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第2話 戦いの序曲

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第2話 戦いの序曲



「全てをお話しましょう…」



優も流華も構えを解いた。



「私は西部・飛鳥から"ある男"を捕らえるためにやってきた…緋土家の従者」


「!…なるほどね…だから私を知ってたわけね」



「ええ。本当なら直々にあなたの御自宅にお邪魔して頼みに行くのが筋ではあったのだけれど…

 ごめんなさい…試させてもらったわ」


「別に気にしてないわ。…で、その"ある男"ってのはあなたの身内かなにかなの?」



言い方はあれだけど…どうでもいい話なら、久木を統治してるウチに一本電話して頼めば済む話…。


はるばる東部・久木まで…その家の従者が直に足を運んでくるってことは…、

つまりは自分の身内の後始末って考えるのが妥当…。



「察しがいいわね。その通り…私の追っている男は緋土家の次期当主…緋土(ひづち) (きょう)

 霊王眼を有する者よ」




霊王眼…!?



「……まさか…」


「?…どうしたの?その顔…何か知っているの?」



優の脳裏には一人の候補が浮かんでいた。



「…その男って…背は170cmぐらいで…髪が肩ぐらいまである…

 とても冷徹な眼をした男…?」


「!…特徴的にはそんな感じね…。

 冷徹な眼っていうのは…主観だからなんとも言えないけど…

 でもあの男の目を例えるなら…まさに冷徹な眼」



「2ヶ月ほど前に会ったのだけれど…"私と同じ眼を持つ者"と名乗っていたわ。

 ふと…それを思い出してね…」


「2ヶ月前…失踪時期は大体3ヶ月前……十分可能性はあるわね…。

 自ら霊王眼を匂わす発言をしたことも踏まえると…十中八九…緋土京…だと思うわ」



あの男…彼を捕まえる…?


あの尋常ならない強さ…思い出したくもないわね…。



「その緋土って男は何かしたの?」


「緋土家に代々封印されし、呪物を持ち出したのだ。

 一つに千人暫首(センジンザンシュ)の呪い刀…紅霙(べにみぞれ)……

 これは斬殺された者の怨念や、それに引き寄せられ集まった数多の怨霊が今でも成仏することなく宿る呪い刀。

 一度封印を解き放つと、周りの霊は怨霊化したり…また霊を引き寄せる効果もあるわ」



一時期、死を告げる刻印を大量に見ていた頃があったけど…まさかその刀のせい…?



「もう一つ…霊魂を封印する封呪の壷…。

 これは呪物ではないのだが、普通の霊魂から手に負えない悪霊や妖魔ですら

 封ずる事の出来る特殊な壷…」


「その二つを持ち出して失踪したわけかぁ…

 でも…それを何に使うつもりなのかな?」



「彼は…人間を滅ぼそうと考えている…。

 詳しくは知らないけど…人間に失望し…

 その感情はやがて怨みに変わり…次第に人類を滅ぼす事を考えるようになっていった…。

 その矢先の失踪だったわ」



随分と勝手な話ではあるわね…。


それにしても…あの男の眼…。

狂気の中にどこか悲しそうな光を宿した眼は…やはり何かあったんだ。


まぁ何も無く滅亡願望なんて沸かないわよね…。



「緋土京が持ち去った、二つの品…

 これがあれば彼自ら手を下す事無く、世界を混沌に導けるかもしれない。

 紅霙で霊を狂気化させ、それに人をとり殺させる…。

 そうやって死ねば、また怨霊を生み…それを封呪の壷で回収…

 新たな地でばら撒き、さらに狂気化…この繰り返しをすれば…人間を死滅に追いやる事が出来るだろうな」


「確かに…今のこの時代…負の感情が渦巻いてるから憑依もたやすいでしょうね…。

 にしても…とんでもない計画だわね…ソレ」



何が何でも阻止しなきゃ…本当に人類滅亡なんてことになりかねない…。

どんな理由があるにしろ、関係の無い人間にはいい迷惑以外のなにものでもない!



「事の重大性に気づいてもらったなら話は早いわ。

 私と共に緋土京の捕獲に力を貸してもらいたい」


「ええ…それはいいけど…。

 でも…あなただけなの?彼を追っているのは」



「いや、素早く事を運べる人間が私だっただけだ。

 時間は有するが、増援は来るから心配しないでほしい」



―――

――



白凪神社―――



「…というわけよ」



優は亜子と茜に事情を全て語った。


亜子は優の姉で家事手伝いをしている。

強い霊気を持ち、祓い師としての腕前も相当のものだ。


茜は優の祖母に当り、失踪中の優の両親に代わりこの家を支えている。

霊王眼を持ち、祓い師としての腕前も亜子以上のものを持つ。



「…お願いします…白凪茜様……力を…」



流華は土下座の形で茜に頼み込んだ。



「流華殿…頭を上げてくだされ。

 我々は元は同じ血を持つ者同士…それほどに改まらずとも、困った時はお互い様じゃ。

 それにこの地に危害が及ぶ可能性があるのであれば、元より黙ってはおれぬさ」


「では…!」



「うむ。私達も協力しよう。

 捜索・捕獲…全力で助力しますぞ」


「ありがとう…ッございます!」



この子も必死なんだな。

でも…いくら能力はあるといってもこんな女の子に先陣を切って捜索させるなんて…。



「しかし…この久木の何処かにおる可能性はあったとしてじゃ…

 ある程度規模を狭めねば、闇雲に探してもしょうがない」



確かにそうね…。



「これは私の予想なのですが…恐らく向こうからコンタクトを取ってくるでしょうね…」


「…外れて欲しい予想じゃな…」


「?…どういうこと?」



「つまり…奴が本格的に動き出せば…確実に死人は出るということよ…」


「ちょ…ッ!?そんなん待ってらんないわよ!…てか!それを阻止しなきゃいけないじゃない!」



優はいきり立って、流華の前に詰め寄った。



「…あなたの気持ちは百も承知…その上で言ってるのよ…可能性として」


「とにかくじゃ…ここで言い争っていても仕方が無い。

 明日から探りを入れてみるさ…私と優であれば、刻印を見ることも出来るし、

 手がかりに繋がるかもしれないし…死に瀕してるならば救えるかもしれん」


「…うん。そうだね…」



今は出来る事をしよう。



しかし、優たちの思惑はすぐに打ち砕かれることになる。



―――

――



翌朝―――



『男性は何か鋭利な刃物でバラバラに殺害されており、

 現在身元を確認すると共に、凶器の判別と探索、目撃情報の聞き込み、犯人の捜索を進めて行くとの事です』



「なによ…これ…聖ヶ丘って…ここじゃない…」



優は朝のニュースを見て愕然とした。


犯人はまだ見つかってない…現在も逃走中…。



「考えたくはないが…昨日の今日じゃ…。

 案外敵は近くにおるのかもしれんのう」



「優…あなたも十分に注意するのよ…。

 緋土京がこの殺人犯であるのか、別なのかはわからないけど、どちらにしよ軽率な行為はやめなさい」



亜子がいつになく真剣に優に言った。



「わかった…」



―――

――



今日も昨日の晩から降り続く雨のようだ。

かなり強く降っている。



「はぁ…なんか天候も合わさって憂鬱な気持ちだわ」



もしかしたらこの辺りに殺人犯が隠れてたり…。

いやいや…考えすぎよ。


でも、細切れにして殺すなんて…とても普通には思えない…。

異常だわ…。



ポンッ



「ぎゃあああああああああああああッ!!」


「な、なんだよ…!?びっくりした…」



優の肩をそっと叩いたのは2年の須藤彰だ。

身長190cmもある長身で、喧嘩もめっぽう強い硬派な不良だ。



「須藤先輩か…驚かせないでくださいよッ!!」


「お、怒るなよ…こっちがびっくりしたっての…。

 どうしたんだよ?らしくないな。俺が近づくのわかんなかったのか?」



って…うわ!?

いつの間にかもう学校ついてるじゃん!?



「い、いえ…何でもないですよ」


「そか?

 あ、そうだ。ニュース見た?

 なんか近くで殺人事件だってよ…物騒だよな」



「見ましたよ!私もその事考えて歩いてたから…

 急に肩叩くからびっくりしたんですよ!」


「あぁ…そういう事か。

 まぁ犯人は捕まってないらしいからな。十分用心しろよ!」



そう言って須藤彰は校舎へ向かっていった。


用心しろ…か。

考え事して隙作ってちゃお話にならないわよね。



「っし!気を引き締めなきゃ!」



優は教室に向かった。



―――

――



教室でもやはり今朝のニュースで持ちきりのようだ。

皆多かれ少なかれ怖がっているようだ。


まぁ無理もない…あんな猟奇的な殺人…しかも犯人は捕まっていないというんだから。

それは不安にもなる。



ちなみに学校側も緊急の集会を開いてその話があった。

どうやら犯人が捕まるまでの間はなるべく集団下校するようにとのことだ。


少なくとも一人には絶対にならないこと!…とのことだ。


―――

――



放課後―――



「白凪さん」


「あ、流華……一ついいかな?」



「流華…な、なに?」


「彼ね、天城勇君…私と同じで霊を感じる事が出来る」



優は勇を流華に紹介した。

やはり今後の事も考えて戦力は多いほうがいいと考えたからだ。



「天城君…なるほど。確かに霊気を見る限り完全に目覚めているようね。

 でも、いいのかしら?」


「え?」



「彼を巻き込む事になるかもしれないのよ?

 彼はあなたの家系の従者でもなんでもないのでしょ?」



確かにそうだ…。

これは簡単に巻き込んでいい話ではないかもしれない。


彼はそもそも一度緋土京とやりあって負けているのだ。



「何の話かはわかりませんし僕は優さんの従者でもない…。

 でも友達です。彼女が困っていて、僕が必要であるならば…なんでも言ってください」


「"死ぬ"」



「え…?」


「死ぬ…かもしれない。下手をすればね。

 それでも首を突っ込めるかしら?」



「突っ込めます。それほどの危険なら尚更です」



勇の眼は本気だった。



「…いいわ。優もそれで後悔ないのよね?」


「…うん。ありがとう…二人とも」



優は全てを勇に伝えた。



第2話 完   NEXT SIGN…

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