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3.11の思い出

作者: 尾手メシ

 三月十一日。


 その時私は野外にいた。ポケットラジオで聞いていたラジオが伝えたのが、最初に得た地震の情報である。関東で強い地震が発生したという緊急速報の後は、通常の番組に戻ったのを、よく覚えている。それから三十分か一時間か経った頃だっただろうか、ラジオ番組が突然緊急特番に切り替わった。

 矢継ぎ早に、ラジオは地震の情報を伝えてくるのだが、情報が錯綜していたのだろう、いまいち要領を得ない。確か、津波に関しても言っていたと思うのだが、なにせラジオで音声を聞いているだけである。全くピンと来なかった。よく分からないが何か大きな被害が出ているようだ、というのが率直な感想だった。全く深刻に捉えていなかったのだ。


 帰宅してテレビをつけて、初めて津波の映像を観た。アメリカ同時多発テロ事件の映像を最初に観た時も同じ感想を持ったのだが、とても現実とは思えなかった。出来のいい映画のワンシーンのような印象だった。それくらい現実感がなかった。私を現実に引き戻したのは、テレビから聞こえてきたアナウンサーの声だ。その緊迫した声を聞いて、ああ、これは現実なんだな、そう思った。


 それからしばらくは、テレビもラジオも地震特番を放送していたのだが、だんだんと原発の話題が多くなる。やはりその時も、私は野外でラジオを聞いていた。アナウンサーが厳しい声で告げたのである。原子炉建屋が爆発で吹き飛んだ。信じられなかった、というよりも、信じたくなかった。とんでもないことになってしまった。それから何をしていたのか、全く覚えていない。ただ、ラジオをずっと聞き続けていたことは覚えている。


 私の三月十一日の思い出だ。

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