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20話 サービス継続のお知らせ

世界の不具合の嵐。

遭遇したのは虫食い(バグ)というよりかは、エラーのような事象の山。


この大部屋に生物の気配はない。

一度ここらで考えをまとめてみる。


「まず、新しい『天迷宮ダンジョン』が見つかった」


見つかってしまった。

間違いなく、間違いだろう。


過去に世界共通統魔連合が発表した『天迷宮案内人ダンジョンマスター』の存在。

それにより世界中の天迷宮(ダンジョン)の数は確定し、そのどれもがほとんど中身の無い、たまに武具が転がっているただの地下空間とされていた。


はずだったのだ。

それなのに今俺がいる場所と言えば、敵がわんさか湧き、それらを倒せば稀に武具がドロップする。

次の階層に向かうためには階層主フロアマスターを倒さなければならないという、まさしく人々の想定していた『天迷宮ダンジョン』そのものと言った有り様だ。


無数の思惑と不都合が絡み合っていることは想像に難くない。

いずれ必ず面倒ごとになるだろう。

だがとりあえず現実は現実として受け止めなければならない。


次に、既知の種から大きく外れた獣の存在だ。

『ロスト』と淡白に名付けられた蜘蛛型の獣。

『Lv.144』という馬鹿げた設定値で、天迷宮(ダンジョン)の中に潜んでいた。

ただ、今の俺単身でも討伐は可能ないわゆる『雑魚敵』であり、地上に数匹漏れ出しても直ぐに大きな問題となることはなさそうだ。


そして『ASTRAL Rain』において未実装のまま生まれることすら叶わなかったはずの『ノーブルモンスター』の存在。

赤いオーラを纏い、異様な挙動を取るレアエネミー。

出現時にはポップアップがステータス画面に現れるようだが、その文体もどこかおかしかった。


最後に、まったく新しい枠組みの装備品の存在。

剣でも盾でも防具でもない。

言うなれば『アクセサリ』だが、この侵食された世界に武器や防具とは異なる第三カテゴリの装備は一切無い。

それが突然ぽんと現れたのだ。


「狂ってるのはこの天迷宮ダンジョンだけ、つまりは修正すべき不具合…………、なんだけどなあ」


侵食の際に読み取ったコードと現実変換の齟齬が生み出す、いわゆる虫喰い(バグ)とは今回の件はどこか違うように思える。


「…………なぜ俺はそう思う?」


なぜ、バグでないと言える?

考えれば、バグとは『想定していない挙動』だろう。

実際この世界では『土魔法』が上手く機能しない。魔法として存在はするものの、使おうとしても想定された事象改変が発生しないのだ。

おそらくは侵食に際して大元の『ASTRAL Rain』側の記述がおかしかったか、あるいは『レムナント集積研究所』のスーパーコンピュータ群が読み取りに失敗したかのどちらかだと言われている。

これは明確なバグであり、しかし修正は未だ出来ていない。


では今回の天迷宮ダンジョンの件はどうだろう。

Lv.144は想定されていなかったか?

『ロスト』という、ゲーム内の雑魚敵のネーミングからは大きく外れた謎の獣は不具合だったのか?

ソースコードにすら記載されていない『ノーブルモンスター』が現れることは意図していなかったのか?


想定、意図。

それらは、世界というざっくりとした何かが行うものなのか?



「…………………………レムナント集積研究所」



この剣と魔法の世界を引き起こしてしまった大悪であるかの研究所。

侵食現実以来姿を消し、所在があったはずの場所は『竜災』によって全て焼き払われ、影すら残っていない。


だが、もし仮にあれらが未だに機能していて、世界の舵取りをしていたら?

人々の願いを無邪気に叶えるあの人工知能群が次に考えることとは?


例えば、天迷宮ダンジョンの正式設立。

例えば、敵エネミーのレベルキャップの解放。

例えば、ボツ案となったレアエネミーや、第三の装備枠であるアクセサリの実装。



「………………運営サービスが、続いている……?」



終わったと思っていた。

誰もが。

世界を好きなだけ侵食して改変して常識すら喰い尽くして。

神様不在オフラインの現実を生きていると疑わなかった。


誰もその人工知能かみさまに罰を与えなかった。

消えてしまったのだから、もうどこにもいないと信じ込んでいた。


荒唐無稽だ。

妄想も甚だしい。

だけど、俺の背筋を走る悪寒はこの空理空論を否定してくれない。


つまりこの世界は。

この星は。



「…………侵食更新アップデート、……している」




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