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逆行聖女は剣を取る  作者: 渡琉兎
100/133

第100話:シルバー冒険者アリシア 9

 南の森にやってきたアリシアたちは、依頼内容である魔獣の調査を進めていた。

 というのも、今までに目撃例が少なかった森深くを縄張りにしている魔獣が多く目撃されているからだ。

 南の森の生態系に変化が生じたのか、それとも別の問題が生じているのか、それを調査するのが目的の依頼だった。


「依頼書にある通り、ポイズンスパイダーが森の入り口で確認されるね」

「こいつらの縄張りが森の奥にある沼地なんだろ?」

「そうらしいですね。どうして森の入り口に出てきたんでしょうか?」

「それを調査するのが俺たちの仕事なんだろうが」


 普段通りの会話をしながら、アリシアたちは遭遇するポイズンスパイダーを倒して森の奥へと進んでいく。

 他の魔獣にも遭遇しているが、そのほとんどがポイズンスパイダーに追いやられている格好で、ただ逃げてきている。

 アリシアたちからすると準備万端の構えだが、魔獣からすると意表を突かれた格好になるため、苦も無く戦いを続けていた。


「そろそろ沼地だね」

「警戒しろ」


 アリシアが地図を確認し、ネイドが注意を促す。

 茂みに隠れながら慎重に進み、沼地を確認できる位置までやってきた。


「……何かいるね」

「……いるんだが、あれはなんだ?」


 情報ではドロドロの緑色をした沼地だったはずの場所が、真っ黒な水質に変化しており、ポイズンスパイダーを食らう別の魔獣が新たに存在していた。


「ネイド兄も見たことがない魔獣?」

「似たような魔獣を見たことはあるが、あんな色じゃなかったな」


 魔獣は沼地と同じ真っ黒な色をしており、くちゃくちゃとポイズンスパイダーを咀嚼している。

 体長も3メートルほどあり、南の森に入ってからは最大の魔獣と言えた。


「……沼地の真ん中にいるのが厄介だな」

「……どうにか陸地に誘い込めないでしょうか?」


 ゼーアとケイナが順に口にしていく。


「……俺が囮になる。アリシアたちは陸地に来たあいつを斬るために少し後ろの茂みで待機していてくれ」

「……危なくない、ネイド兄?」

「……任せろ。これでも俺はミスリル冒険者だぜ?」


 そう口にしたネイドは背負っていた大剣を抜き放つ。

 ゼーアの大剣よりも小柄だが、その重量はこちらの方が重たい。

 あえて音を出しながら姿を見せたネイドを見て、魔獣の首がそちらを向いた。


「……私たちは移動しましょう」


 アリシアたちは指示された通りに少し下がり、ネイドを見守る。


「てめぇ、ドゥルマキナだろう? 俺と一戦やろうぜ?」


 長い舌で獲物を捕らえて巨大な顎で捕食するドゥルマキナ。

 四足歩行で雄々しい角を持つ魔獣だが、その皮膚は茶と緑だったとネイドは記憶している。

 しかし、目の前のドゥルマキナは真っ黒の皮膚をしており、禍々しい気配を周囲に振りまいていた。


『……ゲゲゲゲゲゲッ!』


 気持ちの悪い鳴き声をあげたと思った直後、ドゥルマキナの長い舌が一直線にネイドへ放たれた。


「はっ!」


 鋭く振り抜かれた大剣が舌を斬り裂き、切れた舌先がボトリと地面に落ちる。

 すると、舌先が触れた地面までもがドゥルマキナや沼地と同じ真っ黒な色に変色してしまった。


「……おいおい、マジで何なんだよ、お前は!」

『ゲゲゲゲ……ゲゲ?』


 地面が変色したのを見て再び鳴き声を上げたドゥルマキナだったが、何故かすぐに声を止めてしまう。

 それは何故か――ネイドの大剣が黒く変色していなかったからだ。


「こいつは少し特別製でな。お前程度に壊されるような代物じゃないんだよ」

『……ギャギャギャギャギャギャ!』


 バカにされたことが分かったのか、ドゥルマキナは四肢に力を込めると、沼地からドンッという音を立てて飛び上がり、そのままネイドめがけて突進してきた。

ご覧いただきありがとうございます。

もしよろしければ、ブックマークや★★★★★をいただけるとありがたいです。

何卒よろしくお願いいたします。

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