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3-02.忘れられた誕生会

 晩餐会の翌日、朝の運動とピュアを終わってからの朝食。

 今日は、一家4人と、ユッカちゃんとクレオさんの6人。マリア様は別件があるとかで、今朝は一緒じゃない。


「お父様、おはようございます」と、一晩で回復したリサ。

「おとうさん、おはようございます」と、通常営業のシオン。

「リチャード様、お初にお目に掛かります」と、クレオさん。


 私とユッカちゃんは、普通に「おはよう~」って、皆に挨拶をしてる。皆がお互いの元気な様子を確認できた感じだね。


「ああ、みんなおはよう。

 クレオさん、母から話は伺っています。ユッカちゃんと私の家族をよろしくお願いします。

 皆は元気に楽しめているかい?」


「お母様は、実はすごい人なのです」と、リサ。

「おかあさんは、魔法の先生もできるのです」と、シオン。

「リチャードさんの活動資金をみんなで集めて来たよ~」と、ユッカちゃん。


 みんなが上級迷宮の攻略をポジティブに捉えてくれて有難いよ。

 結構大変なことだと思うんだよね。一週間も繰り返し作業で、更には地上で太陽を観られないっていうの、心身に変調を来たしてもおかしくないよ。

 でも、みんなが夢中だったのか、身体強化の第二段階のお陰か判らないけど、がんばって付いてきてくれたのは重ねて感謝したいね。


「そうか、それは良かった。

 そんな凄いお母さんを、お父さんに、もう少し貸してくれないかな?」


「「……。」」


 おや?

 みんなお父さんと会えて嬉しかったんじゃないの?返事をしてあげないと……。


「リサ?シオン?」

「「……。」」


「ヒカリ、どういうことだ?」

「いえ、私にも判りません。ユッカちゃん、分かる?」


「わかりません。美味しいご飯が食べられなくなること?」


 うん?なんだろ?私が調理をしなくても、このお屋敷で出されるご飯食べてるよね……。


「クレオさん、分かりますか?」


「きっと、昨日救ったエルフの子のことか、収集品の片づけが終わって無いことでは無いでしょうか……」


 エルフの子は、クレオさんの情報元さえ押さえれば、後は解放して良いはずだし。収集品は直ぐに売れないのだから、ゆっくり片付ければ良いんじゃないかな?


「リサ、シオン。

 ご飯はこのお屋敷の料理人やメイドさん達に、材料や作り方を教えてあるから心配しなくて大丈夫だよ。

 拾ってきた収集品は直ぐに売れないから、少しずつ洗いながら片付ければ良いと思う。

 エルフの子は元気になって、事情が確認出来たら帰ってもらうだけだよ?」


「お母様は大事なことを忘れています」と、リサ。

「ユッカお姉ちゃんの大事なこと」と、シオン。


 あちゃ~。

 やっちゃった……。

 ユッカちゃんの誕生日のパーティーね。

 これは、イカンイカン……。


「ユッカちゃん、ごめん!誕生日のタコ丸パーティーの準備だね!」

「お姉ちゃん、私は大丈夫だよ。ニーニャさんも帰って来てないし、ステラさん達も帰って来てないから、皆が集まるまで良いよ」


「ヒカリ、ユッカちゃんの誕生会なのか?」

「う、うん……。

 最初の年はタコ丸パーティーをしたんだよ。去年は、結婚の儀と私の出産があったから、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に過ごしたんだって。今年は冒険に来てるから、皆で祝ってあげないと……」


「うん?とすると、シオンやリサの誕生日も近いんじゃないのか?」

「うん。リチャードが北の大陸で各国の視察に行ってる間に、誕生日が来たんだよ。だから、リサには靴を買ってあげて、シオンには昆布を買ってあげたの」


「ヒカリ、二人は誕生日プレゼントとは思ってないぞ?『お母さんの買い物に付き合った』と、言っていたぞ」


「そっか。サプライズのつもりが、単なる買い物になっちゃったね。ゴメン」

「ヒカリ、どうしてそうなった?」


「う、うん……。

 買い物の途中でスチュワート様に会って……。

 色々と慌ててて、それどころじゃなくて……。

 ちゃんと、パーティー出来てない!」


「ヒカリ、私も幼い頃に誕生パーティーを開いて貰っていたのか判らない。

 そして領地の視察のタイミングも重なっていて、父親としても十分に準備が出来なかったのは事実だ。だから、ヒカリを責める気はない。

 だが、二人がお祝いをして貰った自覚が無いのだから、遅くなってでも、ユッカちゃんと一緒にお祝いをしてあげたらどうだろうか?」


「ハイ、良いと思います!」

「リサ、シオン、それで良いか?」


「「ハイ!」」


 うん。

 私が悪い。だけど、皆が納得してくれるならそれが一番。

 ところで、リチャードの手伝いってどうすれば良いんだ?


「そうか。

 ユッカちゃん、リサ、シオンは何が欲しいんだい?

 南の大陸だから何でもしてあげられる訳では無いが、欲しい物を言ってみてくれないかな?」


「リチャード様、私は南の大陸の冒険に連れてきて戴けたので十分です。出来れば、ユグドラシルという樹の調査隊に加わりたいです」


「うん。分かった。早く実現するように、出来るだけ努力をしよう。

 リサとシオンはどうだ?」


「お父様、シオンにも靴を買ってあげてください」

「おとうさん、お姉ちゃんが念話を使える様に(あばばば」


「うん?リサ、どうしたんだい?

 リサも念話を使いたいのかい?

 ただ、此処では交流のある飛竜族の方達がいらっしゃらないので、中々難しいな……」


「お父様、大丈夫です。機会があれば習得させてください。

 シオン、お父様に無茶なお願いをしないで。私は南国の果物を戴くだけで十分です」


 リサ、ナイスだよ!

 というか、昨日同じようなことをお母さんもしちゃったけどね!

 ひょっとして、私のそそっかしい部分がシオンに遺伝した?いや、でも、シオンはミスと言うより、心からリサの願いを叶えたかっただけかもしれないし……。シオンから見たら、リチャードも念話が使えると勘違いしているのかも?

 ま、いっか。


「ヒカリ、靴と果物だ。手に入るか?」

「はい。

 果物は市場やクレオさんの伝手で種々入手可能です。

 靴に関しては、普通の靴なら簡単に手に入ります。ですが、リサが履いている様な特別な靴は、南の大陸で手に入るかは分かりません」


「クレオさん、リサの靴を見て、南の大陸で作って貰えるか確認して貰えるかな」

「ハイ!少々お待ちください」


 クレオさんがリサに靴を見せてもらう様にお願いする。リサはクレオさんに靴を渡す前にピュアをしてから渡していた。

 リサから渡された靴をクレオさんが確認すると、クレオさんの表情が見る見るうちに変わっていく。子供用の簡単な革袋を確認する目から、冒険者が装備を選定する眼つきへと変化する。

 そして、見るだけでは済まず、何か魔術のようなものを掛けて、性能を確認しているみたい。魔術のコーティングは掛けて無いから、素材と形状だけのはずなんだけどね?


「リチャード様、こちらの靴はどちらで入手されたのですか?」

「ヒカリ、どうしたんだ?」

「ニーニャ様の知り合いに作製して戴きました」


「ニーニャ様とは、ひょっとしてドワーフ族でしょうか?」

「あれ?クレオさん、ニーニャのこと知ってるの?」


「いいえ。これだけ見事な加工が出来るのは人族では不可能かもしれません」

「そう……。ちょっとお願して作って貰ったんだよね……」


「ヒカリ、また何か無茶なお願いをしたのか?」

「いやいや、ちゃんと材料も持って行ったし、お金も支払ったよ?」


「クレオさん、そういうことで、ヒカリの伝手で依頼して作って貰った様です」

「そうでしたか……。もし私もお願が出来るなら依頼をしたいと思いました」


「ヒカリ、どうなんだ?クレオさんの分も作って貰えるのか?」

「メルマの街に行って、採寸して貰わないと。あと、素材の高純度ミスリルも必要。手数料として金貨200枚。それぐらいかな?」


「ヒカリ?」

「うん?」


「素材とお金はどうした?」

「ニーニャから貰った。お金は魔石を売ったよ」


「ヒカリ、分かった。

 クレオさん、リサ、悪いが私では力になれない……」


「お父様、良いです。北の大陸に戻ったらシオンにプレゼントしてあげてください」

「リチャード様、お気遣い無用です。素晴らしい品の理由が判っただけで十分です」


「ヒカリは何故、そう、この……」

「リチャード、何?」


「いや、良い。皆の誕生パーティーの準備をしよう」

「リチャード、私は良いんだけど、ニーニャやステラが帰って来てないよ。ラナちゃん達の家族も一緒に出掛けてるし……」


「準備は出来るのだろう?」

「何が必要か判らないけど、準備は出来ると思います!」


「だったら、あらゆる種類の果物を買ってくるとか、タコ丸用のタコを狩りに行くとかだな」

「ここならクレオさんが手配してくれるから頼めば良いよ。私はリチャードに付き合えるよ?」


「分かった。

 クレオさん、パーティーの準備を子供達と仲良く進めて貰えるだろうか。

 ヒカリは私と一緒に付いてきてアドバイスして欲しい。

 皆、良いかな?」


「「「「「ハイ!」」」」」




いつもお読みいただきありがとうございます。

暫くは、毎週金曜日22時更新の予定です。


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