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第29話 絶体絶命

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第29話 絶体絶命



対峙する白凪茜と"解剖(Dissection/ディセクション)"。


以前の戦いから判るように、実力的には白凪茜に分があると考えていい。

だが茜は油断せず慎重に佇んでいる。


そんなにらみ合いが1分ほど続いて、先に動いたのは茜だった。


コンコン


茜は床を叩いた。


続いて近くの壁を叩く。



「ふむ…かなり頑丈なようだ」


「全力で暴れてくれていいよ?

 それと…一つ言っておくがこないだの勝負…あれで勝った気にならない事だよ」



「別に勝ったとは想っておらんよ」


「そうかい…それならいいんだ。

 僕は全力じゃなかったんだからね」



解剖は両手を広げた。

ジャキッ!


霊気の刃が両手に…そして男の周りに霊気で作られたナイフが無数に現れた。



「相変わらず、それが好きだな…以前通用しなかったのがわからないのかい?」


「誰も真っ向勝負で放つとは言っていないさ!

 これでどうかな?」



男は霊気のナイフを弧を描くように左右から放った!



「む…?」



茜はあっという間に全方位ナイフに囲まれてしまった。



「どうだい?あの霊気の壁…確か一方向に対してしか出せなかったよね。

 これを一斉に放ったら…どうなるかな…くくく」


「はぁ…。その"してやったり"って顔は、成功してからするもんじゃ…。

 御託はいいからさっさとやってみなされ」



「ふん…負け惜しみを…!!

 いちいち生意気なババァだ!喰らえッ!!」



解剖がそう叫ぶと、無数の刃が茜目掛けて猛烈なスピードで飛んでいった!



バチッ!!



「…何…?」


「何をそんなに驚いておる?

 ただのハッタリに聞こえたか?」



無数の刃は茜を包む霊気の壁に防がれている。



「一方向に出せるなら、全身を包むのもわけなかろう?」


「く…!!ほざけええ!!」



今度は解剖自ら突進していく。

両の手にそれぞれ霊気の刃がほとばしっている!



「接近戦か…それもいいじゃろう!」



茜も応戦するべく、全力で解剖目掛けて駆け出した!



「死ね!!」



茜が間合いに入るや否や解剖は右の刃を全力で振り放つ!

しかしそれを素早く上空にかわす茜。



「見え見えだろッ!!馬鹿野郎!!」



解剖は避けられるのを前提に考えていたようだ。

すぐさまもう片方の刃を上空の茜目掛けて投げ放った。



「はぁッ!!」



刃が茜の目前まで来た瞬間、何のモーションもせず、ただ一喝の気合を放った。

すると刃がバチンッと消滅した。



「!!…馬鹿な」



スタッ!



「霊気を物質化し、それを研ぎ澄まし放つ…この一連の流れの速さはかなりのものじゃ。

 しかし、その分よく錬られていない。

 切れ味は良くても非常に脆いんじゃよ」


「ほう…やってみるか…」



男が茜から目を放し集中を始めた。


ドガッ!!


「ヘブシッ…」



解剖の顔面に茜の跳び膝蹴りが放たれた。



「馬鹿か…誰が待つと言うた!」


「き、貴様ぁッ…卑怯だぞ…ッ!!」



顔面を押さえながら怒鳴り散らす解剖。



「私はお前と遊んでる場合じゃないのじゃ。

 とっとと勝負を決めるぞ…!!はぁあああああッ!!」



茜は気合を入れ始めた。

全身を纏う霊気は激しい光を放ち、ほとばしっている!



「くぅ!!」



ドンッ!!


茜が物凄い勢いで男の間合いに入った。

そして拳による弾幕を近距離で全身に浴びせると、トドメの蹴りを放ち、壁際に吹き飛ばした。


さらにそれで終わりではなく、霊気砲を乱打した!



「はぁあああッ!!!沈めぇええッ!!」



茜の全力だった。

瞬殺の勢いで放った霊王化身による波状攻撃。



「…」



解剖はなす術もなく、壁に打ち付けられている。

どうやら気を失ったのか、ピクリとも動かない。



「はぁ…はぁ………。

 流石にキツイわ……」



ドクン…



「む…?まだ動けるか…?」



男はゆっくり打ち付けられた壁から這い出ると、首をコキコキっと鳴らして茜を見た。



「…驚くほどのタフさじゃな」


「頭がやけにスッキリするな…」



スッ



「!」



突如茜の服に切れ目が走った。



「何…!?」


「余所見してていいのか?」



一瞬に服に目を奪われた茜は、解剖の声にすぐ視線を戻した。

が、目の前にはすでに解剖の姿はない!



「ここだよ」



ドガッ!!


茜は解剖の全力の蹴りに吹き飛ばされた。


間合いは十分にあった。

一瞬にして背後に…死角に潜り込まれたのだ。



「ぐ…がはっ…!!はぁ…はぁ…」



茜は吐血した。

不意打ちの蹴りで相当のダメージを受けてしまったようだ。



「どうしたんだ…僕は。

 力が…力が沸いて来る」



茜はフラフラと立ち上がった。

蹴られた腹部を押さえている。



「…く…

(急に強くなりおった…狂気化でもないというのに…。

 まさか狂気を飲み込みおったのか…?)」


「まだ立てるのか。

 じゃあこっからは拷問タイムだ」



スッ!


あまりにも素早いモーションで、何が行われたのかすら見えない。

実際には男が手を振り、そこから霊気の刃が放たれている。



スパッ!



「ぐッ…!」



突如茜の右肩から血が噴出した。



「あはは!どうしたんだい?よけるか、ガードするかしてみなよ」


「く…!」



茜は全身を守護霊壁で覆った。



「いいね。じゃあどっちが勝つか勝負だ」


スッ!


再び解剖が腕を振る。

そして凄まじい速さで見えない霊気の刃は茜目掛け飛んでいく!



スパッ!!

解剖の刃は霊気の壁を簡単に破り、体を切り裂いた!



「ああッ……!!」



茜の悲痛な叫びが部屋に響いた。

今度は左肩から血が噴出したのだ。



茜は両肩を抱くようにしながら、その場に崩れ落ちた。



「つまんないね。こうも簡単に勝負がつくと」


「…ふん…もう勝ったつもりか…気の早いことだ……」



「そんな状態で強がってみても、虚勢にしか見えないよ。

 まぁ…もし、まだ何かやれるなら早くやることだよ」


「…

(時間を稼ぐしかないのう…。両肩の傷も塞がった。

 体力も戻りつつある。霊気も落ち着いた……だが、血を流しすぎたわ…。

 目が霞んできた…。いかんな…死を告げる刻印が見えとる…。

 "彼女"の到着も期待できんか…ふふ。現実はそう都合よく運ばんわな…)」



「何をニヤニヤしてるんだい?秘策があるなら使ってくれ」


「そうするわ…ッ!!砕竜!!」



ドッ!!

一瞬にして茜を纏う霊気が爆発的に上昇した。



「はぁッ!!」



以前同じ技を解剖は見たことがあった。

そう。砕竜の咆哮という巨大な霊気砲。


ガードしても、その勢いに吹き飛ばされる、必殺の技。



「…」


しかし、解剖はひどく落ち着き払っていた。

まるで目前に迫る、それを"防げないわけがない"と思っているようだ。


そして、解剖はおもむろに片手を波動の前に突き出した。



バガンッ!!


腕に当るや否や、波動は別方向にその軌道をかえ…飛んでいった!



ドッガーーーン!!

波動は壁に激突…地下室が激しく揺れ動く。

壁に穴が開くほどの威力…。



「馬鹿な…弾き飛ばした…?」


「かなり痛いな…」



「く…ならば!!はぁああああッ!!!」



最後の力を振り絞り、茜は"竜気"を高めていく!



「喰らえッ!!砕竜の爪ぇええええッ!!」



茜は解剖と距離があるにも関わらず頭上から腕を振り下ろした。


すると巨大な霊気の爪あとにも見える三閃の巨大な光の波動が解剖を襲う!




「ふん」



ガキンッ!!



「な……」



解剖はその攻撃を自らの光の刃で完全に防ぎきっている。

茜は呆然と立ち尽くしている。


恐らく相当の自信があった一撃だったのであろう。



「どうやら今ので力は出し尽くしたようだね」


「…まさか…このような結果になるとはな……」



茜は観念したのか、その場に崩れ落ちた。



「終わりだね」



―――

――



時はほんの少し遡る…。

地下1階からさらに下に降りた石動和馬、白凪亜子、九鬼葵、神楽由良葉の4人は、

男と対峙していた。



「君たちか。侵入者ってのは」


「出やがったな…女男!」


「和馬にぃ…"暴君(Tyrant/タイラント)"だよ」



先ほど同様に何もない白い空間。


暴君は中央に一人で佇んでいる。



「一応聞くが、そこを通してくれねぇか?」


「それは出来ません。僕の仕事は君たちの排除ですから。

 上の解剖と僕を一緒にしないでくださいね」



「やっぱそう簡単に通しちゃくれないわな…。

 だったら力ずくで通してもらうしかないぜ」



スッ



「あぁ!?…おい亜子…」



亜子が和馬達を差し置いて一歩前に出た。



「私が彼を引き付けますから、3人は下へ行ってください」


「はぁ!?何言ってんだよ!あいつはめちゃくちゃ強いんだ!

 俺達全員でかかっても勝てるかどうか…」



「大丈夫…私がなんとかして見せますから」


「…自信あるのか?」



「ええ。任せてください」


「和馬…ここは彼女に任せましょう…。

 それでいいのよね?亜子ちゃん」



「ええ。お願い葵さん」


「さっきから好きに言ってくれてますけど、僕は通さないと言ったでしょ?」



ビュッ!


亜子が一足飛びで暴君に飛び掛った!



「へぇ…」


「今のうちに行ってください!」



亜子は暴君の進行を妨げるように立ちふさがる。

和馬達は亜子の合図と共に全力で駆け出した!



「行かせるものかッ…!」



暴君は亜子を無視し、サイドから抜いて和馬達を追った!

が、その瞬間!



「!」



急に何かに引っ張られる感じで暴君は動きを止められた。

それどころか、次の瞬間には目の前は天井が映っている。


ドガンッ!!


暴君は亜子の背負い投げを喰らったのだ。



「く…!」


「流石に不意打ちの背負い投げは効きましたか」



背中を押さえ、悶絶する暴君。



「どうやら…ただの女の子じゃないようだね…」


「ええ。よろしくね」



亜子はニコッと笑顔でいった。




第29話 完   NEXT SIGN…

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