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第20話 守るために命を賭して

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第20話 守るために命を賭して



「さてと…。じゃあコイツをばら撒くとするか」



"正義(Justice/ジャスティス)"は両手に壷の様な物を抱えている。

どうやら蓋を開けるようだ。


カパッ…



「!!…なんだあれは…」



茂みからその様子を見ているのは菅谷浩介。


目の前に凶悪かつ強力な霊気を放つ二人組み。

さらに一人が開けた壷の中から黒い影が続々と空に舞っていく。


どうやらかなりの霊気を放つ怨霊のようだ。



それを見た菅谷は更なる恐怖を感じていた。

自分でどうにか出来る範疇を大きく上回る事態。


そもそも彼は、これほどの相手が待ち受けているなどとは微塵も思っていなかったのだ。

友人である神谷一騎(かみや いっき)から"禍々しく強い霊気を感じる"…と、連絡をもらい、やってきたにすぎない。



予想外!その一言につきる気持ちだろう。



先日、怨霊が大量に発生したという事件…菅谷は解決に一役買っていた。

力量も然程でもなく、今日の呼び出しも"大体昨日程度の相手だろ"ぐらいの気持ちだったのだ。


上空に飛んでいった霊たちはともかく、目の前の二人は相手にしてはダメだ。

そう悟るには十分すぎる霊気を放っている。



「ふぅ…結構飛んでったな…。

 見ろよ、雷雲みたいだぜ……これでまた街が一つ無くなっちまうな」


「騒ぎがおき始めたら、俺は暴れるぜ!

 ウズウズしてんだよ!!暴れてぇ!!」



少し切なそうな表情を見せる"正義(Justice/ジャスティス)"とは違い、

気分が高揚している"破壊(Destruction/デストラクション)"。



今にも暴れだしそうな雰囲気だ。



「どうする…。

 俺一人出て行った所で何も出来ないぞ…。

 だが、才雅君たちが来てくれれば…………どうにかなるのか?

 むしろ呼んだらやばいかもしれないんじゃないか…?」



その聖才雅はもうすぐそばまで来ていた。



―――

――



不破まりあ、不破彰人、聖才雅は社ヶ崎に到着していた。

ターゲットを探しつつ、走っている最中だ。



「聖先輩…なんかやっばい気を感じないっすか?」


「そうだな…森林公園の方から…嫌な気配を感じる……二人とも急ごう!」



聖才雅はスピードを上げようとしたその時だった。



「待って!あれを見て!!」



不破まりあが上空を指さして叫んだ。



「あれは…雨雲………?」


「いや…怨霊の群れだ……!まずいぞ!あの量…!!

 昨日とは桁違いに多い!」


「どうするんですか!?ここで叩くにしても…あんな上空じゃ手が出ないわ!」



才雅は少し考え込んだ。



「…今飛んでいる霊気より、遥かに強い霊気を森林公園から感じる…。

 何かしらの元凶がそこにいると考えて間違いない…」


「元凶か…昨日の件も含めて、何者かが怨霊を故意に放ってるとしたら、

 そっちの方がほっといたらまずい気がするよ…!聖先輩!叩くならそっちじゃ!」


「確かに元を断たなければ、同じことの繰り返しになるのは眼に見えてるわね…。

 でもそちらに向かえば確実に怨霊にとりこまれる人間が出てくるわ!」



「…」


「でも両方どうにかなんかできないっしょ!

 姉貴…ここは……見捨てるしかないよ…」


「アキトッ!!あんたよくそんな簡単に!!」



まりあは彰人の胸倉を掴んだ。



「簡単じゃないって!!…俺だって助けれるもんなら助けたいんだ…ッ」


「く…!ごめん…」



まりあは胸倉から手を離した。



「二人とも落ち着くんだ…。僕に策がある」


「策!?」



「まりあ君…先日会った旧友…片桐君と言ったか。

 君が昨日昔話ついでに、言ってたが…

 確か彼は僕たちと同じような力を持った友人がいると言ってたね?」


「ええ。私はそう聞きました」



「一つ彼等に協力を頼めないだろうか?

 彼等と協力して、君たちはあの怨霊をどうにかしてほしい」


「それは構わないけど…先輩はどうするんですか…?

 まさか…一人で向かうって言うんじゃ!?」



聖は黙った。



「ダメよ!!あの霊気…いくら先輩が強いといっても、レベルが違う!」


「わかっている…。

 だが、今はそうするほかない…わかってくれ」



聖は強い意志の目で語った。



「……絶対に無理をしないと約束できますか?」


「お、おい姉貴ッ!」


「約束する…大丈夫…僕はまだまだやるべき仕事が沢山ある…。

 死にはしないさ。それに、向こうには菅谷さんもいるし、

 二人でかかればなんとかなるかもしれないさ」



「…わかったわ…」


「いいのかよ!?姉貴!」


「アキト君…心配してくれてありがとう。

 大丈夫…無茶はしないさ」



「んな事言ったって!説得力まるでないっすよ!!」


「はは…。確かにそうかもしれないな。

 でも、いつだって大丈夫だったろ?」



アキトは俯いてしまった。


ポンッ

才雅はアキトの頭に手をあてた。



「!」


「まりあ君を頼んだよ」



「ご武運を…」


「ああ。君たちも無茶はしないでくれよ?

 じゃあ…行ってくる!」



聖は駆け出した。



「行っちゃった…。先輩大丈夫なのか…」


「アキト!私達は私達の仕事をするわよ!急ぎなさいッ!」



まりあとアキトの二人は怨霊の群れを追って駆け出した。



―――

――



タッタッタッタ…



「ん…?誰か走ってくるな…」


「あぁ?…ほんとだぜ…学生服…ガキか」



聖才雅到着―――



「あぁッ!才雅君ッ!…ってなんで一人なんだ!?

 こ、殺されるぞッ!!」



「…」


「おい、何ガンたれてんだ…クソガキ」


「おい!やめとけよ…相手は子供だぞ」



目が逢うや否や、"破壊(Destruction/デストラクション)"が絡みにいく。

それを静止する"正義(Justice/ジャスティス)"。



「あなた達か…。その妙な壷が怪しいな…」


「あぁ!!?なんつった!?」


「落ち着けよ!!…おいお前!コイツは気が立ってる上に、

 短気なんだ…痛い目にあいたくなきゃとっとと消えろ!」



怯むどころか、才雅は大男の"破壊(Destruction/デストラクション)"に近づいた。



「…どけ"正義(Justice/ジャスティス)"!

 こいつやる気満々ってツラしてやがる!ひひひ!美味そうだ!」


「っ…はぁ……俺は止めたからな…小僧…。

 どうなっても俺はしらねぇぞ…」



そう言って"正義(Justice/ジャスティス)"は二人から離れてベンチに腰掛けた。




「一対一かい?」


「当たり前だろ?アリ相手に一人でもおつりがくらぁ!」



「そうか」



聖才雅の身長は177cm…対する"破壊(Destruction/デストラクション)"はゆうに2mを越える巨漢。



「ありゃ勝負にもなんねぇだろ…最近のガキは怖いもの知らずか…」



当然菅谷も同じことを考えていた。

だが、一瞬にしてその思いは杞憂に変わる事となる。



バシッ!!


巨漢が宙を舞った。

そして勢い良く地面に激突した。



「!!」



"正義(Justice/ジャスティス)"は思わず身を乗り出した。




「見掛け倒しかい?」



「今…あいつ…何をした?…あの"破壊(Destruction/デストラクション)"を吹っ飛ばした…だと?

 あの体格差でか……?」



「…てめぇ…!調子に乗るなよ…!!」



"破壊(Destruction/デストラクション)"は起き上がった。

驚きはしたものの、ダメージは無さそうだ。



「僕を余りなめないほうがいいよ…おじさん」


「おじ…!!殺す!!」



巨漢を揺らしながら一直線に突進してくる!

その迫力と来たら、まるで闘牛のようである。



「はっ!」


「速いッ!!」



一瞬で攻撃をかわし、破壊の背後に回った。



「ぬ!?何処いった!?」



どうやら破壊には彼が突然に消えたぐらいにしか見えていないようだ。



「後ろです」


「何!?」



バシッ!


才雅の声に振り返った瞬間!

破壊の顔面に衝撃が走った!


才雅の跳び上段蹴りがもろ入ったのだ。



「ぐぁ…」


「…なるほど…タフさはそのナリの通りと言う訳か…」



破壊の体は揺らぎはしたが、倒れるには至らなかった。

やはり体格差は否めない。



「くっくっく…久しぶりに骨のある奴じゃないか!」


「!…おい!破壊!!ここで"それ"をやる気か!?やめろ!!」



「関係ねぇよ!!!ふっとべッ!!!!!!!」


「!!」



破壊は才雅との距離があるにも関わらず、その巨大な腕を天高くから振り下ろした!



ドッガーーーーーーーンッ!!!


巨大な爆発音!!

そして爆風!辺りを包む砂煙!



まさに"爆発"!




「なんて奴だ…爆弾でも投げたのか…?

 何にしても……才雅君は無事なのか!?

 まともに食らったように見えたけど………」



「おいこの馬鹿野郎!!あれだけ派手な事はやめろって言っただろうが!!」


「そう怒んなよ正義ちゃんよ!…どうせあと数時間で騒ぎは起きるんだ。

 ちょっと早まっただけだろ?」



「ったく…暴れるのは俺等じゃねぇだろうが…!

 とっととズラかるぞ!この騒ぎで野次馬や警察がすぐに駆けつける!」


「警察ぅ!?野次馬ぁ!?…んなもん木っ端微塵にしてやりゃいいじゃねぇか!

 てめぇは甘いんだよ正義!」



「あ…?今なんつったコラ?」



険悪なムードが二人を包み込む。



「何かよくわからないけど…揉めだしたぞ…あの二人…。

 うまくいけば同士討ち…!これは運が向いてきたかもしれないぞ!」



―――

――



その頃…



「…ん?着信…誰だ?はい…片桐」


『亮!大変なの!あなた達の力を借りたい!』



学校を早退して帰宅途中の片桐亮に不破まりあからの着信があった。



「おいおい、急にどうしたんだよ?何かあったのか?」


『詳しいことは会って話す!

 霊気を操れる仲間を連れて、すぐに白壁に来て欲しいの!』



「…つっても、まだ授業中で仲間なんて呼び出せないぞ…。

 !…いや、心当たりはあるか…わかった!すぐにいく!」


『頼んだわよ!』



慌しく戦いの幕は上がった。



第20話 完   NEXT SIGN…

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