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最弱なわたしと最強の俺  作者: ぴよーこ
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わたしの能力

「…」






先ほどまで騒がしかった屋上は静まり返り、風の音だけがその場を支配していた。











「許さねえ…」



静寂な屋上でポツリとつぶやく俺。




めぐみんを殺した二階堂だけは…絶対に許さない!!




今の俺なら誰にも負ける気がしない。力が湧いてくる。例えS級能力者と戦うことになったとしても負けることはないだろう。



でも、なんだろう。憎めば憎むほど力が増す代わりに、怒りの根源となる出来事が思い出せなくなるような…。



『ちょっとあなた。感情を抑えなさいよ!!』



どこからか可愛らしい女の子の声が聞こえた。周りにはめぐみんと気絶している男3人しかいない。そういえば、ゆかりがいつの間にか消えていた。ああ、そうか。俺が『ひより』になったことで召喚が解けてしまったのか。



幻聴か…?ついにストレスで頭がおかしくなったみたいだ。




『幻聴じゃないわよ。あなたの心の中にわたしがいるんだから見えなくて当然でしょ?』



「心の中…?」



『それより、あなたの外見見てみなさいよ』



俺は言われた通り、学生服のポケットから手鏡を出し自分の姿を確認する。



「なんだこれは…」



金髪碧眼な美少女が、黒髪赤眼になっていた。



『これ以上感情を抑えないと封印が解けてしまうわ』



「封印?」



何の事だかさっぱりわからない俺は、聞き返す。



『もしかして、自分が魔王の生まれ変わりだって知らないんじゃないでしょうね?』



「え?」


俺が魔王の生まれ変わり…?ということは、俺って魔物の転生体なのかよ。なんか嫌だな…。


『魔物っていうよりは魔族ね。知能を持った見た目が人間とほとんど変わらない魔物をわたしたちの時代では魔族と呼んでいたわ』



「魔族…」



『もしもこのまま憎しみに囚われて魔王の力が目覚めてしまったら今のあなたでは力のコントロールができなくて自我を失うわよ。いいの?』



そういえばさっき、憎むほど大切な何かを失うような感覚があった。まさか、自我を失う前兆だったのか…?


「すーはー」


俺は深呼吸をして、冷静さを取り戻す。すると、先ほどまで黒くなっていた髪が元の金髪に戻っていた。




『少しは落ち着いた?あ、紹介が遅れたわね。わたしの名前はリリー。聖女って言えば誰だかわかるかしら?』




「え、聖女ですか…?」



『金髪碧眼美聖女といったらこのリリーちゃんなわけだけど、もしかして現世で有名じゃないの?美少女だって称えられていない?』



「有名ではありますが、外見は特に…」




『はぁ?噓でしょう?あのへっぽこ勇者でさえ私の虜になったっていうのに…。まあ、勇者にはこれっぽっちも興味なかったけど。わたしが好きなのは…龍人りゅうとだけなんだから!勘違いしないでよね!!』



いや…。初耳だから勘違いしようがないです…。それに誰だよ。龍人りゅうとって…。



『何言っているの?龍人りゅうとこそが魔王なのに』



つまり、俺は龍人りゅうとの生まれ変わりというわけか。



「わたしが魔王の生まれ変わりだとして、何でリリーさんはわたしの心の中に潜んでいるんですか?」



『潜んでいるって…。なんだか嫌な言い方ね。わたしのおかげで今まで力が暴走しなくてすんだのだから感謝しなさいよね。まったく』



怒ったリリーはそのまま話を続けた。



『元々、わたしと龍人りゅうとは仲良しだったのよ。でもある日、龍人りゅうとは力を暴走させてしまったわ。あなたみたいに大切な人が亡くなったときにね。それで、止めに入ったわたしは聖女の力を最大限に引き出すため、わたし自身の魂を対価に龍人りゅうとを封印したの。その後何が起きたかまでは知らないけど、どうやら、わたしの魂ごと龍人りゅうとと共にあなたへ転生したってところかしらね。そう考えるとあなたはわたしの生まれ変わりでもあるのかもね』



「聖女と魔王の生まれ変わり…」



実感が湧かなくてこの話が夢なのか現実なのか、今の俺には判断できなかった。



『そんなことより、早くしないとあの子が手遅れになるけどいいの?』


「あの子…?」



『そこに倒れている女の子がいるじゃない。助けなくていいの?』



「ああ。めぐみんですか…。めぐみんはもう…。わたしが無力で何もできなかったせいでいなくなってしまいました。うぅ…」



視界が滲み今にも大泣きしそうな俺にリリーは告げる。



『だーかーら!死んだそのめぐみんって子を生き返らせないでいいのかって聞いているのよ!!』



「え…?」



めぐみんを生き返らせる…?そんなことができるのか…?



『亡くなってから一時間前後ならまだ間に合うわ』



「ど、どうすればいいんですか?」



もしもめぐみんを生き返らせることができるなら、俺は何だってする…!



『何って、聖女の力を使えばいいじゃない』



「え。だからどうやって…」



『まさか、聖女の力の使い方もわからないわけ!?』



と言われましても、そもそも聖女の生まれ変わりだってことすら今知ったわけだし…。



『鳥だってどうやって飛べばいいか自然とわかるものでしょ?能力者も同じでどうやって能力を使えばいいかわかるものなのに…。あなた、自分がなんの能力を使えるか知っているの?』



「わたしにできるのは、蓄積チャージ解放リリースだけです。蓄積チャージで男からこの姿になる代わりに力を貯めることができて、解放リリースしたときに貯めた力を扱えるといった感じです」



『それ、間違っているわよ?』


「え?」



蓄積チャージは他人の力を奪うことができるけどコントロールが難しくて自分の意思とは関係なく力を奪ってしまうケースがあるわ。解放リリースは奪った力を使うことが出来るけど、暴走しやすい。龍人りゅうとが使っていた能力と同じね』



「そんな能力だったんですか…?あれ?でも、それだと何で女になっちゃうんですか?」



『それは、わたしのせいね。わたしが封印したのは龍人りゅうと蓄積チャージなの。蓄積チャージができなきゃ、解放リリースは使えないでしょ?だから、あなたが蓄積チャージを使うと私の封印が作動して、能力を押さえ込もうと女の子になってしまうのかもしれないわ。憶測だけど』



「そうなんですか…?じゃ、じゃあ、解放リリースで男に戻った時、力が溢れてくるのはなぜでしょうか?」



蓄積(チャージ)を封印しているのになんでかしら?あ、もしかしたらあなたの心の中にいる龍人りゅうとの力を蓄積チャージしているのかも?わたしが施した封印は他人から力を奪わないことだから。でも、龍人はあなたでもあるのだから対象外なのかもね』



「話している内容が難しくて頭が痛くなってきました…。最後に、どうやったら聖女の力を使うことができるんですか?」



今はこれが一番重要な情報だ。



『わたしに言われても…。うーん。封印のせいなのかしら?それとも…』



「それなら、蓄積チャージの封印を解いたらいいんじゃ?女にならずに済むし、聖女の力も使えるし…」



『あなたバカなの?人の話聞いていた?そんなことをすれば力が暴走するって言っているでしょうが!龍人りゅうとでさえ感情に飲まれて暴走したっていうのに、封印付きでなんとかなっているあなたじゃまず無理ね』



「は、はい…。うぅ…。じゃあ、どうすれば聖女の力を使えるんですかぁ…」



めぐみんを生き返らせたい気持ちでいっぱいの俺は安易な案を挙げてしまい、リリーに怒られた。



『ん-。そうね。そもそも、あなたは聖女の力を覚醒できていないみたいね。ちょっと苦しいかもしれないけど、無理やり覚醒させるわ。それっ』



「うあ。すごいです。あれ…?息が…」



リリーの掛け声とともに、俺の周りに光が集まりだす。最初は暖かかったが次第に息苦しくなり、その場に倒れた。


『もうあなたでも、力の使い方がわかるんじゃない?』


「はい…」



俺は起き上がりめぐみんの元へ行く。めぐみん。天国にいるところ悪いけど、俺のわがままで生き返らせることを許してくれ…。



でも、本当に俺なんかがめぐみんのことを復活させられるのだろうか。F級の俺にそんな力はないんじゃ…。



『あなたはわたしの生まれ変わりなんだから自信を持ちなさい。大丈夫よ』



俺はこくりと頷き、めぐみんに向かって手を向ける。



「『リジェネーション』」



発動と共に聖なる光がめぐみんを包み込んだ。地面に飛び散った血がみるみるうちに彼女の元に戻っていき、傷が塞がる。服だけは流石にボロボロのままだけど。



「ひよりん…。むにゃむにゃ…」



寝息を立てるめぐみん。






どうやら成功したみたいだ。本当によかった。








めぐみん。








おかえり。


ひより「それなら、蓄積チャージの封印を解いたらいいんじゃ?女にならずに済むし、聖女の力も使えるし…」



リリー『あなたバカなの?人の話聞いていた?そんなことをすれば『TS要素』がなくなるって言っているでしょうが!』


ひより「あ、はい…」


※誤字報告ありがとうございます。

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