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最弱なわたしと最強の俺  作者: ぴよーこ
8/27

ましろの家

不良たちの襲撃から無事にましろの家についた俺は彼女がごはんを作るということで、調理の合間に借りた古着へ着替えることにした。




ましろにはラフなものを所望し、黒い無地のTシャツに、花柄付き短パンと言った動きやすい服を出してくれたのでそれを身に着けた。



着替え終わったのでダイニングルームに腰を下ろすと、『トントントン』とキッチンのほうからは包丁の奏でる音が聞こえてきた。




(胸の辺りが少しきついです…)



借り物だと、丈が合わなかったり、ウエストがきつかったりと自分に合わせて買った衣服ではないので、サイズに問題が生じることがある。



今回は丈、ウエストには何の問題もなかったけど、胸の辺りがしっくりこない。




胸元の生地を少しつまみ引っ張ってみると、服と胸の隙間がまったくできなかった。



高校生になる前、胸のサイズを測ったときはCカップだったのに、今では少しブラがきつくなってきたので、Dカップはありそうだ。



今後、採寸して適切なブラを買わなければならないだろう。




ドンドンドンドンッ



胸のことについて考えていると、包丁音がダイニングルームまで響き渡る。



明らかに切っているというよりは叩いているのではないかと俺がキッチンを覗き込むと、ましろが血走った目つきで調理していた。





どうやら胸の話は禁句だったらしい





というのも、ましろの胸はまな板に等しい。



ドスッドスッドス



(こ、これ以上は考えてはいけません…)



命の危険を感じたので、俺は速やかに話題を見繕った。




「ま、ましろさん。何の料理を作っているのですか?」



「血祭風ひよりステーキよ」



「へ、へぇ~。それは、タノシミデス…」



そんな料理、あってはいけません。



◇◇



「残さず食べなさい」



ダイニングテーブルに並べられた料理はハンバーグステーキをメインとしたものだった。



血祭風ひよりステーキじゃなくてほっとした。そもそもひよりステーキだった場合、俺はここにはいなかっただろう。



ただ、山盛りのご飯とサラダ。ハンバーグステーキも2枚ある。




「あ、あの…。これは…?」



明らかに量が多いことを目で訴えた。




「あら?胸が大きい人ってそれだけ食べているってことよね?」



どうやら先ほどの胸の話(話してはいない)を引きずっているらしい。



「それを言ったら、ましろさんがいっぱい食べないと胸が大きくならな…」



「残したら許さないわよ」



「……」



最後まで俺の発言に耳を傾けずに言葉でねじ伏せる彼女。ナイフを持ったましろの姿を恐れた俺は黙って目の前にあるハンバーグステーキを切って口にする。



「おいしいです…」


肉を噛めば噛むほど肉汁が口内に広がり、濃厚なうま味によってごはんが進む。



「それはよかったわ」


俺が料理を口にしたことで、ましろも食べ始めた。




「そういえば、ご両親はいつ帰ってくるんですか?」


「今日もどうせ帰ってこないわよ」



何か事情があるみたいで、複雑な表情をしているましろにこれ以上聞くのをやめた。




「そ、そういえば、ましろさんは『パチモン』やっていますか?」



「やっているけれど、まだチュートリアルを終えたところよ」



「じゃあ食事の後一緒にやりましょう!わたしの最強パーティーみせてあげますっ!」


「わかったわ。その前にちゃんと全部食べてね」



と言われましても、先ほどからごはんを口にしていてお腹が膨れてきたのに対して、料理は一向に減らない。



「うぅ…。お腹いっぱいです。ましろさん。少し食べませんか?」


涙目になった俺は、ましろに救いの手を求めると、彼女はにこやかな笑顔で立ち去った。



◇◇



「もう限界です…。ぐふっ」


結局俺は出された料理を残さず食べた。この小さな体でよくあれだけの量を食べられたと思う。頑張った。えらいぞひより。




「おかわりもあるわよ?」



「許してください…」


追い打ちをかけようとしてきたましろに俺は、滑り込み土下座で回避した。




「それより、『パチモン』やりましょう!わたしのパーティーはこれです」



スマホでアプリを立ち上げ、自分のパーティーを見せた。リーダーには『神崎ひより』が設定されており、SRキャラ1体と残り全Rキャラで構成している。



「わたしはこれよ」



ましろが画面をこちらに突き出してきたので、見てみると、全キャラSSRで構成されたガッチガチの課金プレイヤーだった。



「こ、これは…」



「私、機械の心も読めるの。どのタイミングでガチャを引けばいいか教えてくれるから11連ガチャ全てSSRキャラが出るのよ」



「え、そんなことまでわかるんですか?すごいです!」


「ええ。もちろん嘘に決まっているわ」



嘘かい。本当にできると思ってしまったわ。



「じゃあ、やっぱり課金して出したのですか?」



「そうよ」



排出率が渋くて有名な『パチモン』。そんなゲームで全SSRキャラのパーティーを組んでいる人は限られているだろう。



「ガチャはストレス発散方法に最適だわ。黒人くろともやってみたら?」


「い、いえ…。わたしは遠慮しておきます」



お金が勿体ないので断った。これから先、超能力者として仕事を受けるとそれなりの報酬が入るので金銭感覚が狂わないように気を付けよう。誰かさんみたいにね。



「あら?黒人くろと。あなた、11連ガチャできるじゃない」

「ふぇ?」


みると、11連ガチャができるだけのポイントが貯まっていた。ああ、そういえば電車のときに引こうとしていたけど、衝撃の事件(自分のキャラがSSRだったこと)によって引くのを忘れていた。



「引かないなら私が引いちゃうわよ?」



「だ、だめです。自分で引きます」



ましろの手が伸びてきたので俺は急いで『11連ガチャをする』をタップした。





「そのタイミングは微妙ね」



「え…?」



彼女の一言が気掛かりだけど、そんなオカルト俺は信じないぞ…。


11連ガチャをタップしたことによって、次々とキャラが出されていく。




「あ~。またRキャラです…」



10連すべてがRキャラだった。



(お願い!出て!!)



そして、残り1個に希望を託す。




「いけええええ~です~」





…最後に出たのはRキャラだった。爆死した俺はムカっときたので、ゲームに文句を言う。



「…こういうゲームの11連ガチャって普通SR一体確定とかじゃないんですか?そもそも11連でSSRなんて出るわけないじゃないですか。まったく、排出率渋すぎなんですよ」



ぷんすか怒る俺に、ましろはSSRキャラの画面を見せて自慢してくる。



「ほ~ら。黒人くろと。課金すればSSRキャラが手に入るわよ~」



顔にスマホを押し付けてくるので鬱陶しい。




「わ、わたしは無課金プレイヤーなんです!課金なんてしませんからっ!」



「あら。そう。残念ね。あ、18時になったわ。ガチャ引かないと」



18時になって何が変わるのか。ガチャのラインナップを見てみると、そこには『今ならSSR3倍、UR10倍、SR100倍(18時~19時まで)』と書かれていた。



「まさか、ましろさんこのことを知っていて…」


「だから言ったでしょ?『そのタイミングは微妙ね』って」



「そ、そういう意味だったんですかああああ!?」



そもそも、『11連ボタン』を押した後に声を掛けたよな?



「ほら。黒人くろと今ならSRキャラもこんなに出るわよ」



彼女の画面には11連でSRキャラが二体ほど出ていた。



「今なら…100倍…」


先ほどの無念を晴らすためにも、課金しなければいけない。そんな気がした。





俺は鞄から、可愛らしい財布(妹にもらった)を取り出し、所持金を確認する。


「一万三千円…。むむむ…」


一人暮らしにいくらかかるのかまだわからないので、無駄遣いはしたくない。親からの仕送りがあるとはいえ、今後はちょっとしたバイトなどもしていかなければやっていけないだろう。



「お金に困っているのなら学校でバイトすればいいのよ」




悩んでいる俺に、ましろは学校で魔物の討伐依頼のバイトを受けられることを教えてくれた。


ましろの話を聞くと、超能力者高校の生徒は優秀な人材が多い。人手不足の政府は、即戦力になる生徒たちに目をつけて、比較的危険度の低い依頼を受けてもらうことでなんとか成り立っているらしい。



ただ、依頼を受けられるのは上級生と1年生の1クラスのみだ。



1年生の2クラス、3クラスではスキルと経験が足りないため禁止となっている。その代わりに、パーティーを組む場合に限り、上級生か1年生の1クラスの人が1人でもいるならば、依頼を受けることができるらしい。





バイトのことを視野に入れれば少額ならば課金してもいいかもしれない。でも…



(やめておきましょう)



俺は課金することを諦めた。たしかに、強いキャラや可愛いキャラを使ってゲームをしたい気持ちはある。でも、無課金でやるのもそれはそれで楽しいのだ。





「ましろさん。わたしはやっぱり、無課金プレイヤーでやっていきます」



「ちょっと待って。今それどころじゃないの。110000連したのにSSRでないわ」



爆死している彼女の横で俺は、まだ時間が掛かりそうだなと思い、ガチャするためにクエストへ挑戦することにした。




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