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5話 異能
視界の真ん中に線が一本走っている。
自分の意思で長さと奥行きを変えられるそれは、太刀筋であるとすぐに理解できた。
対象は今にも飛び掛からんとするレッサー・ガウル。
「断て」
右手をかざせば、線をなぞるように切断が走った。
斬撃を飛ばしたのではなく、見えない刃を振り下ろしたような感覚。
獣の身体は上下に分かれ、崩れるように地面に血を撒き散らした。
消費魔力量0。
範囲は視界全て。
対象の硬度は問わない。
ただ一切を断つだけという簡素なもの。
その異能に制限は無かった。