第22話 激闘の末に…
SIGN 二章 - SeVeN's DoA -
第22話 激闘の末に…
突如現れた猫背の男。
年は25,6だろうか…。
ボサボサの頭をボリボリとかいている。
まるで緊張感のないぼけっとした表情で、"正義(Justice/ジャスティス)"を見つめている。
「お前がそこの木偶のぼうをやったのは間違いないようだな…。
何をしたか想像できねぇが…只者じゃないようだ」
正義は攻撃態勢に入った。
両手には雷撃がほとばしっている。
「タイム!」
「は!?」
突然タイムと言い出した猫背の男。
倒れる菅谷浩介の元に歩み寄った。
「ありゃ…菅谷っち……ボロボロじゃないか…」
「だ…誰のせいだよ…かみやん…」
猫背の男はしゃがんで、菅谷の体に両手をかざした。
すると淡い光が彼を包み込み、徐々に傷を癒していく。
「これで動けるでしょ?」
「あ…ああ。ありがとう」
菅谷は立ち上がった。
かなりの重症を負っていたはずだったが、見事に回復している。
「待っててくれてありがとう…あなたいい人だね」
「…。お前が普通じゃないのはわかった。
どうやらタダの雑魚ではないようだ……本気で行くぞ」
ダッ!!
正義は駆け出した!
かなりの速さで猫背の男の間合いに入り込んだ!
入るや否や、右の手刀を放つ!
「わっと…!」
紙一重で手刀をかわされた正義だが、何故か不敵な笑みを浮かべている。
「!!」
バチバチッ!!
猫背の男は突然膝を折って崩れた。
「かみやん!?」
「し、しびれた……」
「俺の手刀をかわしたことは褒めてやるが、流石に"こいつ"まではかわせなかったようだな」
正義は右の手刀の電撃を見せながら笑みを浮かべた。
「…どうやら僕はここまでのようです…。
菅谷っち…あとは頼むよ…」
「ふん…偉く諦めの早い奴だな。
もっとも…賢い選択だとは思うがな…抗えば抗うだけ、苦痛を伴う事になるからな」
ザッ
迫る正義…動けない猫背の男…神谷。
そこに割って入った男がいた。
「なんの真似だ?」
菅谷浩介だ。
不安そうな表情ながら、猫背の男を守らんと仁王立ちになった。
「かみやんはやらせない…。
どうしても戦うっていうなら俺と戦えっ!」
「ふん…さっき"破壊(Destruction/デストラクション)"にやられてた奴が、何を粋がってやがる。
自分と俺達の実力の差はわかってんだろ?」
「ああ…俺一人だったら天地がひっくり返っても勝てやしなかったさ…。
でも、かみやんがここに来た…!」
「あぁ!?その猫背が来たから勝てるってのか?」
「かみやんはなぁ…虚弱体質だし、引きこもりだし、人見知りだし、
オタクだし、おまけに自分勝手で薄情物だ!
でもな…勇気を…力をくれるんだ!」
「意味がわからんわ…まぁいいさ。やる気ってんならかかってこいよ!」
「物凄い言われようで腹立たしいですが…ほとんど図星で言い返す言葉もないですね…
んじゃま、はじめましょうか菅谷っち…」
そう言うと、神谷はポンッと菅谷の背中を押した。
「出番だよ…"葉月"」
「…」
菅谷は黙ったまま顔を伏せて立っている。
「なんだ…?
(空気が変わった…?)」
ドンッ!!
菅谷が一気に駆け出した!
正義の間合いに入るや、すぐに攻撃を放つ!
拳打と蹴りの乱打だ!
だが、一発もカスる事もなく、ことごとく避けられている!
「っし…準備運動はこんなもんか…」
「何を…した?
(最初からこの程度の力はあったのか?
いや…ここまで動けるなら、あのノロマの破壊にあぁはやられない…!
やはり、あの猫背が何かしたんだ…。相手を強化する能力か何かか?)」
「はぁああッ!!」
菅谷は再びまっすぐ突っ込んで行った!
同じように乱打を繰り出すも、先ほど同様に全てかわされてしまう!
正義は相当の運動神経を持っているようだ。
菅谷もそれなりに速いが、正義はそれを勝る速さ。
だが、実のところ速さの差というより、正義には相手の動きを見て取る、動体視力が優れていると言える。
「ちぇ…当らないか」
「…。
(なんだ…?……動き自体は大したことはない…。
だが、今だかつてない不安感を感じる……なんだ?)」
「あんた強いな」
「…お前…急にキャラ変わってないか…?」
「葉月君…遊んでないで本気でやってください…。
君が負けたら僕も菅谷君も殺されちゃいます」
「るせぇよ!こちとら久々に体使ってんだ…本調子には程遠いんだよ!」
「ほう…まだ本調子じゃないか。
だったら今度はこっちから攻めてやるよ!
せいぜい本調子とやらを取り戻すんだな!!」
ビュッ!!
更に動きが速くなった!
「!」
ドスッ!!
葉月は動きに反応できなかった!
電撃を纏った手刀が腹部に突き刺さる!!
「はぁッ!!」
続けて雷打を顔面に食らわせる正義!
葉月は勢い良く吹き飛んでいった!
「まだまだあああ!!」
さらに追い討ちをかけるが如く、雷撃波を葉月目掛けて放った!!
ドッガーーーン!!
轟音と共に激しい爆発音と砂煙が舞い上がった。
「あーあ…死んじゃったかな…」
「はぁ…はぁ………。
(俺は何を焦っているんだ…?
ここまでする相手じゃなかったろう…)」
ザッ…
砂煙の中に人影が見えた!
「く…あれで立てるというのか!?」
「痛ってぇ…」
血まみれの菅谷が現れた。
「!…ふん…しっかり食らってやがるじゃないか…!
脅かしやがって…!」
「お前人間の癖に洒落にならん力を持ってやがるな。
危うく逝きかけたぞ」
「葉月君…もしや…全力でやってます…?」
「そのまさかだよ…俺が出てきても、意味なかったかもしれんぜ?
マジで強いんだよこいつ」
葉月の額に冷や汗が滲んでいる。
「くく…!どうだ?大人しく死ぬ気になったか?
(何も恐れる必要はない!…コイツは十分俺より弱い!)」
「は?なんでそうなんだよ。余裕ぶっこいて笑ってんじゃねぇよ。
俺は単なる"時間稼ぎ"だ。十分役目は果たしたぜ?
なぁ神谷」
「…なん…だと?」
「どうも…葉月君。眠っていいよ…後は僕がやりますから」
猫背男、神谷が立ち上がって葉月とすれ違い様に肩をポンと叩いた。
すると、菅谷はその場で後ろに思い切りぶっ倒れた。
どうやら気を失っているようだ。
「は…?お前明らかにその男より弱いじゃねぇか!
マジで意味がわからんわ」
「何を…」
「あ?」
「何をそんなに怯えているんですか?あなた」
「誰が怯えるだ!?ふざけんなッ!!」
「だって…ほら…。
その汗…すごいですよ?」
「!…!!」
正義は額に物凄い汗をかいていた。
違う!と言わんばかりに拭い去った。
「それに、さっきからあなた後ずさってますよ?」
「!!」
地面を見ると、確かに後ずさりした後が残っていた。
「あなた…本能ではとっくに判ってるはずですよ?
目の前の脅威に」
「…黙れッ!!」
「なぜ、あの大男が倒れていたのか…判りますよね?」
「煩い…黙らないとぶっ殺すぞ!!!」
正義は酷く怯えた表情で叫んだ。
トンッ
「!!」
「終わりです」
距離も離れていた。
別に目を離したわけでもない。
だが、神谷は今正義の背後に立ち、肩に手を置いている。
「邪魂!滅!戒!!破ぁあああああッ!!」
神谷がそう叫ぶと凄まじい光が辺りを包みこんだ!
光がおさまると、正義は意識が朦朧としながら、その場に倒れ込んだ。
「はぁ…はぁ………終わった……」
神谷もその場に崩れ落ちた。
「神谷さん…」
「あ!…聖君……頼むよぉおお!
僕を駆りだすなんて…もう10年分ぐらいの気疲れがどっと出たよ」
「すみません…自分の力が及びませんでした…。
それにしても神谷さん…誰から呼び出しを?」
「不破彰人君だよ…嫌だって言ったんだけどね…。
行かなきゃ絶交とまで言うんだもん!…仕方なく助けに来たよ…」
「そっか…彰人君が…。
って菅谷さん!?血まみれじゃないですか!
さっきより全然怪我が酷い!」
「あ、忘れてた…」
「忘れてたって!早く治療しないと!!」
聖は倒れている菅谷に駆け寄って治療を始めた。
「出来れば手伝ってください!」
「無理無理!邪魂滅戒破を2度も使ったんだもん!
もう霊力ないない」
「菅谷さんは…もしかして、また"守護霊転身"を使ったんですね?」
「そそ。あの大男倒したのはいいけど、邪魂戒滅破使ったばかりでさ。
霊気も乱れてたから、どうしても時間稼ぎが欲しかったんだよ。
葉月君なら、倒せるかなーって思ってたんだけど、無理だったみたいね」
「はぁ…。
…でも助かりました…神谷さん。
ありがとうございました」
―――
――
その頃…。
「なるほど…そいつは一大事だな」
片桐亮、石動和馬、神楽由良葉は白壁に向かって走っていた。
走りながら、片桐は二人に事情を説明していた。
「とにかく、着いてみないと実際どうなのかはわからないが…
急ぐに越したことはないからな」
「優姉ちゃん達には伝えたないの?」
「あいつ等はまだ学校だ。
一応携帯の留守電にメッセージは残しておいたが、どちらにしろあと1時間近くは学校だ」
「まぁ俺等だけでなんとかする気持ちで行くぞ!
片桐!お前霊撃は出来るようになったのか?」
「いや…まだ−の属性しか上手く錬れない…」
「…そうか。じゃあガキと俺が頑張るしかないな!」
「すまない…」
「気にするな!お前にはお前にしか出来ないこともあるさ。
それに、その友達との繋がりがあったから救えるかもしれねぇんだろ?」
和馬は下手なりに片桐を励ました。
その気遣いに片桐は小さく笑みで応えた。
3人は白壁目指し全力で走る!
第22話 完 NEXT SIGN…