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第12話 まるで夜空を照らす満天の星空

SIGN 二章 - SeVeN's DoA -


第12話 まるで夜空を照らす満天の星空



9月5日(土) PM8:20―――

とある地下室―――



緋土京を中心に、6人が集まってきていた。



「皆集まったようだね…力は存分に試したかい?」


「…一人いないようだが?」



正義(Justice/ジャスティス)が質問した。



「"復讐者(Avenger/アヴェンジャー)"…小守大成君は敵に敗れ…

 現在入院中だ」


「おいおい!まさか…警察にマークされてんじゃねぇだろうな!?」



大男が怒鳴り散らした。



「"破壊(Destruction/デストラクション)"…落ち着きなさい…。

 マークされたとしても、彼は我々を売る事はないでしょう。

 そうですよね?…ボス」



女性のような美しい顔立ちの青年が大男をなだめつつ言った。



「"暴君(Tyrant/タイラント)"の言うとおりさ。

 彼は絶望を知った人間だ。今更何かに縋るなんてありえないさ。

 万が一口を割ったとしても、別に構わないさ…返り討ちにしてやる」



コツコツ…

少女が前に出てきた。



「ボスの言っていた"白凪家"…言われたようにマークは続けていますが、

 正直それほど危惧するような存在には思えなかったわ」


「"恐怖(Fear/フィアー)"…確かに奴等は俺達からしてみれば小さな存在かもしれん。

 しかし、侮るのはいけないな…"復讐者(Avenger/アヴェンジャー)"のように油断して負けてもつまらんだろう?」



少女は黙った。



「ボス…計画について」


「そうだったな…。

 明後日の9月7日(月)…深夜0時を持って集めた怨霊を街に解き放つ。

 君たちは"派手"に暴れてくれていい。

 人間達の恐怖や怒り…そういった負の感情が相乗効果で怨霊を育ててくれる。

 ちなみに、"生ける者も、霊魂も生死を問わず喰らい尽くせ"この命は一度忘れてくれ…。

 霊魂は吸収しないでくれ。君たちが強くなる事は間違いないが、今でも十分に戦力としては確立しているからね。

 より一層広めるためにも、数は減らしたくないのだ。…いいね?」



皆はそれぞれ頷いた。



「よろしい。この腐った世の中に我々が終焉の幕を下ろそう…

 そこから我々が作る新世界がはじまるのだ!」


『おーーー!!』



周りは一気に盛り上がっていた。

一人の男を除いて…。



「…」



―――

――



「超越(Transcendence/トランセンデンス)…ちょっといいかい?」



解散後、大フロアにて立食パーティをしている中、

一人でいる超越に話しかけたのは暴君(Tyrant/タイラント)だった。



「なんだい?…君から声をかけてくるなんて珍しいね」


「そうかな…。超越…君は明後日のパーティに乗り気じゃないのかい?」



「…いや。そうじゃない…ボスの言う新世界には興味がないと思ってね…。

 私は結局何処まで行っても人間は愚者であると思っている…。

 だから…本当なら全て滅びるべきなんだ」


「…愚者…か。

 確かにそうだね…この世界で人間は偉くなりすぎた…。

 全てを人間優先に考え、自然を当然のように壊し……弱者を蝕む。

 "他種族だから別にいい"という勝手な理屈でね…。

 人間にそれと同じようなことをすれば、群集は怒り…裁きを求め、その他では罪悪感さえ薄いものだ。

 こうやって僕等が食べている肉や魚…糧にしている者達へ同じような感情は持ち得ない」



「暴君は難しく考えているみたいだが…私にはもっと漠然敵に、

 "滅ぶべき種"だと思っているだけさ…」



そう言って超越は他の場所へ行ってしまった。



「超越…」




―――

――



その頃…


白凪家では…



「…と言う訳で…取り逃がしてしもうたわ」



茜は優と亜子に今日の出来事を話して聞かせていた。



「お祖母ちゃんでも完全に倒せない相手なんて…」


「優、そうじゃないわ。

 戦った場所が悪かったのよ。お祖母ちゃんは場所を考えて強力な技は使わなかった…

 そういうことよね?」


「まぁ…それもあるが、予想以上に強いという事じゃな」



私が倒したあの子よりも強かったのかな…。



「敵は今の所…緋土京を除き、二人ないし三人か。

 そのうち一人は優たちが倒した…」


「なんで二人じゃなくて三人なの?他にいたっけ?」


「お祖母ちゃんを連れ去ったっていう男のことを入れて三人かも…という話よ。

 二人かもっていうのは男を連れ去ったのが緋土京本人だった場合ね」



なるほど。

さすがお姉ちゃんね…。



「しかし、もし敵がまだ大勢いるのであれば…正直辛いかもしれんな」


「そうね…私や優…流華ちゃんや勇君だけじゃ…ちょっときついかも」


「他の四家に声をかけてみたらどうかな?」



困った時はお互い様だもん。

助けてくれると思いたいわ…何しろ五家のうちの一つが首謀者なわけだしね…。



「実はもう声はかけてあるんじゃ。

 西部・飛鳥は緋土家…まぁこちらは大本が大本なだけに…出来る限り早急に対応に来てくれるそうじゃ」


「そういえば流華も言ってたわね」



「あとは北部・奥里の九鬼家からは快諾してもらったよ…葵殿と和馬と由良葉が向かってくれるそうじゃ」


「そうなんだ!?またあの二人に会えるんだね」



石動和馬、神楽由良葉は夏休みに一緒に修行した仲だ。

戦力としても十分に期待できる。


次期当主の九鬼葵さんはうちのお姉ちゃんと確か同い年の22歳。

会ったことはないけど、どんな人なんだろう。



「うむ…しかし、他の二つの家からは協力を拒まれた…。

 理由はあるのじゃろうが…まぁ仕方ない」


「むう!ほんと非協力的ね!」



―――

――



それからあっという間に1日は過ぎ去り…


9月7日(月) AM0:00…


とあるビルの屋上に緋土京と6人は立っていた。



「さぁ…パーティの幕開けだよ…解き放て!

 悪しき彷徨える魂たちよ!!」



緋土京は封呪の壷の蓋を開け、中に閉じ込めていた魂たちを解放した!



「綺麗…。まるで夜空を照らす満天の星空ね」



赤黒い光が天を舞う。


漆黒の闇に光るそれは…ある種幻想的な光景を作り出している。



「さぁ…君たちもいいよ…!

 存分に暴れてくるといい!!

 行けッ!SeVeN's DoA!人間達に恐怖と絶望を味合わせるのだ!!

 あっはっはっは!!」



緋土の合図と共に各自散っていった。



それぞれが派手に暴れまわっている。

見かけたそばから人を殺し…物を破壊する!



優たちは、そんな状態になっているとも知らず…心地よい眠りについていた。


そして夜は明ける…。



―――

――



「…何よこれ…」



優たちは朝のニュースを見て愕然とした。

久木の都心部・神那(かんな)がまるで戦争でもあったかのように焼け野原と化している…。

映像越しにも、その悲惨さは伝わってきた。



「酷いの…まるで戦争跡地じゃ…」


「許せない…ッ!」



こんな…こんな!!

優は握りこぶしを奮わせた。



「ニュースによれば、暴れまわっていた人間は何十、何百ではないそうじゃ…。

 つまり…恐れていた予想が現実にものになってしまったわけじゃ…」



茜は頭を抱えて俯いてしまった。


怨霊に取り憑かれた人間達の暴走…それがさらなる狂気を生み、怨霊を強くする…。

さらに大人しかった霊もそれに触発され狂気化…。


巻き添えを食った人間が死ねばそれも怨霊となる…。


とまらない負の悪循環。



「私達…結局止められなかったのね…」


「…優もお祖母ちゃんもしっかりしなさいよ!

 確かに私達は止めれなかった!何百人の命を救えなかった!

 …でも、これから救える命だってあるはずでしょ!

 ここで立ち止まっても、犠牲者が増える一方だわ!!」



普段大人しい亜子の一喝。


二人は頭を上げた。



「亜子の言う通りじゃな…。

 救えなかったことを悔やむより…出来る事をするんじゃ。

 これから起ころうとしている悲劇をなんとしても止めるんじゃ!」


「そう…だよね!

 私達がくじけて何もしないでいたら、また同じように悲しい思いをする人が増えることになるんだもんね…。

 やろう…出来る限りのことを!」



ピンポーン!



誰かが来たようだ。

誰かは大よそ検討はつく。



優は玄関に向かった。



ガチャ



「やっぱ流華か」


「その顔は今朝のニュース見たようね」



やはりその事か。



「ええ。見たわ…酷い有様だった…。

 だからこそ…あんな悲劇を再び起こさせちゃいけない!」


「そうよ…何がなんでも阻止しなくちゃ…!

 現地に行かなきゃなんとも言えないけど…恐らく街を壊滅させたあと、霊魂を回収し…

 次の街へ向かったはずよ」



なるほど…そうやって次々と…!

許せない…許せないわ!緋土京!



「優…流華殿……お前たちは学校に行きなさい。

 幸い神那とは距離もあるから、こちらは普段通りじゃろ」


「でも!こんな時に!」


「そうです!私達も現地に!」



優と流華は納得いかないようだ。

心情としてはいてもたってもいられないのだろう。



「向こうは私と亜子が行く。

 おぬし等は学生の本分を全うしなさい」


「お祖母ちゃん…」



「それに、万が一私等がいない時に、この聖ヶ丘に攻め入られたら…誰かが守らねばなるまい?

 優…流華殿…頼んだぞ」



茜は二人の肩をぎゅっと握った。



「…わかったわ…。

 でも、もし敵を見つけたらすぐに呼んでね…」


「すぐに駆けつけますから」


「うむ。それはお互いにの」




優と流華は学校へ向かっていった。



「亜子!すぐに向かうぞ」


「ええ」



こうして緋土京の計画は本格的に動き出した。

この狂気の計画を食い止めることは出来るのか…。



―――

――



その頃…



「なんだ…てめぇ等…!」



登校途中の片桐亮は多くの不良に囲まれていた。

目つきが尋常ではない。



ここでも戦いが幕を開けようとしていた。




第12話 完   NEXT SIGN…

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