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最弱なわたしと最強の俺  作者: ぴよーこ
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登校初日

今日は高校の入学式。


女での生活は結構慣れた。力を蓄えるために中学は編入して女として登校し、結構力は蓄えられたが、高校生活では男に戻ることは禁止にしておこう。


蓄えた力を使うのはあくまで犯罪者に使う。この力を使えば高校の成績はいいかもしれないが犯罪者と対面したときに力が発揮されなかったら意味がない。


高校では女姿時の解放リリースのみにする。これなら低燃費で済む。



寝起きの俺はぼさぼさになった髪をクシで梳かし、髪を整えたあと、髪を縛り、ツインテールにした。


中学の友達に「ツインテールも似合うね」と言われてから何気なくツインテールにすることが多くなった。




ごはんを食べて歯を磨く。いつも鏡の前で歯を磨くのだが、鏡に映る美少女が歯を磨いていることにはもう慣れた。


磨き終わった俺は、クローゼットから俺がこれから通う超能力高校の制服を取り出し、身に着ける。その際に、下着やブラジャーも付け替えるのだが、もうナレタ。


―ナレって恐ろしいなあ。




鏡の前に立ち、問題がないか確認する。少し顔が赤いのは気のせいだろう。


特に問題がなかったので、学校用のカバンに昨日準備しておいた持ち物を入れていく。今日は入学式のため午前で終わってしまうのでお弁当はない。



(さて、準備もできたし、行くか!!)



自分のやる気を出させ、ドアノブに手をかける。



(新しい学校生活。楽しみだな。でも…。いじめにあったらどうしよう。忘れ物してないかな?家の鍵閉め忘れてないかな?あ、今家にいたんだった。ちゃんと鍵閉めたか確認してから家でなきゃね。友達できるかな?ソロボッチだったらどうしよう…。毎日便所飯はやだよぉ。でも、今日は午前だけだからその心配はしなくて大丈夫だよね?いじめられさえしなければ大丈夫だよね?ふぇえ。憂鬱だよぉ。学校やめたいよぉ…)



女になることは慣れたけど、このネガティブ思考どうにかならないのかなって思う。いや、まじでちょっとしたことでもすぐ「どうしよ。どうしよ」ってなるのは私生活に支障をきたすのでやめてもらいたい。



行ってきますと、誰もいないのにいう。高校から1人暮らしすることを家族に言い、妹には反対されたのだが、押し切った。



家の鍵が閉まっていることを確認して、駅へ向かう。高校は家から電車に乗って徒歩も含めて、大体30分ぐらいかかる。


実家からだと2時間はかかるけど、今住んでいる家は亡くなった祖父が住んでいた家で、高校に近かったのでそこに住むことにしたのだ。



向かう途中、人の気配すら感じられなかったのだが、駅につく頃には、同じ学生や社会人、老人といった年齢層疎らな人たちが見受けられる。ただ、全員がこちらを見ている。



(ひぃい。どこにいても注目の的だよぉ)



女になってからはどこにいっても目線を感じるようになった。まあ、絶世の美少女がいたら誰でも目に留まるよね。うん。


視線は気にしてもしょうがないので無視して電車に乗る。満席だったのでつり革に手をつかもうとすると、


「よかったらどうぞ」



30歳ぐらいのスーツをきた小太りの男性が席を譲ってくれた。断るのも申し訳ないので、


「あ、ありがとうございます…」



お礼を言って座る。女になってからは席を譲ってくれる人が増えた。こちらのほうが若いし、本来なら席を譲る側なのだろうけど、人の善意は無下にはできない。


席を譲ってくれた人が鼻の下を伸ばしながらこちらを覗き込むように見つめてくる。こわすぎるううう。



(無視無視無視無視…)



何か気が紛れるものはないかとスマホを開くと、アプリに目が行く。スマホゲームの『パチモン』だ。


『パチモン』はパチっとモンスターの略で、決して偽物とかの意味のパチモンではない。指でパチっと弾いてモンスターを倒す、簡単操作でできるゲームで、『パチモン』は中学のときから流行していて、友達に誘われてやっているのだがなかなかうまくいかない。



(簡単操作を売りにしているゲームなのになかなかうまくクリアできないのはどうしてでしょうか…。簡単に操作はできる。でも、クリアできるとは言っていない。ということですね)



指で弾いてボスのゲージを減らしていく。この『パチモン』の人気な理由は仲間が実在する超能力者を使用しているからだ。



といっても本人の使用許可は得ていて、キャラボイスもついている。S級超能力者となるとSSRキャラに部類され、希少価値の高いものだ。


反対に、F級だとRキャラになる。いつか俺も『パチモン』にでてくると思う。なぜなら、15歳から超能力者には『パチモン』の制作会社から依頼が来る。断ることもできるのだが、俺は許可して、ボイスの収録に協力をした。依頼料として10万円以上の金額が振り込まれたのでやったかいがあった。



ボスを負けて『GAME OVER』の文字が浮かびあがる。



今の俺のパーティじゃどうやら勝てないらしい。というのもSRキャラが1体で残りの4体はRキャラで構成されているから勝てなくてもしょうがない。

キャラの強さ順位は、SSR、UR、SR、R、Nだ。



(ガチャしよ…)



ログインボーナスで11連ガチャができることに気づいた俺はガチャのページを開く。すると、新キャラが登場しているらしい。



画面一面にSSRキャラである金髪ツインテールキャラが映し出され、よくみると、




(わ、わたしじゃないですかあああああ)




名前が神崎ひよりと書かれていた。ちなみに女の時の名前は神崎かんざきひより。男の時は神崎黒人かんざきくろとである。ひよりと名前を付けたのは俺だ。ひ弱だからひよりってね。


そんなことより、俺はF級超能力者なのになぜSSRキャラなのだろうか。まさか、俺の貯蓄チャージ解放リリース能力が知られた…?いや、俺は公表していない。なぜばれたのだろうか。


神崎ひよりとでかでかと書かれた下の説明に目を向けると、こう書かれていた。

『辺鄙な村で育った少女が聖女として覚醒。あまりの美貌にモンスターですら魅了する』



どうやら強さではなく、可愛さでSSRになったようだ。ゲームキャラの絵は実物に寄せて描かれるため、どこか特徴を付け足すあまり、可愛さ、カッコよさに欠けることがよくある。


でも、神崎ひよりに関してはマイナス点がなく可愛すぎる。リアルが可愛ければ絵もかわいいとはまさにこのことだろう。


ちょっと自分の評価が気になったので、ネットで『パチモン』に関する情報やコメントが書かれている掲示板を覗いてみた。




『ひよりちゃん可愛すぎるー――』

『おまえらもう出したか?排出率0.000005%とかいくらかかるのよ』

『今は2倍だから0.00001%だぞ。今がチャンスだぞ(遠い目)』

『出さないとボイス聞けないのが残念だ』

『ほんまそれ。どんな声なのか聞いてみたい』

『配信者が配信してくれるさ』

『フレンドがリーダー設定をひよりんにしてくれればひよりちゃん使える。つまりお前ら出せよ?』

『いつからお前のフレンドになったんだよwww。まぁ…。ずっと友達だぞ♪』

『これってリアルひよりちゃんはかわいいってこと?』

『ひよりちゃん推せるわ』

『110000連ガチャしたけど爆死です』

『爆死乙。金持ちが札束で殴ってもひよりちゃんはデレないか…』




神崎ひよりについてのコメントがたくさんあった。ちょっぴり有名人になった気分でうれしいような、でも強さで有名じゃなくて見た目で有名ってのはちょっと残念だ。



あ、ログイン時には気づかなかったけど、運営からプレゼントで神崎ひよりキャラが届けられていた。110000連ガチャしても出なかった人には申し訳ない。




◇◇




無事に目的の駅に着き、(小太り男性は見ていただけで害はない)学校へ向かう途中同じ制服を着た生徒を見かけるようになり、学校が視界に入る。



(ここが今日から通う学校かぁ)



超能力者高等学校。略して超力高と呼ばれる高校に無事に到着した。



クラスは校舎の前に掲示されており、そこで自分のクラスを確認する。ただ、みんなの視線が掲示物にいっていなく、俺の方に釘付けになっているのはもう言うまでもないだろう。



クラスは全部で3クラスあり、人数は1クラス30人ほどだ。校舎や敷地は広いのに対して、1学年100名ほどなのは超能力者自体少ないってのと、超能力者でも一般高に通う人がいるためそこまで多くない。


そして、クラスはランクで決まる。S級からC級なら1クラス。D級、E級なら2クラス。F級は3クラスだ。F級生徒のほうがS級に比べ多いのでこのような振り分けとなっている。俺は3クラスだろうから、掲示物に書かれている3クラスの名簿を見てみる。


だが、どこにも見当たらない。


(あれ。高校間違えたかな…)


自分の持っている合格通知にはちゃんと超能力者高等学校と書かれている。ここであっているはず。念のために2クラスを確認してみるがやはり載っていない。



(もしかして退学…?)



入学そうそう退学になったのだろうか。いやいや、そんなわけない。まさか1クラスにいたりして…。それこそ天地がひっくり返ってもあり得ないよね。


1クラスの名簿を見てみると、そこに俺の名前が。



(ふぇええええ!?1クラスぅ!?)



幻覚を見せる超能力者がいるのかもしれない。頬をペチペチと叩きもう一度確認する。





(ふぇええええ!?1クラスぅ!?)



信じられないが本当に1クラスに名前がある。同姓同名がいなければ俺で間違えないはず。



校舎は3階建ての造りになっており、3階は3年生、2階は2年生、1階が1年生だ。3階を見上げると3年生らしき人たちが新入生を興味本位で見ているのがわかった。


(あまり上級生に顔を覚えられるのもよくないよね。校舎裏に呼び出されて「パン買ってこいウスノロ」とパシられるだろうし、トイレ中に上から水の入ったバケツをぶっかけてくる可能性もあるよね。それだけじゃなくて、超能力を使ったいじめは手に負えないよぉ。顔ばれはダメ。ゼッタイッ)


鞄で顔を隠しながら校舎に入る。校舎には下駄箱がずらりと並んでいて1年生と書かれたタグを見つけたのでそちらに向かった。さらにクラスのタグも部類分けされており1クラスの下駄箱を見ていると『神崎ひより』と書かれた札を見つけることができた。


上履きシューズは今日が初めての登校なので持参している。靴を出して、靴を履くと致命的なミスに気が付いた。



(苗字で書いてないいいいいっ)



靴の天面には『ひより』と書かれていた。書いたのは俺だけど、今思えば『神崎』って書くべきだったじゃんか。女の姿だから『ひよりだな』って疑問も抱かずに書いちまったよ。


一旦靴を脱ぎ、書かれた名前のところをゴシゴシ拭いてみる。当然油性ペンで書いたため落ちるわけもない。


(ど、どうしよぉ。何やってるのわたし…)



正直どうでもよさそうなことだが、女になっている今の『ひよりちゃん』はネガティブ思考一直線なため些細な事でも不安になってしまう。もうやだこの性格。



―最終手段に出た俺は持ってきた絆創膏を名前のところに貼った。


不安から解放された俺は今度こそ靴に履き替え、1クラスへと向かったのだ。



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