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第17話 新たな力

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第17話 新たな力



「きゃあッ!!」



優は青白い宙を浮く手に両足を掴まれ、思い切り引っ張られた。

両足が地を離れ、そのまま勢い良く地面に頭から激突してしまった!



「痛ッ!…っちょ!?」



今度は足を持ったまま中空に上がっていく。

優は完全に逆さま状態だ。



「きゃあ!もうこのド変態!!スカートめくれるだろッ!!!

 変態幽霊!!」



優は必死にめくれるスカートを抑えていた。



「…アハハ…オモシロイコトカンガエタ」


「!…ちょ…え!?」



男は優の足を掴んでいる二つの青白い手以外の、周りに漂う他の手を消した。

そして宙吊りのまま徐々に高度を上げていく。


1m…2m………ついには10m…20m!

ビルにして6階分ほどの高さだ。



「嘘でしょ…!馬鹿な真似はやめてよ…」



こんな高さから地面に叩きつけられて無事で済むわけないじゃない!


怖い…!

ヤバイ…!!



「アハハ…オチロ……!」



男が上を見上げながらそう言うと、優の両足を掴んでいた青白い手を消した。



「!…ちょ…!!」



落下を始める優!

徐々に加速がはじまり、地面に近づく!


優は恐怖のあまり、頭が真っ白になっていた。


そして地面が近づくにつれて、周りの景色がスローモーションのように

ゆっくりと流れていくように感じていた。



あぁ…死ぬんだ……。

こんな所で……私は終わるの…?



「どっせぃッ!!!!!」



ドッーーーン!!




え……ここは天国…?



「く…うう……」


「!!…岡島先輩!!?」



なんと岡島大樹は地面すれすれで優を受け止めたのだ!

彼は夏休み優と共に修行をしたミステリー研究部の一人。


ずんぐりむっくりした体系で、確かに力持ちといったイメージは否めないが、

余りに無茶!自分の腕もタダでは済まないはず!



「白凪さん…大丈夫かい…?」


「な、なんで!?…なんで先輩がここに…!?

 それより腕、大丈夫!?」



岡島大樹の両腕は、紫色に鬱血している。

見るからに痛々しい。



「俺は…いつも皆の足を引っ張ってるから……こんなことでも役に立てたなら…

 よかった…」



ガクガクと足が震えている。

腕だけでなく足腰もやられたようだ。



「先輩は足を引っ張ってなんかないですよ…!

 いつだって皆を明るく楽しい雰囲気にしてきてくれたじゃないですか!

 待っててください…すぐに治療するから!」



優は大樹の両腕に手を当てて集中を始めた。



「白凪さん…俺は大丈夫…!

 それよりアイツをどうにかしてください…新二の奴が押さえ込んでるんですッ!」


「え!?…日下部先輩が!?」



見ると日下部新二が男の青白い手に捕まってジタバタと足掻いている。



「まずい!首を絞められてる!!

 岡島先輩…すみません!必ず治療しますから!」



優は岡島の治療を中断して、男のほうへ駆け出した!



あの…野郎ッ…!!


優は走りながら激しい狐火を生み出していた!

両手ではなく、片手に全ての霊気を集中している!



「くぅぅううらぁぁッ!!ええッッい!!特大火炎玉!!」



怒りもあいまって、今までにない巨大な火炎玉を生み出した!

両手で放つ双炎玉と同じかそれ以上の大火玉!!


優は走りながら振りかぶって、男目掛けて投げた。

男は優に背を向けていたため、攻撃に気づいていないようだ!



ドッガーーーン!!



勢い良く、飛んで行った火炎玉は見事に男にヒットした!

同時に青白い手も消えて、掴まれていた日下部新二も解放されたようだ。



「カハッ…はぁ…はぁ…………助かった…」



地面に手をつき、生を実感する日下部新二。

彼も優と共に修行した一人。


岡島大樹とは同級生かつミス研部員。



「大丈夫ですか?日下部先輩」


「あ、あぁ…助かったようだね…よかった…。

 助けてくれてありがとね」



「それはこっちの台詞です…日下部先輩ありがとうございました。

 岡島先輩にもちゃんとお礼言わなきゃ…。

 それにしても、なんでお二人はまだ学校に…?」


「いや…部長が、なんだか胸騒ぎがするって学校へ向かって走って行っちゃったんですよ。

 で、俺と大樹が追っかけてきたら、白凪さんが空中に上って行ってて…。

 何をしようとするのかはなんとなく予想できたから、各自適材適所で動いたって感じ」



そうだったんだ。



「日下部先輩すみません、私岡島先輩の怪我見なきゃなんで」


「あいよ!」



優は岡島の下に駆け寄った。



「岡島先輩すみません、治療始めますね」


「あ、ああ。ありがとう」



「いえ、命を救ってくれて…本当にありがとうございました…。

 岡島先輩は命の恩人ですよ」


「そ、そんな…照れるじゃないか」



ズズッ…



「!…なんか嫌な気を感じるわね…」



優は先ほど男を吹き飛ばした方向を見てみた。

するとボロボロではあるが、立ち上がっているではないか。


相当の執念か…。



「だけど、もう瀕死ね…。

 岡島先輩、度々すみません…今度こそ終わらせてきます」



優は治療を再び中断し、男の元へ歩み寄っていった。



「ア…アア………ニク…イ……クルシ…イ…」


「…私のせいで、勝手に作られてごめんね…。

 せめて楽にしてあげる…」



優は漆黒の霊気の刃を生み出した。


霊気の乱れもない…ちゃんとした刃だ。



「封呪の刃よ……彷徨える魂に安らぎを…」



バシュッ!!


優は男目掛けて渾身の一振りを放った!

男の体に縦に一閃、黒い切り傷のような物が現れている!


しばらくして、中央から真っ二つに切り離された。

まさに一刀両断!


そのまま男の体は黒い切り傷に飲み込まれていった。

そしてその黒い一閃は優の刃に戻っていった。



「封呪…完了」



優も恐怖を克服した。


ほっと一息つく優を大樹と新二がガッツポーズで出迎えてくれた。

優もそれに笑顔で答えた。



―――

――


その頃…


屋上では夕見司と秋月里子の死闘が繰り広げられていた。




「はぁ……はぁ……」


「どうしたの?あなたその程度?」



司は里子を圧倒していた。

元々里子の強みはフィアーヴィジョンの能力にある。


が、それでも十二分に強大な霊気を身に纏い、決して弱い存在ではない。

身体能力も人並み以上。


それでも司は圧倒的に勝っていた。



「強い…!まさかここまでの実力者だったなんて…。

 夕見司…大した子だわ」



「ポチの電撃鞭かなり効果的ですわね」


「ポチっていうな!"ライト"って名前のほうがよかったもん!」



犬のぬいぐるみがぴょんぴょん跳ねながら答えた。



「あの犬のぬいぐるみ…恐らく強力な霊を封じ込めてあるみたいだけど…。

 属性の霊気まで使えるなんて妖魔か精霊クラスの力ね

 もっとも威力は然程でもないようだけど…。

 故意なのか…力を上手く使いこなせてないのかはわからないけどね…」




「で、お宅まだやるんですの?

 私の電撃鞭の前に手も足も出ないでしょ?」


「ふざけなさいよ……こんなクソ女に…

 私はこんなもんじゃないのよ…恐怖的な存在じゃなきゃ…」



「!…いけない!夕見さん!!狂気化が始まったわ!!

 早く倒して!!」


「ええ!!」



司は鞭を置き、左手を突き出した。

その構えはまるで矢を射るような…弓を構えるポーズだ。



「雷光印よ…力を!」


「むい!」



司の右手の甲に光り輝く陣のような呪印が浮き出た!

犬のぬいぐるみの体が突如光りだした。


まるで電気を放っているようだ。


するとどうだろう、司の右手の指先から光の矢が生まれた。

そして左の指先からバッと一瞬にして光が放たれ、光の弓が完成した。



「雷光の矢を受けろ!!ハッ!!」



司は光の矢を里子目掛けて放った!

稲光を放ちながら勢い良く飛んでいく!



パシッ!!



「!…ち…」



里子は飛んでくる雷光の矢を見もしないで右手で掴んだ。



「間に合わなかった…」


「…殺す…殺す…」



里子は立ち上がった。

と同時に右手に掴んだ雷光の矢をへし折り、消滅させた。



「完全に狂気化したようですわね…

 威圧感に加え…この禍々しい霊気…」


「夕見さん…逃げるわよ!

 勝ち目はないわ!」



流華も立てるまでに回復していた。

立ち上がり様に出口を確認する。



「逃げる必要はないですわよ?鹿子さん…。

 シロ出番よ!」



司がそう叫ぶと、ポシェットからアザラシのぬいぐるみがひょこっと顔を出した。



「ふん!こんな時だけ呼んで!

 そこの小汚らしい犬にでも頼めばよかろう!

 わらわは乗り気じゃないわ!」


「な!誰が小汚いぬらあ!このフワモコあざらしめ!」



ぬいぐるみ同士で暴れだした。



「もう!!何喧嘩してんのよ!!

 相手は向こうの女よ!」



その瞬間だった!



シュッ!


パパパンッ!!!!


突風の如く二人と二匹の間を何かがすり抜けた!

強烈な拳打を浴びせながら。



ドサッ!!


4人は一気に吹き飛ばされ地面に倒れた。




「ぐ…」


「な、なんなのよ…もう……!!」


「ぐぬぅ…なんだ今のは…」


「わらわを殴るとはいい度胸だ!」



流華はすでに立ち上がる力も残っていないようだ。

寝転んだまま、立ち上がらない。


司は今の攻撃がはじめて受けた攻撃になるので、まだまだ余裕のようだ。

ポチとシロも同様のようだ。



「…殺す」


「ちょっと…白目剥いてるんですけど…大丈夫なのかしら彼女。

 ね、鹿子さん。…鹿子さん!?」



流華は気絶はしていないが、もう喋る余力もないほど消耗しているようだ。



「く…!だめか……!シロ!冗談言ってる場合じゃなくなってきてるわよ!」


「ちぃ!わらわを殴りつけた分はお返ししてやるわよ!」



ボンッ!


シロはぬいぐるみの姿から人間の姿に変化した。



「女…覚悟するがよい…。

 全力を持って叩き潰してくれるわ」


「殺す…!」




第17話 完   NEXT SIGN…

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