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第16話 狂気の刃

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第16話 狂気の刃


「…」


老人は腹部を抑えながら倒れる勇を見ていた。

その瞳は何処となく切なさが滲んでいた。



「あっちは終わったようね…くく。

 さぁ息の根を止めるのよ!」



秋月里子は勝負の結末を見てほくそ笑みながら言った。


彼女の生み出した天城勇の恐怖の存在。

彼に意思はある…が、術者の命令は絶対的なもの。


それがたとえ親族の間柄であっても命令には逆らえない。



「許せ…」



老人が木刀を構えたその時だった。


ズズッ…

不穏な気が勇の周りに集まってきた。



「ぬ…!?」



そして、確かに気を失ったはずの勇がゆっくり立ち上がった。



「…」


「只ならぬ気配…なんじゃ…?」



勇は木刀を徐に構えた。

抜刀術の構えだ。



「!」


「確か…こうだったな」



勇は一瞬にして老人の間合いに入り込んでいた!

戦闘開始時、老人が勇の懐に一瞬にして潜り込んだ、あの動きを再現するが如く!



「シッ」



さらに息をつく間もなく、勇は一度肩を突き、体を浮かせ、

そこに天城流剣術・鳳仙花を放った!


ドドドドドド!!



「ガハアッ!!」


老人は数メートル吹き飛んだ。



「な、なんと…!」


体を見ると怪我はなく、老人が勇に見せたままに技を返されたのだ。



「…ふん…。ジジィ……てめぇは殺すぞ」


「!…なんという邪悪で…刺さるような殺気じゃ…

 これは本当に勇なのか…」



「さっきお前が見せてた"アレ"…試してみるか…」


ユラッ…


勇が脱力したかのようにダラッと体を揺らした瞬間!

なんと8人もの姿に分裂した!


実際には8人ではなく、ただそう見える錯覚を起こしているに過ぎないが…。

それでも先ほど老人がやったそれよりも人数が多い。



「ふん…こんなものか…」


「な……なんじゃ…なんじゃお前は…」



「う・る・せぇ…よ!!」



勇は全力で木刀を振った。

振った…が、それを目視出来た人間はその場にいなかった。



「!!?」


「気づけよ…ばーか」



なんと老人の利き手である右手が木刀を持ったまま地べたに落ちている!

勇が距離の離れた場所から振ったあの一振りで…腕を切り離したのだ。



「あぁあ…ああ!!」


「おいおい。偽者が何痛がってんだよ。

 次は何処がいい?足か?首か?くく…」



いかに里子の能力で生み出した仮初の命とはいえ、リアルに血を流している。

見た目には…まさに生きているのだ。



「な…なんなのアイツ…いきなり…"変わった"?…

 目つき…口調…まるで別人じゃない…」



敵である里子も勇の豹変振りに驚きを隠せないでいた。



「…く!私は"恐怖(Fear/フィアー)"よ…!

 なんで恐怖の象徴である私が恐怖しなくちゃなんないのよ!!」


「…ふ」



勇は一度里子の方を見ると、ニヤリと笑みを浮かべた。

だが、何をするでもなく、すぐさま視線を老人に戻すと、ゆっくり彼に近づいていった。



「せめてもの情けだ。一瞬で消してやる」


「…勇…狂気の刃に活路はない…いずれ滅びの道を」



パシュッ!



「あ…ゆ…」


「うるせぇよ…カスが」



老人の頭は宙を舞った。

そして地面に落下する前に胴体と共に姿を消した。

流れ出た血も同時に。



「…く…!」



里子は身構えた。


だが、彼女に脅威が迫ることはなかった。

勇は急に膝を折り、その場に倒れ込んだのだ。



「な…なんなんだ……こいつ…

(気を失った振りをしているのか…?近づいたら一瞬で…死!?

 ダメだ…コイツにはうかつに近づかないほうがいい…!

 もう一人の…あの長髪の女がどうなったか見に行こう!)」



里子は流華が戦っている方へ早歩きで向かった。



―――

――



「…はぁ……はぁ…」


「…」



流華は苦戦していた。

相手の黒髪の顔のない女…。


白一色の着物に身を包み顔には黒い靄が掛かっていて、本当に顔がないように見える。

肌は蒼白で、露出している手を見るとやせ細っているのがよくわかる。


爪は長く、研ぎ澄まされている。



この女、あの恰好では考えられないほどの俊敏さを持っているため、

流華は常に霊力で全身の筋力を強化し、対応にあたっていた。


しかし、それでようやく互角。

霊気の操作に長けてはいる流華ではあったが、肉体強化+霊撃を即座に打ち込むのは

今の乱れた精神状態では難しいようだ。



「怖くない…あんなものに屈するか!…むしろこれは仇を討つチャンス…。

 決して実現できなかった…私の手で葬り去るチャンスが巡ってきたのよ!

 家族全員を殺したこいつを…私の手で…!!」



流華は10年ほど前にこの女の霊に家族を目の前で皆殺しにされる経緯を持つ。

救ったのは緋土京の父親だった…。


以後、彼に引き取られ…我が子のようにとまで行かなくとも、よくして貰い…育てられてきた。

従者として仕えるのもその恩があるからである。



「はぁぁぁぁぁッ!!」



流華は覚悟を決めたようだ。

一か八かの賭け…自らに放つ補助効果の陣。


霊気が異様に高まり、淡い赤の光を放つ。

髪の毛も黒から赤へと変貌を遂げる。


この状態は2分程度の維持が限度。

それを越えると無力化する。


単なる人間…もしくはそれ以下になる。


故に、本当にどうしようもない場合を除き使うべき手段ではない。

つまり、そこまで切羽詰った状況といえる。


確かに現状のまま、どちらもダメージを食らわない状態を維持していれば、

時間は稼げるだろうが、いつか体力と霊力を使い果たし…"死"が待つだけ。


それよりも一か八か倒せる方を選択したのは正しいといえる。



「いくぞッ!!!」



ビュッ!!

流華は一足飛びに女の懐へ飛び込んだ。

というより、そのまま体当たりをした!


女は吹き飛び仰向けに転んだ。

そこへ上空からの襲撃!


流華は女の腹部を両足で踏みつけた!



コンクリートの床が割れるほどの威力!



「…」



女は声を発さないのでダメージがあるのか今ひとつ判り辛いが、確かな効果はあるようだ。


流華は続いて横たわる女を全力で蹴り上げた。

女の力とは思えないほどの威力!


女は空を舞った!



「ハァァァァァッ!!!」



流華の合わせた両手に霊気が集中していく。



「ふっとべぇえええッ!!!」


声に合わせて両手を女目掛けて突き出した!

その瞬間光の波動が勢い良く噴出した!!



ドーーーンッ!!!!


女はかわす間もなく光の波動を全身に浴びた。



「はぁッ…!!はぁ…ッ!!」



2分を経たずして、流華の霊力は底をついた。

纏っていた強力な霊気は静まり、髪も黒色に戻った。



「…終わった…」


「終わってないわよ?」



「!!」



突然の背後からの声に振り返った!

その瞬間流華に激しい痛みが走った。



「ざぁんねん♪」



里子の上段蹴りが振り向いた瞬間にヒットした。

流華は勢い良く吹き飛んで行った。



「あんたたちをナメてたのは認めるわ。

 まさか恐怖を克服するなんてね。

 でも、どうやらここまでみたいね」


「く…」



里子は倒れる流華のお腹に片足を乗せて言った。



「足をどける力も残ってないか。

 じゃあ、そろそろ楽になる?」



里子は流華の首にそっと両手をかけた。



「ばぁいばぁい…」



里子が力を入れようとしたその瞬間だった。


バチバチッ!!



強烈な痛みが里子を襲った!



「きゃああ!!」



余りのことに里子はその場で転げまわった。



「ゆ…優……?」



朦朧とする意識の中、うつろな目で前に立つ誰かにそう尋ねた。



「優じゃなくてごめんなさい」


「あなたは…!?」



目の前に現れたのは夕見司だった。



「大丈夫?…優は?天城君もいるの?」


「わからない…別々に戦っていたから…」



司はゆっくり彼女を起こして傷を見た。



「傷自体は浅いわ。そこで安静にしていて…すぐに終わらせますわ」


「…誰だ…お前……」



里子が立ち上がった。



「あら、結構本気で打ち込んだのに、割と平気みたいね」


「誰だって聞いてるんだよ!!この巨乳女ァアアッ!!」



「女のヒステリーは見苦しいわね。

 それにその台詞は罵倒?褒め言葉?…あなたは小さいわね」


「く……!!このふざけた女め…ぶっ殺してやる!!」



いきり立つ里子。

禍々しい霊気が彼女を包む。



「狂気化なんてさせませんわ…行くわよ"ポチ"」


「むぅ!ボクは犬じゃないってのに!!」



司の背後からヒョコヒョコと現れたのは犬のぬいぐるみだ。



「犬…の…ぬいぐるみ?…司さん…?」


「ふふふ…さぁ、行きましょうか」



「このメス豚がぁぁあッ!ふざけやがって!!」



―――

――



その頃…



「ふぅ…ここなら思い切り暴れられるわね!」


「…ソレガドウシタ…コレダケノテカズ…ニゲラレナイヨ…」



優は校庭までなんとか逃げ切っていた。

8つの青白い手から襲われつつも、ギリギリで逃げ切ったのだ。


これもひとえに夏休みの修行のおかげと言っていい。



「ようは捕まる前に倒しちゃえばいいんでしょ」



もう霊気の乱れはおさまったのよ!

倒させて貰う!


あれだけ怖かったのに、今はさほどでもない。


やれる!




でも待てよ…霊王眼の能力に、霊の能力を奪うというものがある。

私の狐火も、一度狐の魂を体内に入れて手に入れたんだっけ。


あいつの青白い手…。

正直不気味だけど、単純に能力としてみたら…。

結構いい能力なんじゃない!?



どうしよう…。

ていうか、そもそもどうやって霊の能力を奪うんだろ?

前みたいに体内に取り込まなきゃ無理なのかな?


色んな意味でリスキーね…。

上の皆も気がかりだし…。

ここは諦めるか…。



「スキダラケダヨ」


「はっ!しまっ!」



優の悪い癖が出てしまった。

考え事をしていると周りが見えなくなる!


優は青白い手に両足を捕まれてしまった!



第16話 完   NEXT SIGN…

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