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逆行聖女は剣を取る  作者: 渡琉兎
35/133

第35話:自警団員アリシア 13

 ――森の奥から戦闘音が聞こえてくる。

 あまりにも激しい音にアリシアとヴァイスの緊張感はさらに高まり、気づけば右手で武器の柄を握りしめていた。


「……絶対に、怒られるだろうね」

「……それは生き残れたらの話だろう」

「……死ぬ気なの?」

「……まさか」


 何気ない会話をしているつもりの二人だが、それが緊張感をどうにか和らげようと無理をしている。

 そのことに気づいているからこそ、その表情には力が入っており、力みが取れているとはいえなかった。


 ――ドゴオオオオォォン!


 直後、前方から強烈な砂煙が噴き上がり、さらにこちら側へ突風が吹きつけてきた。


「きゃあっ!」

「うおっ!」


 あまりの突風に足を止め、前方を窺う。


「ぐううううぅぅっ!?」


 すると、真横を悲鳴をあげながら一つの影が通り過ぎていく。

 慌てて振り返った二人が見たものは、前線から吹き飛ばされてきたシエナだった。


「痛たたたた……」

「だ、大丈夫ですか、シエナさん!」

「あぁ、アリシアちゃん。大丈夫だよ…………って、アリシアちゃん! それに、ヴァイス君まで!?」


 この場にいないはずのアリシアとヴァイスに気づいたシエナが驚きの声をあげると、二人は気まずい表情を見合わせた。


「……あなたたち、勝手に村を抜け出してきたわね!」

「ご、ごめんなさい」

「すみません。……でも、俺は行きます」

「ヴァイス君!」


 素直に謝罪を口にした二人だが、ヴァイスだけはすぐに決意を口にする。

 シエナはすぐに名前を呼んで止めようとしたのだが、すぐに言葉が詰まってしまう。

 彼女も知っているからだ。彼がヴォルスの息子であり、戦っている相手が仇であることを。


「……あの、シエナさん。戦況はどうなっていますか?」


 少しでも話題を変えようとアリシアはそう口にしたが、シエナからはまさかの答えが返ってきた。


「……正直、厳しいわ」

「えっ? でも、お父さんも戦っているんですよね?」

「もちろんよ。でも……森の主、私たちの予想を遥かに超えて強いわ」

「……はは、だったらやっぱり俺たちが助太刀を――」

「甘ったれるんじゃないわよ!」


 グッと柄を握りしめたヴァイスの言葉に、シエナが怒鳴り声をあげた。


「私たちならわかる。でも、団長ですら苦戦しているのよ! あなたたちがどうこうできるレベルじゃないのよ!」

「だからって、俺が向かわない理由にはならないです」

「ヴァイス君!」

「……アリシアは戻れ」


 シエナの言葉で止まるようであれば、すでにアリシアの説得で村に留まっていただろう。

 ヴァイスは視線を前に向け、そう口にしてから歩き出そうとした。しかし――


「私も行くよ、ヴァイス兄」

「アリシアちゃんも! どうしてよ!」

「俺は父さんの仇を討つために」

「私はお父さんを守るために」

「「絶対に行かなきゃダメなんだ!」」


 二人の決意は最初から硬かった。

 ヴァイスは誰に言われても止まることはないだろう。

 そしてアリシアも、アーノルドから止められたとしても止まるつもりはなかった。


「……もう! それなら、気配を消して隠れていなさい!」

「……シ、シエナさん?」

「止めたところで来るなら、目の届くところにいてくれた方が楽だわ!」

「……隠れている理由は?」

「最後の一撃、それを狙いなさい! でも、油断だけはしないようにね!」


 腰に手を当てて大きくため息をついたシエナだったが、それでも二人を見捨てるようなことはしなかった。


「……大事な弟子だもの、見捨てないわよ」

「……あ、ありがとうございます、シエナさん!」

「……わかった。絶対に俺が、シザーベアを倒します!」

「でも、怒られることは覚悟しておいてよね!」


 しかし、最後の言葉に二人は顔を見合わせてから苦笑した。


「……はぁぁ。これ、私も怒られるパターンだよね?」


 そんなことを呟きながら、先にシエナが駆け出した。

 二人は隠れながら前へ進んでいく。

 戦闘音は激しさを増しており、知らず知らずのうちに汗が噴き出している。

 そして――ようやく戦闘が見える位置までやってきた。

ご覧いただきありがとうございます。

もしよろしければ、ブックマークや★★★★★をいただけるとありがたいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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