24話 剣の二人
剣の道に終わりはない。
とは、嘘ではないだろうか。
今、俺の目の前で振るわれているこれは、ある種の終わりではないのだろうか?
「はッ……!イカれた速さだな!?」
速さというか、『疾さ』。
最速最短を駆け抜ける速度以上の剣技は、図抜けた俺の俊敏性であってもかわすので精一杯だった。
さっき降ってきた刀の一振りを拝借して応戦するも近寄ることさえ叶わない。
絶大無比の剣技とステータスの暴力。
体躯の差もあり、劣勢と言うよりかは一方的と表現した方が正確だろう。
気を抜けば終わる。一つ間違えれば腕や足が飛ぶ。
例え一撃入れられたとしても多分ダメージと言えるものにはならない。
負けイベントそのものの状況。
それなのに、何故。
「………………なんでこんなに、楽しいんだよ……!」
受け切れなかった一撃が鉄刀を砕き、俺の胸を衝撃が突き抜ける。
痛い、苦しい、辛い。
それなのに、逃げたいともやめたいとも思えない。
全力が通用しない。
剣しかなかった俺が心血を注いできた筈の技のどれもがこいつの下位互換だ。
それがたまらなく悔しくて、
どうしようもないほど嬉しい。
「……ッ!ならこれは!?」
一体何パターン用意されているのだろうかと問い詰めたくなるほどに、首無し武者の動きは掴み所がなく、流麗で、合理的だった。
俺が足捌きを変えたところで直ぐ様対応し間合いを詰め、誘えば乗らず、追えば応ずる。
ああ、懐かしい。
父さんに稽古を付けてもらっていた時がこうだった。
道場で六つ上の兄弟子に勝ち浮かれていた俺を、師範であった父が直々に打ちのめしてくれた思い出。
何も通用しなく泣きそうな程悔しいのに、未だ辿り着けぬ高みがあるというだけで現金にも胸は高鳴りまた剣を取る。
幾度となく挑み続けている間に体捌きは鋭く、太刀は重くなり届かなかったその芯を捉える。
「まだまだァ!」
挑めば挑むほどに熱は昂り、身を削るほどに研がれていく。
焦がれて妬む度にその動きを追いかけて、いつしか地面からは雪が姿を消すほどに俺と『ノーブル・スノウ』は立ち回り続けていた。
あれだけあった地面に突き立つ刀は段々と数を減らしている。
ただ、折れるペースも遅くなっている。
今何時だ? どうでもいいか。
地球が終わるまで斬り結んでいたい。
「……そこッ!!」
数多のフェイントと幾多の駆け引きの末にやっともぎ取った隙。
この極限状態で逃すわけもなく、渾身の突きが首無し武者の腹を貫く。
その巨体は大きく仰け反りはしたものの、直ぐ様返す太刀で反撃の姿勢を見せられる。
やはり大したダメージは無いが、それでも身を焦がすほどの達成感が俺に無限の活力をくれる。
出来損ないだとか、失敗作だとか。
今だけは忘れられる。
こいつの前でそんなみっともないことは言ってられない。
「今斬ってやるよ、師匠」
お互い死んだ身。恨みっこなしだ。