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0-08.ヒカリの準備(3)

「ということで、皆さんにはヒカリさんの出産と子育てを無事に済ませるまで、継続して支援頂けるかを確認させて頂きたかったの。

如何かしら?」


 と、夕食会で皆に意見を求めるマリア様。

 今日の夕食会への出席者は以下のメンバー。

 この領地の執事長であるモリス(40歳くらい)。

 リチャード王子の付き人だったところ、私の補佐に任命されて、裏の仕事も表の仕事もこなせるようにと、私の家族になって貰ったフウマ(15歳ぐらい)。

 モリスの娘さんのアリア(18歳くらい)。

 エルフ族の族長であるステラ(80歳くらい。人族の見た目だと20代後半)。

 ドワーフ族の高名なロマノフ家出身のニーニャ(35歳くらい)。

 そこにマリア様と私を加えて7人が夕食会のメンバーだね。妖精の長達はマリア様に正式に紹介していないから、夕食会のメンバーとしては参加して貰ってないよ。


「マリア様、私はエルフ族として支援出来ることであれば、全面的にバックアップさせて頂きます。


 ですが、2つほど条件がございます。

 1つ目は、ユッカ嬢とヒカリさんの旅に私も同行させて戴くこと。

 2つ目は、ヒカリさんの持つ科学情報を共有させて戴きたいこと。

 大丈夫でしょうか」


 と、ステラが最初に答える。

 私としてはこの上ない良い返事だよね。ステラやニーニャには私の奴隷印が付いている訳で、この世界の慣習や国際法で保証されている権利からも私が人権を握っていることにはなる。

 だからといって、異なる種族の族長クラスの人物達が人族の私の言うことを聞く必要が無いわけだし、種族間の戦争に持ち込むような強硬な態度に出ることもできる。 そこをお互いが尊重し合うことで、良好な関係を保てているなら嬉しいよ。


「エルフ族の族長であるステラ・アルシウス様、お言葉ありがとうございます。まだ婚約の儀を済ませただけであり、結婚の儀を終えるまでは、ヒカリさんが私の義理の娘になった訳では無いのだけれど……。 ヒカリさんは放っておくと何処かに行ってしまいそうで……。

 皆様に見守って頂ければ安心です」


 と、マリア様がステラからの協力の言葉へお礼を述べると、続いてニーニャが意見を述べる。


「マリア様、私からドワーフ族のロマノフ家の代表としてお答えさせて頂きます。ドワーフ族の伝手つては可能な限り使って支援させて頂きます。

 これから種々の建築や工作が見込まれるので、少々腕の良いドワーフを呼び寄せたい希望がありますので、その者達の移住の許可を頂ければと思います」


「ニーニャ・ロマノフ様、ご支援の意、誠にありがとうございます。

 もし、遠路に渡る送迎が必要でしたら、ヒカリさんの伝手により、飛竜族の方達の助力により迅速に事を済ませることが可能と考えます。後程調整させて頂ければと思います」


 ニーニャもステラ同様に今後も助けてくれるのは有難いね。まして、手先が器用で工業的なセンスのある人材を連れてきてくれるっていうのは今後のこの領地の発展に重要な要素だよね。


「マリア様、上皇后陛下夫妻の接待および、ユッカ嬢の配下の騎士団の調整は私の方で進めさせて頂ければと思います。

 また、私の婚約者であるシズクの方より『妊娠したようだ』との朗報がありますので、ヒカリ様とは時期がずれますが、乳母の候補に充てて頂くことも可能と考えます」


「フウマ、ありがとう。婚約とシズクさんの妊娠おめでとう。ヒカリさんさえ良ければ合同結婚式とさせて貰ってもいいかもしれないわね。

 本物の上皇后陛下の接待の件は大きな問題とならないわ。私が考えるのは身代わりが到着するための馬車が襲撃されることなのよ。ここの領地に常駐しているストレイア帝国からの騎士団員500名は上皇陛下が懇意にしているのだけど、指揮権は現皇帝陛下にあるわ。

 だから、別に作戦を立てる必要があるわね」


「え?(ALL)」


「ヒカリさん、この件は後で別に説明させて貰っても良いかしら?」

「は、はい!」


「マリア様、私からも2点ほど発言を宜しいでしょうか」

「モリス、何かしら?」


「はい。

 1つ目ですが、私の娘のアリアもその……。妊娠をしているとの報告がございます。乳母うばとしてヒカリ様のお役に立てればと思います」

「そうなの。それは、おめでとうね」


 と、マリア様はモリスに返事をしつつ、同席しているアリアに向かって微笑みかける。すると、アリアも照れ臭そうにコクンと、静かに頷いた。へぇ~アリアも一緒に合同結婚式とか出来るのかな?


「ありがとうございます。それで、2点目なのですが……。

 ここで暮らすリチャード王子の身分についての提案がございます。王位を継ぐまではハミルトン伯爵として、この領地を治めるのは如何でしょうか?もちろん、出奔して王宮を離脱したのではなく、ヒカリ様同様に仮の姿としての爵位と考えます。

 このようなことを申しますのも、この領地が大きく発展するに従って、対外的な折衝や交流が多く行われることが想定されます。そのとき、故意に相手に軽んじられることで相手の裏をいて罠に嵌める様な戦略であれば有為な策であると考えられます。しかしながら、皇帝からの直轄地として認められて、エスティア王国に唯一隣接するロメリア王国とは完全な停戦状態あるいは、征服を終えた状態になっております。

 としますと、正々堂々とリチャード王子に伯爵領を統治戴くことで、対等以上の立場でこちらの要望を通して、権威と権限の裏付けがありながらこの領地を発展させることが、マリア王妃のご提案に沿った形になると考えます。


 当然ですが、ヒカリ様の子育てに支障のない範囲で、ヒカリ様がリチャード王子に付き従うことで常に情報共有をしたり、領地の内政との両立がし易くなると考えます。


 如何でしょうか?」


「モリス、流石ね。私は良いと思うわ。

 ただ、ヒカリさんの答えとリチャード本人にも確認した方が良いわね。

 ヒカリさん、どうかしら?」


「あ、はい。私はそうして頂けると有難いです。

メイドと領主の兼務はいろいろと難しいと思いますし、子育てに集中しつつ、リチャード王子の都合に合わせられるとき同席させて頂ければ幸いです」


「分かったわ。結婚の儀を開くための城を作るための指揮を執るためにも、リチャードにとっても、領民にとっても良い形になるわね。私から併せてリチャードに確認をしておくわ。


 ヒカリさん、出産と子育ての準備はなんとかなりそうだし、対外的にも、領地の内政もなんとかなりそうよね。 結婚の儀の準備はヒカリさんの仲間達に追い追い手伝ってもらいながらなんとかするとして……。

次の冒険の準備について伺いたいだのだけど良いかしら?」

「は、はい?」


 マリア様は夕食会のメンバーへ、ある程度の方向性を示した後で私に語り掛けた。食後のデザートを食べながらの軽い気持ちだったのだと思うのだけど、突然次の冒険の話とか言われても、頭の回転が流石に追いつかない……。


「私は、

<飛竜に頼らない空飛ぶ馬車>

<ユッカちゃんの持つ不思議なカバン>

この2つが必要になると思うの。

間違ってるかしら?」


 あちゃ~~。

 そうだよね、そうだよね……。

 間違ってないけど、目処めどが立ってない。目処付けどころか、方策すら見えてない……。

 飛竜族に頼ったり、妖精の長達の力を借りることが出来れば大航海すら達成できる。けれども、飛竜族の方達は訳有って私に協力してくれている。けれども、人族が一方的に飛竜族の方達の力を利用するのは良くないと思う。何等かの恩に報いることができればいいんだけど、人間と飛竜では生活すべき基本が違うのだから、どうやって恩に報いて良いのか判らない。

 ってことは、一方的に借りを作ることになるわけで、身勝手な理由で冒険に付き合わせるのはどうかと思う。


 妖精の長達は……。まぁ、お願すればついてきてくれるとは思う……。ただ、それが空飛ぶ馬車であったりとか、ユッカちゃんの不思議なカバンとかとは違うんだよね。人間とかの力を超えた戦いとかで助けてもらうことはできるけど、科学的な乗り物とか容量無制限に入れられるカバンってのは違うんだと思う。

 前にレーザーのことで光の妖精の長であるラナちゃんに相談に乗って貰ったのだけど、基本は人間たちの力で達成できる科学か魔法を聞き届けてくれる訳で、人間側が実現できないことは基本的に相手にしてくれない……。


「あ、あの……」と、とりあえず返事をしようと思う私。

「何かしら?」


「とても難しいことだと思います」

「2~3年あってもダメかしら?

 だって、ニーニャさんも一度ドワーフ族の国へ戻ったり、いろいろな施設の整備をすることになるのだから、一時的に空飛ぶ円盤の開発には取り掛かれないでしょ?

 貴方だって、子育てが落ち着いて、次の出産の準備に入るかもしれないのだから時間があるわよ」


「いいえ、あの……」


 な、なんで2-3年で出来ることになるんだろ?

 これまで作ってきた物は、実現できているものをアレンジしてこの世界に合った方法で具現化しただけに過ぎない。けれども、これから作ろうとするものは、科学法則から解明しないと行けなかったり、水素燃料を作り出して保管するには、新しいインフラを整備する必要が出てくる……。


 うん……。

 私一人で出来るのかな……。


「分かったわ。ヒカリさんでも難しいことがあるのね。ゆっくり子育ての合間に考えましょうよ。私が協力できるものなら何でも手伝うわ」


 私が答えに困って澱んでいると、マリア様の方から救いの手を伸ばしてくれた。

 本当に良い人なんだよね。であればこそ、そんな風に期待されていれば、余計頑張りたくなっちゃうね。自分自身が研究好きな性分であることからも挑戦してみたいしね!

お読みいただきありがとうございます。

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