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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私はリリアーヌ

私はリリアーヌ

作者: かのん

一度悪役令嬢物を読むだけでなく書いてみたかったので

ふと思いついたものをちょこちょこ書いてたものです


でもなぜこんな暗い話を思いついたのかは作者にも不明

もう何も見たくない

何も感じたくない

全てを終わらせてしまいたい


また繰り返されるとしても、それでももう私には耐えられないから


なぜ選ばれてしまったのか

そんな事を考えてもどうにもなりはしないけれど

それでも思わずにもいられなくて



この闇に溶けて消えてしまいたい



城での私に与えられた部屋のバルコニーの手すりの上に立つ

一歩踏み出せばこの場所からは逃げられる



また違う地獄の幕は開くけれど、それでもここにはもういたくない



「神様、助けて…」

せめてそう言えればよかったのに



私の地獄はその神様の掌の上にあるのだから、助け等どこにもないのだから





この一歩踏み出す先が虚無ならいいのに…


ああ、闇に溶けて消えてしまいたい…























私はリリアーヌ


公爵令嬢として生まれ、それは厳しく育てられていた


父も母も政略結婚で、家族としての交流すらなく

ただ与えられた家庭教師やマナーの教師に、駒として都合のいいように知識だけを詰め込まれて


結果、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この時ばかりは口先だけは両親に褒められたが

会ったのはその時だけだった


婚約者となった王太子殿下は、優秀な方だと評判だったが、初めてお会いした時からなぜか私は嫌われていた


どう歩み寄ろうと努力しても、曲解されて酷い言葉を投げかけられる


それでも、私に与えられたのは王太子殿下の婚約者という立場しかなかったので

厳しい王妃教育にも耐えた


王太子殿下に嫌われている婚約者だと、王妃殿下にも厳しい扱いを受けたが

それでも耐えた


私には耐える事しか出来なかったから



そのうち、14歳で貴族の子息や令嬢が全員通う学園で王太子殿下が男爵令嬢と噂になり始めた

男爵の庶子で学園に入る少し前までは平民として暮らしていたというその少女は

とても美しい容姿と、貴族らしくないその立ち居振る舞いが、貴族子息に新鮮に映ったらしく

王太子殿下だけでなく、多くの子息を虜にしていったのだ

同時に、令嬢達には蛇蝎の如く嫌われていた

婚約者がいようがいまいが関係なく近い距離で馴れ馴れしく接する態度に

それも仕方のない事だと、王太子殿下との噂を聞いていた私も思っていた


ただ、私は王太子殿下に嫌われていたので、何かを言う資格などないと、思ってはいても何も行動せず

このままどうなってしまうのかと不安に苛まれるだけだったのだ


なのに、いつの間にか私が男爵令嬢に嫉妬で嫌がらせをしているという噂が立ち

王太子殿下に何度も呼び出され、話を聞いてもらう事は出来ないのに罵倒され

そのうちに何度か頬を打たれて倒れこむ事も増えていったのだった


そうしているうちに、実家にもこの話が漏れ伝わったのか呼び出され

王太子殿下を引き留める事も出来ない出来損ないだと罵られ始め

いっそ、その男爵令嬢を養女にして私と婚約者の座を入れ替えるべきではないかと言い出された



陛下はそのような事は出来ないと言ってくださったけれど

王妃殿下が王太子殿下の望みをかなえるべく各所に手回しされ


私は言えないままに冤罪で、王妃教育で王家の暗部を知ったものを放逐できないと

毒杯を賜る事になった



一体私の人生とは何だったのか

ただ惨めで悲しかったが、結局誰にも必要とされないままに15歳で短い命を終えたのだった






そう、命を終えたはずだった



だが、次に目を開けた時、私はうっすら光る白い部屋の中にいた

目の前にはそれは美しい女性がいて、いきなり怒鳴られた



目の前の美しい女性は女神様らしいのだが、

私は悪役令嬢として失格だと言われたのだ

なんでも、他の世界で流行っている『乙女ゲーム』なるものを私がいた世界で試していたらしく

ずっと観察していたらしい


なのに、私は本来あるべき悪役令嬢としては失格だったらしく

せめて悪役になれないなら、ヒロインの立ち位置を奪ってざまぁして見せろと言われたのだ


女神様の仰るざまぁというものがいまいちよく分からなかったけれど

ヒロインの立ち位置を奪うぐらいでやってみろと言われ


更に、乙女ゲームにあるお決まりの周回プレイというものの為に

何度も同じリリアーヌとしての人生を生きなおせと言われたのだ



あの人生をもう一度等と耐えられないと、泣いて訴えたが

それも許されず、決まっているのだから行って来いと、暗闇の落とし穴に落とされた



次に目が覚めると、公爵家で家庭教師の授業のある日だった


なぜかやり直しは5歳からだったようだ



私は女神様に言われた事もあったが、やはり両親ともきちんと向き合いたいと思っていたので

前回とは違って必死に両親へと手を伸ばし、愛を乞うた


だが、どんなに私が手を伸ばしてもけして両親はその手を取ろうとはせず

媚びる事だけ覚えて商売女にでもなるのかと罵倒される事になった

全くの逆効果だった



そして、前回同様王太子殿下の婚約者に選ばれた


女神様に言われた通り、ここでも初対面が大事だと笑顔で挨拶したのだが

やはりなぜか初めから嫌われていた


前回とは違って、何度もアプローチを試みた

せめて話せる間柄に、信頼できる関係をと努力した


でもどうしようもなかった

何をしても受け入れられず、前回よりもより嫌われてしまっているようだった


教育の方は、王妃教育も既に前回終えていたため、勉強については全てに置いて苦労しなかった


その時間を使って、両親や王太子殿下に会う時間を費やしていたのだが

結果、全くダメだったわけだ


しかも、王妃殿下にも前以上に可愛げがない生意気な女だと

王太子殿下の気持ちなど関係なく嫌われ、暴言を吐かれ続けた


助はどこにもなく、八方塞がりだった



そして、やはり同じように王太子殿下は男爵令嬢と恋に落ち

私は冤罪にかけられた


だが、前回は毒杯を賜ったが、今回は公開処刑を宣告された


一体私が何をしたのだろうか?


両親に愛されたかったから、振り向いて欲しかったら、手を伸ばして頑張った


せめて婚約者として信頼関係だけでも築きたくて、歩み寄ろうと努力した


だが、何をどう頑張っても逆効果にしかならず

私にはどうする事もできなかった


私の何がそんなに皆に嫌われるのかが解らない


そんなに私は嫌な、悪役令嬢なのだろうか?



公開処刑の場に引きずり出された時、見も知らぬ民衆にも罵倒され石を投げられた


彼らが一体私の何を知ってそんなに熱狂するほどに否定されなければならないのか



女神様は周回プレイとやらなのだと言っていた



私は後何度こんな嫌われるだけの人生を歩まなければならないのだろうか?



無理だと思った

私には耐えられない、もう何も感じたくない


そんな絶望的な気持ちで落ちてくるギロチンに首を落とされた













そしてまた意識が戻る。


女神様の言うところの3周目だった



やはり5歳で目覚めたらしい



だが、前回で心の折れていた私は、女神様が見ている事は分かっていたけれど

どうしても何もできなかった


どうせ何をやってもダメなのだ

むしろ逆効果になっていたのを考えると、歩み寄ろうとする事が怖かったから



だから、私にできたのは心を殺して、言われる事をただ行うだけの優秀な人形だった

2度の人生で、勉強は教わる事がもう何もなかったので、優秀なだけの人形だと罵られた


罵倒や罵りだけはレパートリーが増えていくのが皮肉だと思った



そして、両親にも愛されず、王太子殿下にも嫌われ、同じルートをたどるように

男爵令嬢と王太子殿下の噂が流れてきた


そして今回は更に、学園で私がいじめられ始めた

二人の仲を邪魔する人形等必要ないと、必要に虐めがエスカレートしていった


頭からインクをかけられる、ドレスを切り刻まれる、階段から突き落とされる


命すら奪っても仕方ないという段階から突き落とされるというところまで来ていた


向けられる嫌悪や悪意に、もう耐えられなかった




限界だった


断罪されるまで、とても耐える事が出来ないと思った


女神様にどんなに叱られようと、再び落とされ5歳に戻されようと

今この時間を耐える事が出来なかった



私は王妃教育の為に与えられている、かなり高い位置にある城の部屋のバルコニーから飛び降りた


ぐしゃりと体中の骨が折れた痛みを一瞬感じて、意識は消えてくれた
































公爵令嬢が飛びりた翌日の日中、突然空が真っ暗になって、世界が闇に覆われた


人々は恐怖した



誰もこの現象と公爵令嬢を結び付ける者はいなかったが

解らない現象に人は怯えるようにできているのだろう

誰もかれもが、どうしていいのかわからずにいた




すると、暗闇の大空に大きな人影が写った


それはシンプルな白い貫頭衣を着てはいるが、とても威厳のある高貴な老人だった



「お前たちは知らねばならない」


老人の声は個々の頭の中に響いてきて、誰も耳を塞ぐ事は出来なかった



「この世界の生贄だった少女の事を」


それだけ言うと、世界の人間は全て眠りについた












そして彼らは夢を見る


自らがリリアーヌになった夢を

現実にしか思えない感覚で、リリアーヌとしての3周分の全てを




3周を終えて目が覚めた人々は、拷問ではないかと思った

死んでしまいたかった気持ちを持ったまま、目が覚めたのだから


しかも、自分達が彼女にした事を理解してしまったのだ


なぜなら、確実に自分がリリアーヌだったからだ


なんという罪悪感か

被害者としての記憶が残っているのに、自分は加害者なのだ



人々は恐怖した


きっと神に与えらえた罰だったのだ

この世界では既に公爵令嬢は亡くなっている

謝罪することも償う事も誰にももうできないのだから


そして、その記憶を持ったまま生きていかなければならない

なんと厳しい罰だろうか





だが、ほとんどの人々が目覚めた中

ある共通項のある人物達だけが目を覚まさなかった



彼女のごく近くにいた関係者、公爵家の両親と王太子殿下とその側近達、王妃殿下に男爵令嬢

更に学園の数人の生徒と数人の使用人達だった



目覚めない誰もが、苦悶の表情を浮かべたまま目覚めないのだ


誰もが理解した


まだ罰を受け続けているのだと

あの夢の中にいるままなのだと



どのように見続けているのかはわからない

それでも、彼らは目覚めないかもしれないと一か所に集められて扉は閉められた


世話をするものが、日に何度か見に行くが

食事をとらなくても、全く瘦せ衰えることなく

排泄もないので世話をする必要もない

年さえとらないようだった


人々は神の怒りを恐れ、近付かなくなった


そして閉められた扉はいつしか禁忌の間となり

開かずの間となった頃には中に何がいるのかすら王のみに語り継がれる存在になっていった






















一歩、この足を踏み出せば今だけは終わる事が出来る

…もう全てに耐えられない

たとえ今だけだとしても、この苦しみから逃れたい…



さあ一歩、この一歩を踏み出してしまえば…



そう思って足を踏み出そうとした瞬間、一瞬何かが頭の中をよぎった


それは空に浮かぶ高貴な老人



一体何の記憶なのか、私にはわからない


そんな記憶が()()()()()のだから



そう、私はリリアーヌ、この地獄から抜け出せない存在なのだから…

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