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最弱なわたしと最強の俺  作者: ぴよーこ
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ましろの秘密

(神田さんにお礼を言わないと…)


HRホームルームが終わったので荷物を持って席を離れ、神田さんのいる最前列へ移動する。彼女は俺が近寄るのを察知したのか、体をこちらに向け、ジト目でじっと見てきた。




「神田さん。先ほどの自己紹介のときは助かりました。寝ていたので何をしていいのかわからなくて…。だから、ありがとうございます」


神田さんにとってはたまたまの出来事だったかもしれないけど、それで俺は救われたのだからお礼は言っておきたい。


「別にお礼を言われるほどのことでもないわ。あ、ちょうどよかった。あなたに聞きたいことがあるの。少し時間いい?」


「えっと。はい」



聞きたいこととは何だろうか。神田さんは朝からずっと俺のことを警戒していたし、もしかして昔に会ったことがあるとか…?とはいえ、警戒されるようなことを今まで誰かにしたことはないと思う。



「こっちに来て」



俺が頷くと神田さんが先導して歩き始めたので彼女の後ろを付いていく。周りに人がいなくなったところで彼女は歩くのをやめ、こちらに振り返った。



「それで話って…?」





「あなたって二重人格なの?」


「え…?」



俺そんな素振りしたっけ。怒ったり泣いたり喜怒哀楽が顔に出やすいから二重人格だと思われたとか?



「言い方が悪かったわ。まず私の能力から説明するべきよね」



神田さんは吸い込んだ息を大きく吐く。




「私。人の心が読めるの」



「え。それって…」



「あなた、心の中では『俺』と言っているでしょ?心は男みたいなのに外見や口調は女の子だったから疑問に思ったの」



「…」



まさか心が読める超能力者がいるとは思わなかった。ただ、今思えば、超能力高校の1クラスだし変わった能力を持つクラスメイトがいてもおかしくはない。





このままだとまずい。男だということが登校初日でバレる…。




「え?男だったの!?」



「あ!いや………。はい…」



心が読める能力ならば、何を言っても無駄だろう。俺は素直に頷くことにした。



「まさか男だったなんてね。驚いた」



全く表情が変わっていない。どうやら神田さんはポーカーフェイスらしい。


「無表情で悪かったわね」


口を噤んだことでも返事をしてくる。本当に彼女は人の心を読み取ることができるらしい。




「あの。このことは誰にも言わないでください…」


「もちろん。誰にも言わないけれど、条件があるわ」


「条件…ですか?」


お金を貸してって話なら3000円までなら貸せるけどそれ以上は厳しい。



「私の、友達になってほしいの」


「友達ですか?」



友達になってからお金を借りる。友達割引作戦か!



「さっきから何言っているの?」


「言ってはいないです」


「同じことよ」



「友達になるのはいいですけど。神田さんは、私が気持ち悪くないんですか?男で女の恰好をして学校に行っているって…」




「私のほうが気持ち悪い存在でしょ…」



俺の「気持ち悪い」という言葉に反応したのか、顔には出なかったが、神田さんが暗い顔をしたことだけは伝わり、ポロリと口走った。




「えっと。何が気持ち悪いんですか?」


言っている意味が分からなかったので直接本人に聞いてみる。



「私。人の心を読めるのよ?相手の話したくないことも秘密のことも誰が好きで誰を嫌っているか、人間関係も手に取るようにわかるわ。そのせいで私は今まで友達ができたことないの…。表情には出さないで心の奥底で悪態をつく子もいたわ。私が心を読めるって知った途端に離れていく人も多かった。だから、心が読めるってことを秘密にして友達の輪に入ったことがあるのだけど、本当の友達にはなれなかった」



彼女は一旦一息つき、話を続けた。



「でも、あなたは私が心を読めるって知っても気味悪く思っていないの」



「それは… わたしが男だと知られたことで頭いっぱいだったからじゃ…」



「ううん。私はあなたの心の真意まで見抜くことができるわ。だから、私は思ったの。この人となら本当の友達になれるかもしれないって。でもこんな脅迫まがいのやり方で友達になったとしても友達とは言えないわよね…。この話は忘れて頂戴。あなたが男だということは誰にも言わないから」


神田さんはその場から立ち去ろうとしていたので、


「待ってください」


俺は引き留めた。彼女の後姿が寂しそうだったから?違うな。彼女と話してみて、俺も神田ましろという存在が気になったからだ。つまり、






「神田さん。わたしもあなたと友達になりたいです」





自分の想いを彼女に伝えた。心を読める彼女ならば口にしなくてもわかるかもしれない。


でも、心でなく言葉で彼女にハッキリと伝えたかった。





俺の告白に、ポーカーフェイスだった彼女の顔は泣き崩れた。




「本当に…。本当に友達になってくれるのかしら?」


「もちろんです」



「私。面倒くさい女よ?あなたが何を考えているのかすぐにわかっちゃうし、秘密のことも全部知っちゃう」


「よく言うじゃないですか。包み隠さず話せる人が本当の友達だって」




「後悔してもしらないからね…」


「上等です」





「ふふ、あなたって本当に変わっているわね」



「わたしをそこらの男たちと一緒にしないでください」



「たしかに。こんなかわいい男の子。見かけないわね」



彼女の言葉に二人して笑う。




「友達になったのだからあなたっていうのもおかしいわよね?」


「じゃあわたしはましろさんって呼びますね」

「私はひよりって呼ぶわ。でもひよりって偽名よね?」



偽名といえば偽名だ。



「わたしの本当の名前は…」

黒人くろとね。二人だけの時はそう呼ぶわ」


本当の名前を告げようとすると、先に言われてしまった。


家族以外から本名を呼ばれるのが久しぶりで、なんだかくすぐったさがある。





「そういえば、黒人くろとって本当に女の子に見えるわよね。胸なんか本物と区別がつかないわ」



ましろさんは俺の胸に手を伸ばし、俺の胸を揉んだ。



「ちょ。待ってくだ…。はぅ…」


「感触も本物そっくりだわ。黒人くろとの女装クオリティって高いのね」


「こ…れは。女装…なんかじゃ。あぅ。はぁはぁ。ないです!!」


「あ、そういうことね」


ましろさんは俺の思考を読み取ったのか、胸から手を離した。


「ごめんなさい。私の能力も欠点があって、話題に触れないと読み取れないのよ。まさか黒人くろとが超能力で女になっているなんて知らなかったの。てっきり女装しているものだと思ったわ」


「だ、大丈夫です。勘違いは誰にでもあることですから…」


俺は妙な感覚から解放され、深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「じゃあ、黒人くろとの本当の姿は別ってことよね?見せてもらうことはできないかしら?」


「少しだけなら大丈夫ですけど…」


俺はましろさんに男の姿を見せることにした。


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