仲良し3人組
模擬戦に続き、その後の授業も無事に終わり昼休みとなった。模擬戦が終わる頃には精霊召喚したゆかりは粒子となって消えてしまい、ちょっぴり寂しい。でも、再び召喚をすれば会えるので、ゆかりがいなくなる前に再開する約束をしてお別れした。
今日はお弁当を作ってきていないので、学食で済ませようと立ち上がる。
(スースーします…)
模擬戦で起こったある事件がきっかけで、今の俺はノーパン状態だった。生憎、替えの下着を持ち合わせていなく、女の子の日もまだ先だったので何の準備もしていなかった。
「ひよりん!ごはん一緒にたべよ♪あれ…?いつもよりスカート長くしてない?もしかして…捲ってほしいの?ぐふふ。おじさんを挑発しているな?」
めぐみんがいやらしい手つきをこちらに向けるので、スカートを抑えながら後退る。
(まずいです…。今日に限ってなんでこんなに勘が鋭いのですか…?)
スカートの丈を長くすることでパンチラならぬ、ノーパンチラを回避しようとしたのだが、それが仇となった。
もしもめぐみんにスカート捲りをされてしまったら下着を履いていないことがばれてしまい、変態だと思われる。なんとしてでも見られることを避けなければ…。
事情を知っているましろを盾に後ろへ隠れることにした。
(ましろさん。へるぷですぅ)
俺の心を読んだましろは頷き、一歩前へ踏み出した。
「めぐみ。やめときなさい。ひよりの下着はドラゴンのイラスト付きパンツなのよ。本人は気に入っているようだけど、触れないでおくのが優しさだと思わないかしら?」
ましろ…。助けてくれるのはありがたいが、もう少しまともな言い訳は思いつかなかったのか…?そんなパンツ持っていないし、女のドラゴンパンツなんて見たことないぞ…。
「え、龍のパンツ!?そんなのあるなんて知らない~!見たいー!見たーい!」
レアなものに目がないのか火に油を注いでしまい、目を輝かせて近づいてくる。見たいのなら自分で買ってきてください。
「そ、そんなことより、ご飯食べに行きましょう!お腹ぺこぺこです…」
「そうね」
「むー。わかったよ。でも、絶対今度見せてもらうからね!」
話題を逸らしてなんとか危機は過ぎ去り、俺たちは食堂へ向かった。
◇◇
「昨日ね、うちの学校の生徒が襲われる事件が起こったんだってー」
食堂でたぬきうどんを購入し、配膳された料理を受け取ってましろたちのいる席に着くと、めぐみんが要談を始めた。
「怖い話ね」
「1年2クラスの雫ちゃんが襲われたらしくてね。命に別状はなかったみたいだけど、重症で入院中らしいよー」
雫ちゃんって人が誰なのかわからない。名前呼びしているし知り合いなのかな?めぐみんの人望の厚さにはいつも驚かされる。
「それで、犯人は捕まったのですか?」
「それがね。3年生の人が介入したことで何とか助かったらしいんだけど、犯人には逃げられちゃったんだって。その先輩の話だと、殺されてもおかしくない状況だったって。また生徒が襲われるかもしれないと思うと怖いよね」
「物騒な話ね。それより面白い話でもしましょう。私、食事中は楽しく食べたい主義なの。ひより。何か面白い話ないかしら?」
「え!?いきなり言われても…」
あらゆる情報を網羅しているめぐみんとは違い、世間に疎いので何のネタも持ち合わせていない。
何かないか…。
思い出せるのは、今朝ニュースでやっていた銀行強盗の話ぐらいだ。強盗は窓ガラスをかち割り、拳銃を突き出し言い放つ。
『整理券をよこせ』と…。
とても律儀な銀行強盗だったというお話で俺はすごく面白かったのだが、二人はどう思うだろうか。
「あら?急にごはんがまずく感じるわ」
どうやらお気に召さなかったらしい。
「そうね…。例えば、ノーパンで学校生活を送っている人とか、男なのに女の恰好をして女子更衣室に入る人とか心当たりない?」
「そんな変態知りませんよ~。あはは」
「っぷ。ましろんったら~。もしいたとしたら、うちがボッコボコにしてあげるから!ひよりんは安心してね♪」
「あ、はい…」
ものすごく不安でしかありません。
みんなで雑談しながら食事は進み、二人は持参したお弁当を片付けているのだが、俺のたぬきうどんはまだ半分ぐらい残っている。お腹も膨れてきた。
「ひよりん。うちが食べさせてあげようか?」
「え?大丈夫ですよ。一人で食べられます」
「遠慮しなくていいよ。ほら貸して。はい。あーん♪」
めぐみんに箸を奪われ、うどんを口元へ運んでくる。
「あーん。あら、食堂の食べ物もなかなかおいしいわね」
戸惑う俺に代わり、ましろが食べた。
「あー!ましろん!ひよりんと間接キスなんてずるい!」
今思えば俺の使っていた箸だから間接キスになってしまうのか…。もうキスをした関係とは言え、なんだか恥ずかしい…。
「食べさせてもらったお礼に、私も食べさせてあげるわ」
「え?別にいいよ。うちはもうおなか一杯だし…」
「ほら、ひより。あーん」
「うちじゃないんかい!!」
その後、誰が俺に食べさせるかで揉めている間、うどんを素早く食べ終わることで二人の喧嘩に終止符を打った。




