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15話 攻略開始

『???の天迷宮ダンジョン』-1階。


黒く巨大な螺旋階段を降りきると、

レッサー・ガウルが噴出していた。

金色に輝く巨大な地面花から止めどなく溢れる獣という光景。


「……いや、おかしいだろ」


こんな現象聞いたことがない。

天迷宮ダンジョン』は既に世界中で攻略されきったものであり、その内部で何が待ち受けているのかは完全に把握されている。

昔、興味本意で『天迷宮辞書』を買い読みふけったことのある俺は、それを読んで酷くがっかりした思い出がある。


『天迷宮』はほとんどが機能していない。


それがまず冒頭の記述だった。

侵食現実に伴ってAIが再現した『ASTRAL Rain』の『天迷宮ダンジョン』は、何かしらの齟齬の発生で本来現れるべきものが生成されていない、とのことだ。


ごく稀に剣や防具が転がっている、ただの地下洞。

それが俺の知る『天迷宮ダンジョン』。


だが、これはなんだ?

眼前では謎の巨大花が獣を一秒ペースで無限に生み出し、-1階特有の高い天井には蜘蛛のような獣が這っている。

大広間には奥に抜ける道があり、迷宮そのものと言った風だ。


「…………とりあえず斬るか」


獣の源泉たるこの花は放っておけない。

夕断ゆうだち】を展開し生まれたレッサー・ガウルごと切り刻む。


階層フロアマスターの討伐を確認しました』


突如そんな抑揚のないアナウンスが迷宮に響く。

なるほど、各階層の主を倒すことで次に進めるのか。


「………………そんなシステム、あったか?」


もぬけの殻の空洞を歩くだけ。

それが『天迷宮ダンジョン』攻略の全てのはずだ。


赤銅色の壁を見渡せば電気回路のような金色のラインが脈動している。

ふと巨大花がいた場所を見ると花弁は粒子となり、そこに剣が転がっていた。


報酬なんて気前の良い物が存在するのか。

はたまた罠か。

考えるよりも先にとりあえず手に取ってみる。


『【B】トコハの曲剣』


俺のステータス画面にそんなポップアップが出てくる。

天迷宮ダンジョン』で稀に入手できる武具にはこうしてランクが設定してあり、味気のない迷宮の唯一の楽しみとされていた。

【】内のアルファベットは『ランク』であり、C、B、A、S、SSと言った具合に性能が上昇していくが、ただでさえ既存の迷宮では武具は手に入りにくく、Cランクですら貴重とされる。


ゆえに狩人の多くは現代兵器に頼る者も少なくない。

実際Cランク辺りの性能なら今の技術なら簡単に作れるだろう。

ただ、獣の多くは鉄を受け付けない。

どういうわけか魔力エーテリウムと鉄の間には相互半減機能が存在し、お互いを相殺しあう傾向にある。


この『トコハの曲剣』もやはり鉄ではない。

凝縮された魔力エーテリウムのような構造体。


「しかし、いきなりBランクとは気前がいいな」


Aランクの装備を誰かが入手すればその噂は狩人界隈で賑わい、Sランクともなればその入手と性能の開示を世界に向けてしなければならないほどだ。


曲剣はあまり得意じゃないが、【夕断ゆうだち】にばかり頼るのもよくない。

戴いたものは存分に使わせてもらおう。


「って、おわっ!?」


考え事ばかりしていた俺の目の前。

天井から振ってきた体高一メートルはある巨大蜘蛛。

鋏角を振り上げ威嚇してる辺りしっかり敵と見なされている。


待てよ。




「……………………蜘蛛型の獣なんて存在したか?」





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