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第14話 恐怖との戦い

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第14話 恐怖との戦い



キンコンカーンコーーン…


ようやく今日一日の授業が終わった。


ダラダラ居残らず、続々と下校するクラスメイト。

流石に今朝のニュースの事もあり、皆不安なんだろう。



「よしっと…二人とも早速病院にいきましょ!」


「ええ」



3人は教室を出た。

その時だった。



「しーらなーぎさん♪」



聞きなれない声に優は振り返った。

見知らぬ少女が立っている。



「誰…?天城君の知り合い?」


「いえ…白凪さんって呼んでいたから優さんの知り合いなんじゃ?」



私こんな子知らないわよ?



「はじめまして…白凪優さん…。

 あなたに少しお話があるのだけど」



ズズ…!



『!!』



三人は一瞬にして彼女の発する禍々しい霊気に反応した。



「クス…話…聞いてくれますよね?」



ニヤリと笑う少女。



「く…!どうする……どうすれば…。

 流華…どう思う?」


「罠…の可能性は否めないけど…。

 でもこれは逆に考えればチャンスかもしれないわ。

 手がかりが向こうからやってきたんですからね」



確かにこの子を倒して口を割らせれば、大きなメリットになる。

罠と見るか、チャンスと見るか…。


だったらポジティブにチャンスと考えたほうがいいわね。



「いいわ…聞こうじゃない!」


「ふん…選択肢なんて最初からそれしかないんだから。

 馬鹿みたいに考え込まないでよね」



「なんですって!?」


「断ればどうなるか…わかんないわけ?

 だっさー。ほらみて、まだ学生はいっぱいいるんだょー?

 ここ…戦場にしたい?」



こいつ…!



「わかったら着いて来て。

 屋上…人は入れないように細工しておいたから」



3人は女子生徒について屋上へと向かった。



―――

――



「…ふう…いい風」



少女とは間合いを取る。

周りにも警戒を怠らない。



「そんな力まなくてもいいよ。

 やる時はやるって言ってあげるから。

 リラーックス…リラックス…ね?」


「あなた…何者なの?」



「1-E…秋月里子……別名"恐怖(Fear/フィアー)"…

 あなた達の敵にあたる存在よ」


「流華…学校に仕掛けた人型に反応したのは…多分この子ね」


「恐らくは…。それにしてもまさか本当に敵がこんな近くにいたとはね…」



「んで、話に移るんだけどさ…。

 "復讐者(Avenger/アヴェンジャー)"をやったのあんた等の誰?」


「アヴェンジャー…?」



何のことだっけ。



「目つきの悪い、ちょっと変態入ってるガキンチョよ。

 ガキンチョっていっても、私より年上だけど。やったのあんた等じゃないの?」


「優…多分、公園で倒したあいつの事だわ」



ああ…なるほど。



「なんだ。やっぱ知ってるんじゃん。

 私、学内ではあなた達見張ってたけど外の行動はサボって見てなかったのよねー。

 ふーん…でさ、誰がやったわけ?」


「私がやった!…倒すべき敵だから…やった!」



優は威勢良く正直に名乗り出た。



「うん。まぁ…当然っちゃ当然よね。

 私も別にあの子の敵討ちってわけじゃないんだけどさ。

 知り合って間もないしね。

 でも、一応仲良くしてもらったこともあって…黙ってられないわけ」



里子を纏う霊気が強くなった。

かなりの威圧感だ。



「勝手な事言わないで…。

 散々人を傷つけ…命を奪ってきておいて…。

 私こそ黙ってられないわ!

 あなたもここで討つ!」



相対する様に優の霊気も強くなった。



「黙れ…お前たちに何がわかるッ!!」



ブワッ!!

里子の霊気が更に膨れ上がった。


優たちは気圧されて一歩下がった。



「話は終わりだ…!

 お前がアイツを討ったのであれば…今度は私がお前を討つッ!」


「相手はしてやる…!でも討たれるわけにはいかないッ!」


「そうね…それにしても3人相手に勝てるつもりでいるの?

 私達をなめすぎよ…あなた」


「お、女の子一人相手に3人がかりはちょっと卑怯な気がしますが…。

 せめて刀は使わないでおきます」



優たち3人は構えた。

里子は構えずに不敵な笑みを浮かべている。



「なめてるのが…どっちか……。

 すぐに判らせてやるよ…!くくく…」



里子はゆっくりと両手を前に突き出した。



「!…皆油断しないでね!

 相手は一人でも…相当の使い手よ!」


「あの禍々しい霊気を見れば判るわ…。

 さっきは挑発で3人相手になめすぎって言ったけど…。

 裏を返せば、それだけ腕に自信があるってことだわ」


「女の子相手に戦うのは気が引けますが…。

 そんな余裕を持てる相手ではなさそうですね…」



「ブツブツ…」


里子は両手を突き出したまま、何もしてこない。

一人でブツブツ何かを呟いているようだ。



「ハァァァッ!!」


「…」



優は霊気を高め、両手に狐火を纏った。


流華は精神を集中している。



「優…私は補助に徹するから、あなたは先頭きって戦って。

 天城君は私を守ることに全力を注いで。

 攻撃は考えなくていい!」


「わかりました!僕もそのほうがありがたいです」



向こうが何を仕掛けてくるかわからない所に、不用意に飛び込むのは危険よね。

死を告げる刻印が皆に見えてないから…今のところは問題ないと思うけど…。



「くっくっく…ようし……"できた"わ」



なに?


出来た…?



「さぁ…あなた達の"恐怖"に歪む顔が楽しみだわ…」



ズズズ…


里子の突き出した両手辺りに黒い靄のようなものが蠢き始めた。

それは徐々に膨らんでいき、人間大の大きさまでに膨らんだ。


それが今度は分裂を初め…3つの塊が出来た。



「何…あれ…?」


「わからない…でも、凄まじい霊気を放っているわ…。

 あんなものは初めて見る…」


「!…見てください!様子がおかしいです!」



勇の言うとおり、黒い靄は徐々に形作り始めている。


そして黒い靄が徐々に消えて…中から何かが姿を現した。



『!!』



三人はほぼ同時に驚愕の表情をした。



「なんで……うそ…」


「馬鹿なッ……何故お前が…!?」


「…どういう…事…?」



優の目前にあった黒い靄から姿を現したのは、笑顔の表情をする仮面を被った、

異様に腕が長い人間のような者だった。


明らかに人間ではない…何か。


優には見覚えがあるようだ。



流華の面前の靄から現れたのは白装束に身を包んだ顔のない女性…。

髪の毛はロングで、綺麗な黒髪だ。



そして勇の面前の靄から現れたのは厳しい表情の老人だった。

手には木刀を握り締めている。



三人ともそれぞれに見覚えがあるようだ。

最初は驚きの表情をしていた三人だったが、徐々に驚きから恐怖に変わりつつあった。



「…く…あなた…一体何をしたの!?」


「ふふ…特別に教えてあげる。

 私の能力"恐怖映像(フィアーヴィジョン)"…術をかける相手の記憶から最も恐怖に感じたものを

 現実のように表現する能力…。

 下手な幻術と思わないほうがいいわよ?…彼等は今、確実にここに存在している。

 能力も同じくね…

(能力は同じ…それは嘘。恐怖が大きければ大きいほど、相手の能力は過大表現されるのが、

 この能力の素晴しいところ。たとえば小さなもの…ゴキブリなんかに最大の恐怖を感じた者が

 フィアーヴィジョンで実体化すると、巨大なゴキブリが出現する…。

 恐怖の記憶により、さらなる恐怖が相手を襲う)」



里子の能力は霊による幻覚作用の強化版と言えるもので、かなり特異なもの。



「私は手を出すのは最後にしてあげる。

 まずは各々、目の前の敵に集中することね」



手を出さないのではなく、手が出せないのが本当の所だった。

フィアーヴィジョンは術者の集中力を使うほかに、多大の霊気・霊力を消費する。


一度に三人に術を使い、強力な霊気を纏っているといっても消耗は激しい。

今は霊気が乱れてしまっているのだ。




「…ヤァ…アソボウ…サァ…」



優の恐怖から生まれた謎の仮面の男。

その長い腕を優に向けて差し出した。



「い、いや……こないで……こないでよ!」



恐怖におののき、後ずさりする優。



「優!どうしたの!?」


「優さん!!」



優は一目散に逃げ出した。



「余所見をしていていいの?あなた達」



シュッ!

里子がそう言った瞬間に、顔のない白装束の女が流華に襲い掛かった。

見た目からは想像もつかない、俊敏さ。

そしてキレのある手刀。



「!…く!」



流華は攻撃を咄嗟にかわしたが頬に一筋の切り傷が滲んだ。

どうやら鋭い爪を持っているようだ。



「鹿子さん!大丈夫ですか!?」


「いつから、その様に隙だらけになった?」



勇の背後に老人が立っている!



「!」


勇が気づいた時にはすでに老人の木刀による一打が勇の腹部をなぎ払っていた。



「ガハッ!!」



勇は態勢を崩し、その場に片足を着いてしまった。



「立て…勇……稽古をつけてやる…」


「…お祖父さん…」



―――

――



「はぁ…はぁ…ッ」



優はパニックになっていた。

頭が真っ白になり、ただ逃げるのに精一杯になっていた。



「…あれ?」


我に返った頃には屋上ではなく理科室にいた。



「あいつ…なんで……!

 大丈夫よ…これは幻…いるわけない!

 もうあいつはいないの…大丈夫」


「アソボウヨ」



!!!


優が振り返ると先ほどの仮面の男が立っていた。



「くッ…うわあああ!!!」


バキッ!


優は思わず全力で仮面の男の顔面を殴りつけた。

勢い良く吹っ飛び、黒板に激突した。



「はぁ…はぁッ…!!」


「…イタイ…ナァ……」



男は立ち上がった。



「く…!」



落ち着くのよ…!

これはあの子の術!


あいつじゃないの!そう見えてるだけ!

惑わされちゃダメよ私!



「ニゲナイデネ…」



そう言って仮面の男はゆっくり両手を突き出した。



「!!」



すると目の前に青白く光る奴の手が体から離れて、優目掛けて飛んで来るではないか!


優はそれを上手く避けた。



「…アレ…?」



なるほど…あれで首を絞められたわけか…。

"あの頃"はまるでアイツの攻撃が見えなかったけど、今は見える…。


大丈夫、怖くなんかない…!



「オカシイナァ…」


「はぁぁぁああッ!!」



優は再び霊気を高め始めた!



第14話 完   NEXT SIGN…

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