を守ったか」



「どうします?今ので単純な肉弾戦では勝ち目がないことがわかったでしょう?

 スピード、破壊力…共に僕のほうが上なはずだ」


「そうね…」



亜子は立ち上がった。



「何…?

(瞬間的に回復した…?)」


「あなたのように体内にわざと強力な霊魂を入れ…力を得る術は、本来外法とされている。

 術者の命を削るだけでなく、異常なまでの殺意や悪意をもち、

 体を乗っ取られることや、破壊衝動が抑えきれなくなる等…ハイリスクが多いからね」



「?…急に何の話をしているんだい?」


「過去にも似た事例は私達、祓い師の歴史上幾度とあったそうなの」



「?…」


「その圧倒的な力の前に敗れていく祓い師たち…。

 どうすれば対抗出来るのかを考えた…」



喋りながら亜子は右手の中指に指輪をはめた。

見ると、左手の中指にも指輪がはめてある。



「そして答えは自ずといきついた…目には目を…ってね」



ドンッ!!


亜子の姿が衝撃音と共に消えた。

その瞬間暴君の体は激しく吹き飛んだ!!



「ガハッ…!!」



亜子は一瞬で間合いに入ると、正拳突きを一発放ったのだ。

壁際まで吹き飛んだ暴君の腹部には、くっきり亜子の拳のあとが残っている。



「…外法には外法を…。

 そうする以外に、その時は方法がなかったそうなの。

 現に今もその状況…。

 だから使わざるを得なかった」


「一体…何をしたんだ?」



「この指輪には妖魔が封じられていてね。

 身に着けることで、妖魔の能力を借りる事が出来るの。

 もちろんリスクは同じ…。今も正直辛い状態よ…なんていったって…2個つけてるし…ね」



亜子の顔が苦悶に歪む。



「それでその能力という事か…納得だよ…。

 まさか先に行かせた三人も…?」


「そのくらいの覚悟はしないとあなた達を止めることは出来そうにないからね…。

 さぁ…おしゃべりはここまでです…速攻で倒させてもらうわ!」



その瞬間だった。



ドーンッ!!


物凄い音と共に、少し部屋が揺れた!



「何…?」



亜子が見せた一瞬の隙。

そこを暴君は見逃さなかった!



ビュッ!


一足飛びで油断する亜子に近づく暴君!

そして鋭い手刀による突きが心臓目掛けて放たれる!


ズボッ!!



「…がはっ…!!」


「ちぃ…!!」



亜子は一瞬早く体を反らし、心臓への一撃はなんとか避けた。

だが、暴君の手刀は腹部に突き刺さった!


亜子の左脇腹から出血している。



「く…」



亜子が手を当てると見る見るうちに傷が塞がっていく。



「うわあああああッ!!!」


「!」



暴君は苦しむ亜子に攻撃の手を緩める事無く間合いをつめ、乱打を浴びせる。

亜子は反撃は出来ないものの、攻撃を避け続けている。



「ちぃ…!!素早い…!!」


「甘いの…よッ!!」



ドガッ!


亜子の蹴りが暴君を吹き飛ばした。



「はぁ…はぁ……

(やばい…意識がもっていかれそうだ……やっぱ指輪二つは危険すぎる…!

 だからといって一つじゃ倒せない…)」



『女ぁ…諦めて我を解放しろ……そうすれば、あんな小僧一瞬で塵にしてやるぞ』



「黙りなさいッ!!私は亜子よ…!

 誰にもこの体を譲らない…私は私なの…!」


「うぅ…よくも!よくもぉおお!!」



再び向かってくる暴君!

激しい乱舞だが、今の亜子にはまるで無意味。

全ての動きが遅く感じるほどだ。



「はぁあああッ!!」


「ガフッ!!」



ドッガーーーン!!

亜子は暴君の髪を掴むと、思い切り地面に顔面を叩き付けた。



「はぁ…はぁ……ッ!!」


『くくく…どうだ?今の攻撃お前の意志じゃないだろう?』



「黙れ…黙れッ!!」



亜子はうずくまる暴君を蹴り上げた!



「がは…!!」



血反吐を吐き散らし、転がる暴君。



「はぁ…はぁ……あああああああああああああッ!!!」



カラン…カラン……ッ!



亜子は両手の指輪を外して投げ捨てた。



「はぁ……はぁ………!!

(危なかった……あと一歩遅れてたら完全に意識を奪われていた…)」



指輪は転がる。

より力を求める者へ。


指輪は転がる。

より邪悪なる者へ。



「…」


「ニッ」



座り込む亜子の目の前に暴君は仁王立ちしている。

不気味な笑みを浮かべて。



「あ……ああ…」


「頂きましたよ?この素晴しい力!」



ドガッ!!



亜子の意識はここで断たれてしまった。



―――

――



その頃、上では…



「…なんだ…てめぇ…?」



突如現れた冷たい瞳をした女性。

"解剖(Dissection/ディセクション)"が茜にとどめを刺そうとした

ジャストタイミングで、彼女は部屋に降り立った。



「…」


「誰だ?って聞いてんだよカスが」



スッ


解剖は凄まじい速さで腕を振った。

そして飛ばされる霊気の刃。



カキンッ!



「へ…?」


「…何か?」



超高速で飛ばされた見えない刃を女性は弾いた。



「間に合った…か」


「茜さん…なんと詫びたらいいかわかりません…。

 許してくれなんて…とても言えた立場じゃないです…」



「いいんじゃ…来てくれて助かった」


「"来てくれて助かった"…?

 何寝ぼけてんだ…ババァッ!!てめぇはもう死ッ!決定!死ッ決定!!」



茜の顔を蹴り飛ばして言った。



「茜さん…この男やってしまって構いませんか?」


「…頼む…情けないが…もう何も出来ん」



地に伏せた茜がうつろな目で言った。



「どいつもこいつも…女って奴はぁぁあああッ!!!

 出来もしねぇ事をペラペラペラペラ…ぶっ殺すぞあぁああ!!?」



スパッ



「黙れ…耳が腐る」



解剖の右耳がそぎ落とされた。



「はぁ…?……おい…何してくれちゃってんだよ…おめぇ……

 僕の…僕の耳がぁあああああああッ!!」



右耳を押さえながら落ちた耳を拾う解剖。



「あんたの十八番をそのまま返してあげたのよ?

 ありがたく思うことね」


「くく…気をつけることだよ…。

 その子は冷徹にして最強……。天才の中の天才……

 緋土綾芽ひつち あやめ…京の双子の妹じゃ…」




「はぁあ…緋土京!?…誰だそいつぁ……。

 …ん……お前…。

 その顔…その眼……その髪の色…!!

 まさかボスの…?」


「私は優しくないわよ?

 ムカつく野郎には特にね。

 あの馬鹿兄貴を知ってるなら、素直に居場所を吐く事ね。

 息があるうちにね」



物凄く無表情に近い冷徹な表情をして脅す綾芽。



「ひ、ひぃぃい…!

(なんなんだ…こいつ…!

 絶対にヤバイ……眼が尋常じゃない…!

 本気で殺す眼をしてやがる…!)」


「どうすんの?言うの?言わないの?」



「し、知らないんだよ!僕は上から来て、ここに待機してただけで…

 ボスの居場所なんて知らないんだよ!」


「そう」



「そうそう!だからもう許してくれ!な?な!?」


「そうね…許してあげる」



そう言うと一瞬で男の間合いに踏み込んだ。

走るモーションすら解剖には見えていなかった。


ドガッ!!


そして近づくや否や、解剖の顔面を地面にねじ込んだ!

そして、髪を掴んで持ち上げた。



「ぶはっ……はぁ…はぁ……や…やめ…」



ドガッ!!



更にねじ込み、持ち上げねじ込み…


何度も何度も無表情でやり続けた。



「…」


「ふん。少しは痛みがわかったか…下衆が」



解剖が気絶をした時点で髪を掴み持ち上げると、

そのまま壁まで投げつけた。



「噂に聞いてはいたが…す、凄まじいのぅ…」


「…ドSですから」



―――

――


地下3階―――



「…こいつはまずいな…」


「君たちにはそうなるだろうね」



地下3階…つまり最下層。

そこには緋土京の姿はなかった。



「やっぱあの兄ちゃんにハメられたんじゃないの?」


「それは違うよ君。正義(Justice/ジャスティス)は知らなかっただけさ。

 ボスがここにいないことをね」



第30話 完   NEXT SIGN…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ