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3-07.過労

「ヒカリさん、ヒカリさん、気が付いたかしら?」


 ええと……。

 だれ?お母さん?


 緑の髪?ええと……。


「お姉ちゃん、起きた?」


 この声、ええと……。

 誰だっけ?


「……。」


 誰か素敵な男性が覗き込んで観てる……。


「お母様」

「お母さん」


 小さな子が二人……。

 リサとシオン……。


 はっ!

 リサとシオン!


 ガバっと起き上がろうとすると、後頭部に痛みが走る。

 慌てて頭を押さえて、ゆっくりベッドに横たわる……。


 もう一度自分のベッドの周りを見渡すと、ステラ、ユッカちゃん、リチャード、そしてリサとシオンが居た。クレオさんは居ない……。


「ヒカリ、気が付いたか?ステラさんが戻って来てくれたんだ」と、リチャード。


 あれ?

 ええと……。

 確か、リチャードとクレオさんと打ち合わせをしていて……。

 リサの器を取り戻しに行く前にお茶を……。


「リチャード、私……」

「ああ、準備は進めている。先ずは体力を回復しよう」


「私はどれくらい寝てたの?」

「2日間だ」


「そう……。リサの器を取りに行かないと……」

「ああ。ヒカリが倒れた時の様子を皆で話し合ったんだ。

 そして、クレオさんの話を聞いたリサが話してくれたんだ。『お母様は私のせいで倒れたんだ』って」


「リサ、ごめんね。お母さん直ぐに準備するから」

「お母様、私は待てます。大丈夫です。元気になってください」


 いろいろと不味い。

 分かってはいたんだよね。

 上級迷宮で過ごした一週間、2時間睡眠をたまに取れていた程度で、十分に寝られて無かった。寝てないだけじゃなくて、何だかんだで魔力も持続的に練って使い続けていたのは分かってる。


 戦闘、各班での訓練支援。

 そして、収集品のリスト化と収納。これはカバンを持ってるユッカちゃんか私しか出来ない。

 ユッカちゃんにはナビが付いていないから、収集品のリストを紙に書きとめるだけで私より何倍も手間が掛かっちゃう。だからナビ機能を使える私が武具類の回収と収納を全て請け負った。

 収集品を麻袋に詰めて、格納するだけだったら、麻袋の数を覚えていれば良いから、クレオさんや子供達に手伝もらったけど。


 そこから、15時間以上続けて迷宮を駆け上がって、最後は二人を抱えての3時間連続飛空術の駆使、そして不慣れな晩餐会での振る舞い。魔力、体力、精神力の全てがすり減っていたんだろうね。


 『仕方ない』は言い訳。

 でも、誰かがその役割を担当する必要があるのだから、私がやれば良いだけのこと。別に後悔はしてない。皆に迷惑を掛けたのは悪いと思っているけどもさ。


「ヒカリさん、話しかけても大丈夫かしら?」

「は、はい。でも、ステラがどうしてここにいるの?」


「マリア様から連絡を貰いましたの。『ヒカリさんの大事だいじだから緊急で帰って来て欲しい』って。以前、飛竜族を救出して倒れたときと同じくらい驚いたわ」

「そう……。マリア様にもステラにもご迷惑をお掛けしてしまって……」


「マリア様はともかく、私は紆余曲折あって、探し人をしていたのよ。全然、本筋じゃない所だったのだけどね。

 その探し人がこの屋敷に居たの。遠回りの様に見えていて、実は最も近道を見つけたのかもしれないわ。だから、私のことは気にしなくていいわ」


「ステラの探し人って?」

「エルフ族としてはかなり重要な事柄だから、人族の皆さんに了解を得て、ヒカリさんと最初にお話をさせて貰ってるわ」


「え?」

「『ヒカリだから』は、こういう時にも使えるのね」


「わ、私は何もしてませんよ。市場で観光したり、観光迷宮で小銭を稼いだりしましたけど……。あ、探し人って、クレオさんのことですか?」

「関係あるけれど、違うわね。彼女が奴隷にしたエルフ族の女の子のことよ」


「ああ……。優秀な結界を作れる子ですね。ステラに身元を確認して貰おうと思っていました。

 どうも、魔族が侵攻していて、迷宮から魔物が溢れているらしいのです。彼女ならそういったことに詳しい様なので……」

「あの子ね。エルフ族の族長の親族なの」


「ひょっとして、ステラの子供?」

「違うわよ……。うちのエルフ族には族長が3人居るの。そのうちの一人の娘さんになるわね」


「それは不味いねぇ……」

「そうでしょう?」


「本人の意思で奴隷になることを志願したらしいのだけど、その状況に追い込んだ人族のパーティーも、どうにかできなかったのかなと思う」

「見つけ出して、葬っても良いのだけれど、あまり意味が無いことはしないわ。ヒカリさんと険悪な雰囲気になるのも嫌だし」


「私が言うことではないけれど、奴隷印を付けたら、外すことは出来ないかせとなることは知っているはずなのだから、奴隷として売るのは最後の手段にして欲しかったよねぇ」

「まぁ、あの子、ナーシャっていうのだけど、ナーシャにも問題はあったのよね。

 身分も身元も隠した状態で、人族のパーティーに無担保で参加したのだから、責任分担において、割合が大きくなっても仕方ない状況だったらしいの」


「そうだったのですね……」

「あの子を買い取りたいのだけど、ヒカリさんが仲介してくれないかしら?」


「ええと、クレオさんが所有権を持っているはずですけど?」

「『私はマリア様の指揮下にあるので、マリア様に聞いて欲しい』ですって。マリア様に確認したら、『ヒカリさんが元気になったら、二人で決めて頂戴』って、言われたの。

 良いかしら?」


「私は良いけど、誰の奴隷にするの?所有権を移すんでしょ?」

「私かしら」


「ステラ?」

「私、一応、エルフ族の族長の一人だもの。エルフ族で反対する人は居ないわ」


「ステラ、わかってて、言ってるよね?」

「ええ。ヒカリさん、判ってて言ってるわ。だから、ヒカリさんに相談してるのでしょう?」


「ユッカちゃんの弟子とかは?」

「ユッカちゃんにナーシャの所有権を移すのは不味いわね。ユッカちゃんがエルフ族に認知されていないもの。

 ただ、リサちゃんやシオンくん達と一緒に修行をさせてもらうには、良い師匠になって貰えるかもしれないわ」


「じゃぁ、ステラに所有権を移すしかないじゃん!」

「良かったわ。ヒカリさんが許してくれて」


「もう、その話は終わりで良いよ。でも、ステラには魔族退治を手伝ってもらう!」

「ラナちゃん達には伝えてあるので、ヒカリさんの自由にしていいわ。冒険に出るのは久しぶりね」


 ステラに私の奴隷印が付いているのだから、ステラの奴隷は私の奴隷でもあるっていうね……。まぁ、ステラが全部面倒を看てくれるはずだから問題になる訳は無いよね……。


「ステラ様、お話の最中に割り込んで申し訳ない。

 だが、あまりにもヒカリの我儘に付き合わせてしまうようで、どうしても口を挟まざるを得なかった。

 折角、久しぶりに南の大陸の故郷に戻って来たにもかかわらず、ヒカリの見舞いの為に付き合わせてしまっただけでも申し訳ないのだが……」


「リチャード様、これまで通り支援させて戴きますのでお気になさらないでください。

 それに、私も魔族と直接対面したことが有りませんので、良い機会と思っております」


「だが、しかし……」

「これまで通りのお付き合いで良いですわ。途中離脱させて戴く必要が出来ましたら、それはそのときに改めて相談させて戴きます。

 ただ、ナーシャの件だけは、何らかの形でエルフ族に伝える必要がありますので、そこだけはお時間をください」


「分かりました。この人族の国の支持が得られるか判らないが、私の出来る限りの協力はするつもりなので、何なりと言って欲しい」

「はい。ありがとうございます。何かありましたら、その時はよろしくお願いいたします」


「ヒカリ、ステラ様との話が終わったのなら、このまま作戦会議に入るが、体調は大丈夫か?」

「はい。皆様にはご迷惑をお掛けしました。出来れば南国の果物でも食べながら、皆で会議をするのは如何でしょうか?」


 よし、皆に理解戴けていることに感謝だよ!

 さて、ご飯を食べて、エネルギーを回復しないとね!

ーーーー


いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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